第53話 大成、お嬢様同盟を教えてもらう

「・・・ところで先輩」

「ん?何だ?」

「普段の休日や放課後、カフェに高校生同士で行かれる事はあるんですか?」

 俺は華苗穂かなほ先輩のあまりにも庶民とかけ離れた言動が逆に気になったので思い切って質問してみた。

 華苗穂先輩はニコッと微笑んだかと思うと

「もちろんあるさ。ボクが校内でつるんでいる人が誰なのかは君も知っていると思うけど・・・」

「あー、先輩と一緒にいる人と言えば、同じ3年生の石倉いしくら先輩、白石しろいし先輩、錦岡にしきおか先輩ですよね」

「ああ、そうだ。錦岡美瑛みえクンは幼稚園から同じだ。白石真澄ますみクンは中学から、石倉朝里あさりクンは高校になってから同じだが、元々は全員幼稚園の時からの知り合いだ。この3人となら何度もランチを共にしたりショッピングをしたりした事がある」

「あのー、まさかとは思いますけど・・・」

「ん?」

「この3人は・・・いわゆるセレブのお嬢様・・・」

「ぴんぽーん、その通り」

「マジですかあ?俺、全然知りませんでしたよ」

「知らないのは無理ないさ。理事長の方針で親の肩書や家柄で生徒に差をつけてはならないというのもあるし、逆にボクたちのような子が目立つのも色々な意味で不都合だから校内では控えめにしているというのも事実なのさ」

「どのくらいのお嬢様なんですか?」

「朝里クンは苗字で想像できると思うけど『真っ白い恋人』で全国的に有名な石倉製菓の社長令嬢だ。真澄クンはDMCブランドで知られる全国有数のホームセンターの創業者の孫娘、美瑛クンは自由民生党の道内選出国会議員の重鎮と言われる人物の孫娘にして現道議会議長の孫娘でもあり、同時に丹頂鶴のマークで知られるタンチョウドラッグの社長令嬢だ」

「・・・・・ (・_・;) 」

「まあ、ボクを含めた4人は『お嬢様同盟』と言ったところかな。虎杖浜こじょうはまクンの『爆食同盟』は有名だけど、さすがに『お嬢様同盟』全員の素性を知っているのは校内では恵比島クンくらいだぞ」

「たしかにそうかもしれませんね。ていうか、さすがの俺でも今の話を聞いて姫川先輩と錦岡先輩の家が何をやっているのか分かりましたよ。石倉先輩を含めた三人共まさにお嬢様ともいうべき人物ですよね」

「まあな。でも公表するのは勘弁して欲しい」

「それは構いませんよ。俺だって自分の素性を全部さらけ出している訳ではないですから」

「そうか・・・たしかに君の家が人気の美容室なのは知ってるけど、あそこの社長は大成たいせいとは苗字が違うからな。大成の父親が何なのかは知らん」

「簡単に言えば外科医ですよ」

「マジかよ!?」

「札幌糸魚沢いといざわ総合病院の外科副部長ですよ」

「あー、そう言えば聞いた事がある。スーパードクターKにして破天荒な事で知られる、あの先生の息子が大成だったのかあ」

「そうですよ」

「たしかにスーパードクターKは駒里こまさと先生だから大成と同じ苗字だよな。いやー、あそこの病院にはボクも小学生の時に足を骨折して1週間くらい入院した事があるし、あそこは広内金ひろうちがね家の掛かり付けの病院と言っても過言ではない。院長夫妻とボクの両親は何度も会ってるしボクも一緒に会食した事もある。後で知ったけどボクの足の治療をしてくれたのが院長婦人だったのには正直ビックリしたよ」

「その院長婦人が俺の母さんの姉ですよ」

「えーー!!」

「ホントですよ。嘘だと思うなら青葉あおばに聞いてもいいですよ」

「はー・・・世間は広いようでいて狭いよな」

「たしかに・・・でも、俺の家はとてもではないけどセレブと呼べるレベルじゃあないですよ」

「それもそうだな。少なくとも億単位の資産を持ってないとな」

「そう考えると『お嬢様同盟』は桁違いの資産家揃いですよね」

「そういう事だ。だから逆にWcDとかマイスドには縁がないのかもしれないな」

「まあ、たしかに『お嬢様同盟』がWcDに行くなんて想像できないですね。スナバなら有り得るでしょうけど、WcDはねえ」

「それもその通りだ」

 だが、今までニコニコしていた華苗穂先輩の顔が急に真面目な顔になった。

「・・・大成、一つだけ言っておきたい事がある」

 華苗穂先輩があまりにも真面目な顔をして喋り出したから、俺は変わり身の早さに少しビビったくらいだ。

「・・・なんでしょうか?」

「・・・お嬢様同盟は5人になってもおかしくなかったんだ」

「へ?・・・どういう意味ですか?」

「幻の5人目は・・・美留和びるわクンだ」

「はあ!?」

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