第七十八話「対談」
「たぶんそれは、白金機関の殺し屋ね」
サリーは優雅な仕草で紅茶を飲み干し、そう言った。先日のフリフリゴスロリ衣装とは違い、今日は落ち着いた黒のロングドレスにこれまた黒い
「なぜ宮美がやつらに狙われているんだ」ぼくはサリーに率直に聞いた。
「なぜって」サリーは一瞬沈黙し、しばらく思考した後にこう返答した。「そっか。パエトンには言ってなかったわね。宮美はね、白金ヒヅルに殺された日本の元総理大臣、
「そうだったのか」
ぼくが深刻な顔をしていると、サリーは無邪気な天使の如く微笑んだ。
「心配いらないわ。宮美には海兵隊あがりの屈強な護衛をつけておくから。それもふたり。宮美は私の優秀な部下で、何より大切な友達だもの。それはそうと、パエトン、今日はあなたにひとつお願いがあってここに呼んだのよ。せっかくのお休み中に、ごめんなさいね」サリーは苦笑しながら舌を出した。シックなドレスに身を包んでいても、やはり彼女はアイドル・スターのように可愛らしい十代半ばの美少女であった。
「お願い? ぼくにできることなら何でも言ってくれ」
ぼくはふたつ返事で快諾した。設備の整った専門の医療施設で記憶を取り戻すための高度な治療を毎日受けさせてもらっている身として、何かサリーに恩返しをしたいと、常々思っていたのだ。
「あなたに、私の
「もちろん構わないよ。君の行く先、火の中水の中森の中、地の果てまでもついて行こう」
ぼくが拳を掲げて意気揚々と返答すると、サリーは見た目に不釣りあいな慈母の如き笑みで
「ううん。そこまでついて来なくてもいいわ。今日一日、いえ、これから数時間くらい、私のそばにいて守ってくれればそれでいいの」
「そんなのお安い御用だよ。これからどこかへ行くのかい。サリー」
ぼくがそう訊ねると、サリーの口角が、大きく吊りあがった。
「これからここで、白金ヒヅルと対談するわ」
「何だって」
サリーの突然の告知に、ぼくは驚きを隠せず立ちあがった。
直後。計ったようなタイミングで、ごごご、と、重厚な鉄の扉が開かれ……
現れたのは、先日写真で見たあの白金機関総帥――そしてぼくの姉でもある、白金ヒヅルその人であった。
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