第47話 大成、先輩がセレブのお嬢様だと知る

広内金ひろうちがね 山遠矢さんとおや?はて、どこかで聞いた事があるような・・・」

「恐らく君の家にもボクのが作った銀行の口座があると思うよ。まあ、百パーセントだとは言い切れないけど」

「銀行?口座?・・・まさかとは思うけど・・・大蝦夷銀行の創業者・・・」

「ぴんぽーん、その通り」

「マジですかあ?適当に言っただけなのに」

「それで間違いない。明治の頃にニシン漁で莫大ばくだいな富を得て、大正から戦後にかけては『北の炭鉱王たんこうおう』と呼ばれた広内金山遠矢が昭和初期に作った大蝦夷銀行。今は『北のホテル王』とも呼ばれる広内金山東雲さんとううんをグループの総帥に仰ぎ、ホテル、銀行、マンション、ガス、アパレルなど多角的事業を手掛けている。あの『北の炭鉱王』広内金山遠矢がボクのなんだぞ」

「そ、それじゃあ華苗穂かなほ先輩は、西区宮の森のド真ん中にデカデカとした邸宅を構えている、あの資産家のお嬢様!?」

「正確にはその家系の娘だ。そこに住んでるのは総帥の広内金山東雲で、ボクのお爺様の兄にあたる人だ。ボクは札幌駅前のマンション住まいだよ。何しろ38階に住んでるから駅前にありながら家を出てから駅につくまで結構時間がかかるよ」

「38階!」

「まあ、あのフロア全部がボクの家さ」

「マジですかあ!?それじゃあ超がつく程のお嬢様じゃあないですかあ!?」

「まあ、それは間違ってないな。君さえ了承してくれるなら地上100mの雄大な展望をお見せしよう」

「今からですかあ!?」

「君が望めば、だけど別に今すぐとは言わないから気にするな」

「・・・・・  (・・;) 」

「ボクのお爺様である広内金山大樹さんたいきは大蝦夷銀行の頭取で、グループだけでなく道内の企業の財布の中身を全て知っていると言ってもいい人物だから、ある意味、総帥よりも恐ろしいと言っても過言ではない」

「・・・・・  (・・;) 」

「ボクの父である広内金山十弗さんとおふつは、お爺様とは別事業であるガス事業部門の統括専務で海外を飛び回っている人だ。母の広内金華寿かすみはファッション事業を取り仕切っていて、〇ルメスや〇ルマーニだけでなく〇ルガリや〇ャネルなども扱っている。兄の広内金山弘道さんこうどうは父と一緒に海外を飛び待ってるし、姉の広内金華七飯かなえは母の片腕としてイタリアやフランス、アメリカなどのブランド担当者との交渉の実務担当者で、兄も姉も7か国語を自在に操る、まさに『七色の声』の持ち主だ」

「・・・・・  (・・;) 」

「だから、ボクを選んでくれれば将来を約束されたも同然だ。ホテルでもマンションでも、グループ内の好きな部門を選んでいいぞ。どうだ、ボクと本気で付き合ってみるか?」

「・・・・・  (・_・;) 」

「まあ、今まで言った事は罰ゲームの最中だから軽く受け流してくれていい。でも、これでボクがが分かっただろ?」

「う、うん・・・あまりのスケールに頭がついていけなかったけど、さすがの俺もプラチナカードを女子高生が持っている理由だけは理解できましたよ」

「でも、さすがに普段は持ち歩いてないよ。普段はWAANとかmomocoさ。最近は交通系ICカードが使える店が増えて来たから、通学定期として使っているKitacaキタカ(作者注釈:JR北海道の交通系ICカードのこと)だけで済ます事が多くなったね」

「あれー、お嬢様らしくないですねー。お抱え運転手の送迎じゃあないんですかあ?」

「あのなあ、ボクのは『教育の場へ送迎するなど怪しからん』という方針だったから、それが今でも受け継がれてるからボクだけでなく広内金家全てで幼稚園から大学まで徒歩又はバスや電車だ」

「へえ」

「あー、ついでと言っては何だが、この服もバッグも、それにコートも〇ルマーニだ」

「マジですかあ!?俺、〇ルマーニの名前は聞いた事ありますけど、正直に言いますけどブランドとか全然知らなくて・・・フランスですか?」

「〇ルマーニはイタリアだ!」

「す、すみません!」

「まあ、気にしてないから大丈夫だ。ボクは〇ルメスよりも〇ルマーニの方が好きというだけだ」

「はー・・・それでも俺から見たら別世界の服ですよ」

「あー、今日だけは特別だ。これは広内金家の娘として出席するパーティとか本家との会食とかで使う物の1つだけど、普段はクローゼットで眠ってるさ。今日は君のリクエストにお応えするつもりでクローゼットの中から季節に合った物をセレクトしたに過ぎないよ」

「・・・・・  (・_・;) 」

「そうそう、〇ルメスとか〇ルマーニを扱ってる部門の責任者である母だけど、なぜか『セレブ』という言葉が大嫌いな人で、家の中では好んで〇ニクロを着てるし、自分で料理を作るし、なぜかお気に入りの軽自動車ムーバを自分で運転してスーパーで現金で買い物をするのが趣味という変わった人物なのさ。だから『めでたい焼き』も自分で買ってくる。母は広内金家の異色の人物として創業家の中では知らない人はいないとまで言われてる人なのさ。だからボクも母と同じで普段は〇ニクロの服に〇ーバイスのジーンズという、ある意味、ボクと母だけは創業家の異端児なのさ」

「・・・十分理解しました。どっちにせよ、俺の二人の伯父さんも結構な事業を展開してますけど、華苗穂先輩のところの銀行とは切っても切れない関係なのは間違いありません。ある意味、先輩のお爺さんの機嫌を損ねたら鵜苫うとま伯父さんの駒里こまさと建設も、それに余市よいち伯父さんが社長をしている駒里運輸も資産を剥がされてお終いですね」

「まあ、さすがにボクのお爺様もそこまで酷い事をするような人じゃあないぞ。でも、銀行家という者はある意味シビアに金の流れを見てるから、ヤバイと思った会社からは手を引くかもしれないぞ」

「気を付けるように言っておきます」

「でも、学校での立場は君は元理事の孫、現理事の甥だからボクより上だ。何しろ広内金家は出資はしたけど桑園マルベリーガーデンの運営には一切関与していないからなあ。でも、初代理事長、今の理事長の方針もあって親の肩書で生徒を贔屓ひいきするなどあってはならないのだが、それでも影響力を無視できないのも事実だ。だから恵比島えびしまクンが生徒会長を辞退した気持ちをボクは分かっているつもりだ」

「たしかに・・・」

「まあ、ちょっと話が逸れてしまったけど、コーヒーが覚めないうちに飲もう」

「そ、そうですね」

 し、知らなかった、華苗穂先輩がお嬢様だったなんて・・・しかも恵比島先輩も理事長の血筋だったなんて初めて知った。

 そんな人が青葉あおばの下にいるなんて事を青葉本人が知ったら、それこそ腰を抜かすかもしれないぞ。実際、俺だって華苗穂先輩を見る目が変わってしまった。あのガサツなイメージしかない人が目の前で優雅にコーヒーを飲んでいるのだから。この飲み方だって、相当手馴れてないと出来ないぞ。

「・・・ところで、この後は先輩はどうするつもりなんですか?まさかコーヒーを飲んだだけで解放してくれる訳じゃあないですよね」

「おー、よくぞ言ってくれた。実は行ってみたい場所があるのだが、さすがに一人では行きにくくて誰か一緒に行く人が欲しかったのさ。だから大成たいせい、一緒に行こう」

「構いませんよ。それで、どこへ行くんですか?」

「テレビ塔だ」

「テレビ塔!?」

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