第16話 オフサイド・トラップ②
「クックッ……それでここの地下には迷宮があってダンジョンをクリアすると財宝が手に入る……クックッ、孫やひ孫がそんなゲームに夢中だよ。自慢じゃないがゲームくらい年寄りでもやるさ。それよりなんだい? アヘンだって? いつの時代の話をしているのやら、クッ。小僧にからかわれたんだよ、おまえ……クゥクックッ」
紫の髪の婆さんは足に胸がつくほど体を折り曲げ笑っている。俺は頭をかいた。
「
歴史の授業を聞きに来たわけじゃない。はいそうですかとは帰れない。
「あのときは助けてもらいました。その力を貸して欲しいんです。ビジネスがしたいんです。誰もが得をするように。誰も損をしないように」
「ビジネスだって? 日本人のおまえとかい?」
「
俺の背中を燃えるような目で睨んでいるのを感じるが知ったことじゃない。生きることは厳しいことだと教えてくれたのは兄弟だぜ? どうする……金は欲しいだろ?
「ジャン……?」
「非礼をお詫びいたします。
「……ジャン、すこしお黙り」
「ジャン。おまえが故郷で3人の女を
交渉は穏便に進んでいるようだった。例えそれが先ほどの老人の井戸端会議程度の情報収集能力だったとしても、形だけは動いてもらわなければ、鉄玉の手前がある。
俺は、隠し持っていたとっておきの秘策を繰り出すことにする。
「
名前を知らなきゃ適当につければいい。それがここ最近、俺が学んだことだった。それに美しい名をつけられて喜ばない女はいない。……それがたとえ年寄りだったとしてもっ!
「
※
「あなた様が気になさるような男には思えません。ぶつかりかけて道順を変えられたトリックにも気づいてはいません。単なる出来損ないの軟弱な男です」
いつの間にか、浅黒く小柄な男が
「生意気を言うんじゃないよ、
跪く
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