第97話 悶々の日
極地探検車の周りにエルフ族が集って来た。
「これは何ですか?」
長老のタオヤが聞く。
エルフ族を極地探検車の中に入れて、説明をすると説明を受けたエルフ族がびっくりしている。
「それでは、我々の居るこの大地は地球という星で、丸いという事ですか?」
地球が丸い事から説明しなくてはならない。
「そうです。太陽や月だって丸いでしょう。何故、地球だけが平って言えるんですか?まずは、自分たちの居る場所だって丸いということを考えるべきです」
「はあ、言われれば、その通りなんですが…」
それから、上空に通信衛星や気象衛星を打ち上げていること、電波を使って通信をしていることなどを説明してやったが、今までそういった知識がない生活をしていたので、いきなり説明されても、理解できないようだ。
「シンヤ殿、説明ではどれも素晴らしい事は理解できたのだが、いきなりの情報量で頭の中が混乱している。
ちょっと、休ませてはくれんか?」
長老の申し出に、お茶を出して休憩するが、この時にエルバンテから持って来た、ケーキも合わせて出した。
「なんと、美味しい。この飲み物にぴったり合う。私は生まれてこの方、このような美味しい物を食した事がなかった。今日は何という日だ」
エルフ族が感激している。
「ここに車を止めて置くと、再びシュゲークラブに襲われる可能性がありますので、森の方へ移動したいのですが、道が狭くて森の中に入れません」
エルフ族が作った道は人一人が通れるぐらいの道幅しかない。極地探検車を進めるには無理がある。
「では、村人総出で、道を作らせよう」
「木を切っても良いのであれば、この車で切る事が出来ますが、そうなると、シュゲークラブが森の中の方へ入ってきませんか?」
「シュゲークラブはその大きな鋏で木を切って入って来る事が出来ので、入ってくるつもりであれば、とっくの昔に入って来ておるでしょう」
エルフ族の了解も得られたので、極地探検車を森の中へ進める事にし、ウォーターカッターで、木を切りながら進む。
それを見たエルフ族は、全員が腰を抜かすほどに驚いている。
「すげーよ、あれがあれば魔物なんて一殺じゃないか」
「ああ、簡単に木を切れるなんて、船なんかも直ぐに作れるぞ」
そんな声を聞きながら、エルフ族の村への入り口にあたる大木の所にやって来た。
若干広くなった場所に、極地探検車を停める。
お昼が済んだ頃、フェイユさんとアールさんはエリスが転移魔法で、エルバンテの自宅の方に連れて行き、今は俺たちだけになっている。
エルフ族はエルバンテに行くかどうかを協議するという事で、村の中心にある集会場で村人総出の集会をするそうなので、俺たちもオブザーバーとして参加した。
「シンヤ殿に聞いたところ、エルバンテという国は中々近代的な街のようであり、教育なども施してくれるということだ」
「優秀な人材は国の運営にも携わる事ができるそうだ」
「口車に乗せられて、行ってみれば奴隷のような扱いが待っているだけだろう」
「我々が行って、教育を受けたとしても、若い人ほど理解できるのか。気楽に暮らせる今のままがいい」
意見は二分された。
「ここは先祖が苦労して辿り着いた地であるが、正直、魔物も多く、病気などで死亡する子供も多い。今のまま居ても何も改善はされないぞ」
「この地は先祖からの地であれば、簡単に放棄することは出来ない」
意見が真っ二つに割れている。
結論が出ないので、採決を取る事に成った。
エルバンテへの移住を希望するは、約半数だ。半数はここに残るということだ。
「では、移住希望者だけ、エルバンテに行く事にしよう」
長老が結論を出し、会議を締めくくった。
「それでは、エルバンテに連絡しまょう」
陸亀ホエールを俺たちの居るところに向かわせてくれるように、カウバリー宰相にお願いした。
エルバルト提督にも、同じような依頼をする。
陸亀ホエールがこちらに来るまで2週間ほどかかるという事なので、その間にいろいろと案内して貰った。
中には、きれいな湖もあって、魚が泳いでいる。
「ここには、魔物はいないのですか?」
「湖自体が小さいので、大きな魔物はいません。夜行性の魔物が夜に水を飲みに来るぐらいです」
それを聞いた、マリンとノイミが目を輝かせている。
「二人とも、泳いでいいぞ」
俺が言うと、二人は服を脱いで、湖に飛び込んだ。
「シンヤさま、マリンはいいけど、ノイミは見てはいけません」
今度は、ラピスが両手で後ろから俺の目を塞ぐ。
「あっ、いや、ノイミなんか見てないし」
「ほんとですか?」
「ノイミさんって、結構スタイルいいわよね」
エリスが説明してくれるが、俺には見えていない。
「エリス、そんな事を言われても、俺には分からないし」
「そうね、今日は悶々とした日を過ごして下さいね」
この悶々は夜、嫁たちに搾り取られる事になるのだろう。
「マリンお嬢さま、これは何ですか?」
「これは、ブラジャーといって、ほらこうして身に着けると、胸が固定されるんです」
「へー、あっ、こうですね」
「あーん、もう、ノイミのえっちぃ」
何だ、どうしているんだ。目を塞がれた俺は想像するしか出来ないが、その想像が悶々を更に増大させる。
「いいですな、若い娘は」
長老が言うが、俺の目だけでなく、長老の目も塞げよ。
湖から上がったマリンたちを連れて再び森の中を散策する。
所々、池のようなものはあるが、森の中なのでそれほど変化がある訳でもない。
そうするうちに、また大きな木の所に来た。
「ここは、別の入り口になります。ここから、村へと行く事もできますんじゃ」
村への入口はどうやら一つではないようだ。
俺たちはその木から中に入り、地下通路を通って、村に帰って来た。
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