第83話 人魚のノイミ
ノイミたちの攻撃が通用しない。
「今まではどうでした?」
『攻撃を続けて、退散させるしかないです』
これはテイが言う。ノイミたちは攻撃しているので、我々の質問に答えられる状況ではない。
「我々も手伝います」
俺たちも手伝うことにした。
「マリン、ウォーターリングだ」
「ウォーターリング」
マリンが直径3mほどのウォーターリングをシースネークに投げつけるが、やはり水耐性があるため、ウォーターリングを受け付けない。
だか、髭だけは切り落とした。
髭がなくなると、さすがにウツボらしくなってきた。
「水魔法はだめだな。ここは、フェニに頼むか」
「ピー」
フェニが一声鳴くと、シースネークの方に飛んで行くが、シースネークが水を吐いて応戦する。
フェニは火には強いが、水や氷には弱い。
だが、フェニはシースネークを極地探検車の前方に誘導して来た。
「クラウディア、レールガンを撃て」
一号車の屋根上に出したレールガンから凄まじい音を発して赤い弾が飛び出ると、シースネークの身体を貫通し、シースネークがゆっくりと海の上に倒れる。
そこにすかさず、ミュがオリハルコンを掴んで、倒れたシースネークに向かい、魔石を回収してきた。
ノイミが苦戦していたシースネークをあっという間に倒した俺たちを見て、村人が目を丸くしている。
「シースネークの血の臭いを嗅ぎつけて、他の魔物が来るかもしれません。今は海に近づかない方がいいでしょう」
俺が言うが、誰も声を発しない。
『シンヤ殿』
ノイミが来た。
「ああ、ノイミさん、どうにか倒せました。良かったです」
『何が、どうにか、ですか?余裕で倒せたじゃないですか』
「いや、フェニがシースネークを極地探検車の前に誘導してくれたからです。そういった意味では、一番の功労者はこのフェニです。フェニ、良くやった」
俺がフェニを褒めると、フェニが俺の肩の上で羽ばたく。
「ピー」
「こら、お前は大きいのだから、肩の上で羽ばたかれると俺の顔に羽がかかるじゃないか」
俺が文句を言うと、フェニが項垂れる。
「いやいや、そんなに恐縮することはない。今回の功労者はフェニだからな」
フェニが頭を持ち上げた。
『その赤い鳥は頭が良いですね』
「フェニといいますが、人の言葉を理解しているとしか思えません」
「ピー、ピー」
フェニが自慢するように鳴く。
『それにマリンさんの魔法も強い。さすが、マーシェリさまとポセイドンさまのお子さまです』
「いえ、私なんかまだまだです。それより、お姉さま方の魔法の方がよっぽど強力です」
海の中に倒れたシースネークはそれほど時間も経っていないが、既に半分位が他の生き物に食べられており、なんとも無残な姿になっている。
今は村人も船を出さない方が良いので、全員が食われるシースネークを見ている。
『シンヤさん、この村に滞在してくれませんか?』
ノイミさんが言って来たが、ここに滞在する訳にはいかない。
「いえ、我々はこれから王都へ行ってみたいと思っています。この村に滞在する訳にはいきません。それに、ここにはノイミさんが居れば十分だと思います」
通訳となったテイが、そうノイミに告げるとノイミはがっかりした顔をしたが、再び顔を上げた。
『シンヤさんたちにも目的があるでしょうから、ここに滞在して貰う訳にも行きませんね』
どうにか理解して貰ったようだ。
「それでは、明日の朝ここを立つ事にします。いろいろとお世話になりました」
『いえ、お世話になったのは、こちらの方です』
ノイミが言うと、村人が頭を下げた。
『それで、シンヤさんたちが王都へ行かれる事になると、言葉が不自由な事もあり、この先スムーズに行かない場合もあるでしょう。
なので、案内役が居た方が良いと思いますが、いかがでしょうか?』
それは有難いが、誰になるのだろう。誰が来ても言葉が不自由な事には変わりがないが…。
テイとノイミが話をしている。その輪に他の村人が加わった。なんだか、議論が発熱しているようだが、誰を案内役とするかで揉めているかもしれない事は雰囲気で分かる。
どうやら結論が出ようで、会議の輪が崩れた。
翻訳拡声器をノイミが持った。テイが今まで翻訳拡声器で通訳をやってくれていたが、別にテイでなくてもいい。それはノイミだって気が付いていた事だ。
『案内役が決まりました。私が行きます』
「「「「「「「ええっー」」」」」」」」
俺たちが絶句した。
「だって、ノイミさんは、この村を守って留まるという事ではなかったですか?」
『魔物が来ても高波が来ても、高台に避難すればいいし、私もずっとこの村に居たから他の場所に行ってみたいし、それにマリンさんとやっと会えたのだから、お詫びも兼ねて一緒に居たいと思いまして…』
「ノイミさん、それは有難いけど、この村の人たちのことも考えなくちゃ」
マリンもノイミが来る事は反対のようだ。
『シンヤさん、お願いします。一緒に連れて行って下さい』
「「「「「「却下」」」」」」
嫁たちは却下のようだ。
「でも、こちらの言葉を教えてくれる人は欲しいです。AI翻訳機を作るのにも役立つでしょうし」
クラウディアは賛成のようだ。
「たしかに、こちらの言葉を学習するという点では、人材は欲しいが、ノイミさんでなくともいいだろう」
『村人は仕事があるので、王都まで行くのは無理です。時間が自由になるのは私だけです』
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