第130話 大成、再び罰ゲーム(?)でデートする⑥~それじゃあ、何を見るんですかあ?~

 俺と石狩いしかりさんはその後も他愛ない話をしながらサッポロファクトリーに行ったのだが、今日の目的地は1条館2階にある『ユナイテッド・シネマ札幌』、つまり映画館だ。一昨日、石狩さんが希望したのが「一緒に映画を見に行って欲しい」という、初デートとしてはベタな注文だったけど、俺はそれにスンナリOKした。

 が・・・俺は今の今までというのを石狩さんから聞いてない。一応、自分のスマホで『ユナイテッドシネマ札幌』で上映中の映画を確認しているが、どのような映画が石狩さんの好みなのか全然想像できなかった。

 11あるホールで上映されている物のうち、まさか初デートでホラーを見るとは思えない。まあ、俺もポルターガイスト現象や心霊・幽霊などの超常現象を扱ったホラー映画は正直苦手だ。外科医の息子という訳ではないが連続猟奇殺人やサスペンスホラーなどの流血シーンの多い映画は全然平気だけど。

 かと言っといて、春休みの映画を今日まで延長上映している、子供向けのプリティ・キュアオールスターズやネコえもんを石狩さんが見るとも思えない。もう高校生だしね。それに、社会問題を扱った映画や古代ローマを舞台にした大人向けのリアリティ溢れる映画を高校生の石狩さんが好んで見るとも思えない。

 そう考えると、俺は確率4分の1だとみていた。話題になっている幕末が舞台の純愛ものか、ネズミーランドの人気キャラの1つを主役にしたアメリカの3Dアニメの日本語吹き替え版、異世界ギャクアニメ『この凄い世界に祝福を』の映画版、あるいは去年はテレビでアニメが放映されていたラブコメ『ウソコイ』の実写版のいずれかだと踏んでいるのだが・・・

 そんな事を俺がボーッと考えている時に石狩さんがニコッとしながら

「・・・ところで駒里こまさと君」

「ん?」

「もし駒里君が映画を選べるとしたら、何にする?」

「うーん、石狩さんの好みかどうかは正直分からないけど『ウソコイ』が見たいですねー」

「あー、あれね。あたしも原作は読んだしアニメも全話見た」

「俺もアニメは全話見たよ。原作も全部読んだから結構知ってますよ」

「たしかに面白かったよね。総集編の形でもいいから映画で見たいなー」

「という事は、実写版『ウソコイ』を見るんですかあ?」

 俺はそう言って石狩さんを覗き込んだけど、石狩さんは首を『ぶるぶるぶるー』と左右に激しく振って、絶対に首を縦に振らなかった。

「いんや、絶対に実写版『ウソコイ』は見ない!」

「えー!だって、アニメは見たんでしょ?」

「逆だよ」

「逆?」

「そう、アニメと実写では全然雰囲気が違う。テレビで映画の予告編を見たけどアニメのホノボノ感を全然感じなかった。だからこいつはアニメのイメージを壊しているとしか思えない。それと、これはあたしの個人的意見だがキャスティングが気に入らないから、この時点で早々に見る気が失せた!ヤクザの息子である主人公は平凡な高校生のはずなのに人気アイドルグループのイケメンというのが気に入らない!もう1人の主役でありヒロインでもある日米ハーフのマフィアの子は個人的には好感が持てたけど、一番納得できなかったのは、警視総監の娘で主人公の許嫁を20代半ばの元アイドルグループの卒業生がやったという点だあ!」

「へ?・・・なんで?」

「原作やアニメでの設定は警視総監の娘はEカップなんだぞ!それをあいつがやったら間違いなくニセチチで誤魔化すか、原作と全然違うキャラで演じるかのどっちかしか有り得ないのだから、こいつが演じると知った時点で見るのをやめた!」

「まあ、たしかにキャスティングについては矢不来やふらいが他のキャラを含めてケチョンケチョンに言ってましたねえ。逆にはまはアイドルグループ時代からファンでしたから、矢不来に相当食って掛かってましたけど」

「そういう訳だから、実写版『ウソコイ』は無し」

「それじゃあ、何を見るんですかあ?」


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「ちょ、ちょとー、まさかとは思うけど学生証を見せないと駄目なのー?」

「た、たしかにウッカリしてたというか失念していたというか、こっちも持ってきてないぞー」

「ダメ元で『高校生です』って言ってみるけど、『学生証がなかったら大人料金でお願いします』とか言われたら差額はそちら持ちという事でいいかしら?」

「はーーー・・・わーかったよ」


「ねえ、学生証を持って来た?」

「ううん、持ってないよー」

「同じく」

「だいたいさあ、事前に調べてない方が悪いと思うんだけどー」

「「それをやる担当はあんたでしょ!」」

「うっ・・・すみません、忘れてました」

「学生証なしでも高校生料金で入れるのかなあ・・・」

「駄目なら最悪、大人料金で見るしかないぞー」

「それとも・・・(ゴニョゴニョ)・・・」

「「えーー!!」」

「シー!声が大きいわよ!!」

「「ゴメン・・・」」


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