第27話 大成、キラキラ姉弟に遭遇する

 かえでみどりも双子だから顔立ちはソックリだが、その二人が俺の双子の妹だと知っている奴は校内には当麻とうま双葉ふたばちゃん、それに生徒会の連中を除けばいない筈だ。だから何事かあったのかと言わんばかりの視線を俺に浴びせているから、その痛い視線にさらされた俺は結構冷たい汗をかいている。楓も緑もコートを着ているがボタンを全部しめている訳ではないから首元には学年指定色である緑色リボンをしているのが見えるので、二人が1年生だというのは清風山せいふうざん高校の関係者なら誰でも分かる事だ。

 でも・・・もうすぐ正門だというところで後ろが急に騒がしくなった。何事かと思って俺たちも後ろを振り返ったけど・・・なんだありゃあ?

 遠目からもハッキリ分かる、あのロリ顔の巨乳は美利河ぴりかさんだ。その横に並んで歩くのは・・・いや、違う、美利河さんの隣を歩いている、男にしては割と背が低くてツンツン頭の男子生徒が速度を早くしたり遅くしたりして何とか美利河さんが隣にならないようにしようと頑張ってるが、美利河さんがムキになって並ぼうと必死になっているとしか思えない!

 俺も青葉あおばもあまりの可笑しさに笑うどころか、呆れて立ち止まって見ていた感があったが

「・・・たいせー、あれってキラキラ姉弟きょうだいだよ」

「はあ?マジかよ!?楓、あれが昨日、新入生代表挨拶をやった赤井川あかいがわ美流渡みるとって奴に間違いないか?」

「そうだよー、あのツンツン頭はねー、ウチだったらもう少し刈り込んでもいいと思うけどねー」

「フン!あんなモヤシモンは坊主頭で十分だ!アホらしい」

「それはそうと、あの姉弟、何を必死になって競り合ってるんだあ?」

「たいせー、面白そうだから呼び止めちゃいましょう!」

「お、おい、ちょっと待てよ」

「いいでしょ!?」

 俺はこんな茶番みたいな競争(?)はどうでも良かったけど、いきなり青葉が二人の前に両手を広げて立ち塞がって

「おーい!キラキラ姉弟きょうだい、おはようー!!」

「ちょ、ちょっと会長!キラキラ姉弟は勘弁してよお」

「そうですよ!キラキラ姉弟って何ですかあ!?」

 そう言うと美利河さんは青葉の前で止まった。それと同時に弟君も止まったけど二人揃ってゼーゼーと肩で息をしている状態だ。

「どうしたのー?姉弟そろって仲良く追いかけっこしてるのー」

「かいちょー、そんな事してるように見えるんですかあ?」

「どう見てもね。弟君も朝から追いかけっこして楽しかったのかなあ?」

「冗談じゃあありあせん!僕は一人で登校するつもりだったけど、玄関を出る時から姉ちゃんが『一緒に行こう』とか言って隣に並ぼうとするから僕は必死になって振り解こうとして頑張ったけど、どうしても姉ちゃんが諦めてくれないんだあ!」

「当たり前でしょ!弟と登校しない姉がどこにいるって言うのよ!!」

「はあ?そんなのは姉ちゃんの勝手な思い込みだろ!だいたい、姉ちゃんは昔から僕に構い過ぎです!!」

「あらー、そんな事はないでしょ!?この照れ屋さんがさあ」

「勘弁してくださいよお、僕は高校では中学のようにシスコン扱いされたくないんだからさあ」

「じゃあ、何でわたしと同じ高校にしたの?ホントはお姉ちゃんと一緒の高校に行きたかったからじゃあないのかなあ」

「し、仕方ないだろ!きょうだいで清風山高校に行けば学割が使えて授業料が安くなるっていう事でお母さんが『私立にするなら清風山高校以外は駄目!』って言ってたし、それに中学の推薦状と入試の結果から特待生で入れる事になったから、お父さんまで『清風山高校に行け!』って言い出すから仕方なく姉ちゃんと一緒の学校にしただけだあ!僕は別に公立でも良かったんだぞ!!」

「お姉ちゃんと一緒の学校に行きたかったから頑張ったんだよねー。そうでなければあんなに必死になって勉強する筈ないもんねー」

「うるさい!ブラコンが勝手な想像するなあ!!」

「お姉ちゃんはブラコンではありません!」

「そのセリフをサラッと言えるところがブラコンだあ!」

 この二人、この後もあーだこーだ言い合ってたけど、隙を見て弟君の方がサッと走り出したから慌てて美利河さんが追いかけていき、結局この二人の競争(?)は正門に入るまで続いた。

「・・・なんだったんだあ?」

「・・・さあ。でも、あんなに目がイキイキしているキラキラちゃん、初めて見たよー」

「俺も・・・」

「でもねー、きょうだいの仲がいいって事はー、悪い事じゃあないよー」

「それだけは同感だ、フン」

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