第51話 大成、驚きの事実に気付く

 華苗穂かなほ先輩は俺に導かれるようにして地下街のWcDへ行った。

 さすがに昼時なので店は混雑していたが、もうお昼時のピークは過ぎているので先に注文してから座っても問題なさそうなレベルだ。

『いらっしゃいませー、WcDへようこそ。ご注文は何になさいますか?』

 俺は高校生か大学生のアルバイトと思われる女子店員さんからメニュー表を渡されたので「うーん」とうなったけど、やはりお嬢様の華苗穂先輩が何を食べるのかが気になる。どうせなら華苗穂先輩と同じ物を注文してみたいという気が無い訳ではない。

「・・・あのー、先輩は何にしますかあ?」

 俺はそう華苗穂先輩に話し掛けたけど、華苗穂先輩は熱心にメニュー表を見ていて俺の声が聞こえてないみたいだった。

「せんぱーい、どうしたんですかあ?」

「へ?・・・何か呼んだ?」

「あのー、先輩は何を注文しますかあ?」

「うーん・・・」

 俺がそう言うとまた考え込んでしまった。おいおい、さすがに何も注文しないと後ろに迷惑だぞ。それに何を悩んでいるんだあ?いつもの広内金ひろうちがね先輩ならスパッと決めてしまうのに・・・

「・・・たいせいー、君は何を頼むつもりなのかな?」

「俺ですかあ?俺は先輩に合わせようと思っていたんですけど・・・」

「あー、いやー、そのー・・・質問が悪かった。大成はWcDでは普段は何を注文しているんだ?」

「普段ですか?俺はいつもならチーズダブルバーガーのバリューセットですけど・・・」

「じゃあ、ボクはそれでいい」

「すみませーん、チーズダブルバーガーのバリューセットを2つ下さい」

『チーズダブルバーガーのバリューセットを2つですね。サイドメニューはどうされますか?』

「俺はポテトだけど先輩は?」

「・・・・・」

「せんぱーい」

「ん?呼んだか?」

「先輩のサイドメニューはどうしますか?」

「サイドメニュー?何だそりゃあ?」

「『何だそりゃあ』じゃあないですよお。早く選んでくださいよお」

「早くって言われても・・・あのー、店員さん、どれを選べばいいですか?」

『あー、はい。こちらの中からお好きな物を1つ選んでください』

「あー、この中からね・・・おーい、たいせいー、君は何にするんだ?」

「あー、俺はポテトですよ」

「じゃあ、ボクもポテトで」

『分かりました。ポテトをお2つですね。ドリンクは何にされますか?』

「俺はホットコーヒーだけど先輩は?」

「・・・・・」

「せんぱーい」

「へ?・・・今度は何だあ?」

「ドリンクは何にしますか?」

「ドリンク?え、えーと・・・あのー、店員さん、どれを選べばいいですか?」

『あー、はい。こちらの中からお好きな物を1つ選んでください』

「あー、この中からね・・・おーい、たいせいー、君は何にするんだ?」

「俺はホットコーヒーですけど」

「じゃあ、ボクもそれでいい」

『分かりました。ホットコーヒーをお2つですね。他に何かご注文はありますか』

「俺はないですけど先輩は?」

「いや、ボクもない」

『それではご注文を確認させて頂きます。チーズダブルバーガーのバリューセット、ポテトとホットコーヒーを2つずつのセットでよろしいでしょうか?』

「はーい」

『お会計は〇〇円になります』

 ここでも俺は財布を取り出したけど、その手を制する形で華苗穂先輩はプラチナカードを取り出して店員さんに渡したので、俺は出した財布を引っ込めた。でも、その女子店員がそのカードを見て一瞬だが顔色が、それもビックリしたような顔に変わった事を俺は見逃さななかった。恐らく、こんな店でプラチナカードを使った人は初めてじゃあないかなあ。普通は現金やWAANのようなプリペイドカードだから・・・おい、ちょっと待て!もしかして華苗穂先輩がWcDの注文を決められなかった理由は・・・

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