第166話 大成、青葉の本当の父親が誰なのかを知る
あ、あれ?
どうして
「・・・あのー、私のお父さんの話をするのに、どうしてスマホを取り出したんですか?」
青葉が素朴な疑問を口にした。それは俺も同じ考えだし、
「・・・青葉さんに見せたい物があるから、それを
「「「見せたい物?」」」
「そうだ。だから少しだけ待ってもらえぬか?」
そう言うとゴッドマザーはスマホで電話を始めた。電話が終わるとゴッドマザーは老眼鏡を外したけど暫くは無言の室内になった。やがて扉が開き、
平野川さんは青葉の横にワゴンを置くと、そのまま黙って一礼してリビングを出て行ったから再び静寂な時間になった。
「・・・あのー・・・この箱を開けてもいいのでしょうか?」
青葉が沈黙に耐え切れなくなったのかゴッドマザーに尋ねたが、ゴッドマザーは軽く頷くと「鍵は掛かってないから開けなさい」とだけ言った。俺は立ち上がって箱の横に行ったし、俺に続く感じで広内金先輩も立ち上がって俺の横に並んだ。
青葉は無言でケースを開けた。
そこに入っていた物は・・・壊れた一眼レフのデジカメとビデオカメラだ。でも、何かの力で壊れたかのように、あちこち傷だらけになっていてレンズとか液晶部分は粉々になって殆ど残ってない状態だった。
「・・・カメラとビデオ?・・・もしかして『シレトコ・シャリ』が使っていた物ですか?」
青葉は震えるような声でゴッドマザーに尋ねたが、ゴッドマザーは黙って頷いた。
「・・・これって、これって、もしかして・・・」
青葉は半分泣きそうな声になってる。この瞬間、俺もゴッドマザーが言いたい意味が分かった。
「・・・そうだ、君のお父さん、『シレトコ・シャリ』こと
それだけ言うとゴッドマザーは顔を伏せたが、青葉はゴッドマザーが言った意味を理解して箱を抱えるようにして持ち上げると「う、うう・・・うわーーーーん」と大声で泣きだした。広内金先輩も貰い泣きのような形で涙を流しているし、俺も泣き出す寸前だったけど、辛うじて堪えた。
小幌蓬栄・・・という事はイニシャルがH・Kだから
青葉はかなり長いこと泣いていたけど、やがて落ち着きを取り戻したのか顔を上げた。
ゴッドマザーは「コホン」と軽く咳払いしてから、遠くを眺めるようにして少し顔を上に向けて静かに語り始めた。
「・・・小幌蓬栄は今から3年ほど前に中東で亡くなったよ。取材に向かう途中、いわゆる自爆テロに巻き込まれる形でな」
「そうだったんですか・・・」
「その時、彼の最後を看取ったのが
「「「・・・・・」」」
「小幌蓬栄は駒里比羅夫さんとは高校時代の同級生で、婆やが知ってる限り、駒里比羅夫さんと唯一、互角に剣道で勝負できた程の凄腕で、陸上競技とか水泳でもほぼ互角だったと聞いてるから、相当な能力の持ち主だったようだけど、本人は最初からフリーカメラマンとかフリージャーナリストになりたかったようだったから、色々な大学からスカウトが殺到したけど全部断ったから一部からは変人呼ばわりされたけど、本当は自身の血筋を呪っていたからに他ならない」
「どういう意味?」
「・・・青葉さん、さっき、『めでたい焼き』の店を建て替えたという話をした時、本当なら手続きや登録が非常に面倒だったけど、アッサリ終わったという話をしたよね」
「うん・・・」
「その時、誰が動いたからアッサリ終わったと言ったか覚えてるかな?」
「誰?・・・ま、まさか!?」
「そう、『政界のドン』こと小幌
「・・・という事は・・・お父さんは・・・」
「・・・そう、小幌周麿の子。つまり、青葉さんは『政界のドン』の孫なんじゃよ」
それだけ言うとゴッドマザーは立ち上がって窓際に行ってカーテンを開けたけど、そこには札幌の街並みが写っていたけどゴッドマザー自身の顔も鏡のように写っていた。だから、そこにはさっき以上に皺をよせたゴッドマザーの顔もハッキリ分かる・・・
青葉は今だにゴッドマザーが言った事が信じられないようで何度も首をぶるぶるーと振ってるけど、青葉自身がゴッドマザーが言ってる事を受け入れたくないのか、何度も何度も首を振っていて止めようとしなかった。
「・・・周麿自身はかつて甲子園に出場して『走・攻・守の三拍子そろった一番打者』とまで言われた高校球児で、同時に花園では『快足ウィング』と評された花形選手だったけど、外務大臣を務めた小幌
「「「・・・・・」」」
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