第46話 やるべき事
ダリアン国に官僚たちがやって来て、早速、学院や病院などを建設していく。
それに合わせて、国民への文字の普及を行っていき、1年後位には選挙を行いたいと考えている。
また、国民へはネルエ川が既に海峡となった事を伝え、エルバンテへの航路や空路も開設する。当然、港や空港も作らなければならない。
未だに、エルバンテでも建設工事は人手不足だが、更にスノーノースやダリアンでも建設しなければならないので、キバヤシ建設は大変だ。
「ところで、ネル、それにワイシコフ宰相、ここはエルバンテ国ダリアン州となりますが、この王都の名前はどうしますか?」
「王都の名前ですか?」
ワイシコフ宰相が今更ながらという顔をして聞いてきた。
「ネルはどうする?」
「私は、シンヤ市でいいと思います」
いや、そんなのは勘弁。
「では、ネルエデッィト市で…」
「えー、そんなの恥ずかしいわ。ワイシコフ市でいいんじゃないかしら?」
「お二人とも止めて下さい。私の名前なんて点けて、どうしようと言うんですか?」
「うーん、ダリアン市にするか?」
「「それでいいです」」
二人の了解を得たので、そのまま「ダリアン市」になった。
スノーノースとダリアンの幹部10名ずつをエルバンテへ研修旅行に出すことになった。
もちろん、ワイシコフ宰相と白熊人のケモリットも居る。
二人と両国の幹部20人は貨客船の「ムサシ」に乗って、エルバンテに出発して行く。
その前にムサシを見せたところ、まずはその大きさにびっくりし、次に船内の中に至っては、口が塞がらない状態だった。
更にこの船は帆が無い。
ワイシコフが「どうやって動くのか」と聞いてきたので、ガスタービン駆動だと教えたところ、ガスタービン駆動から説明することになった。
輸送船団は荷を降ろすと、エルバンテへの航海に出発したが、「ヤマト」と「ミズホ」はここに停泊して、非常事態に備えることになっている。
「シンヤさま、これからどうするの?」
エリスが聞いてきた。
その横には嫁たちも居て、同じような顔をしている。
これからどうするか、知りたいのは当然だ。
「2,3か月程、ゆっくりしようと思う」
「ダリアンに居るという事ですわね」
今度はネルが聞いてきた。ネルはこの国の女王だったのだから、ここに居たいと言われて嬉しいのだろう。
「ネル、残念だが、ここに居る訳ではない。トウキョーにあるセントラルシティに行く」
「「「「「セントラルシティへ???」」」」」
ネルはエリスの転移魔法でトウキョーにある俺たちの自宅に来た事はあるが、自宅から外に出た事はない。
「そうだ、ネルはセントラルシティへ行った事がない。転移魔法で行ったのは俺たちの自宅だけだ。
なので、セントラルシティ、エルバンテ市、キバヤシ州を見せてあげようと思っている」
「なるほど、いい案ね」
エリスは賛成のようだ。
「私も賛成です。ついでにネルも文字を覚えた方がいいかも」
ラピスは賛成してくれた。
「私も賛成です。文字を覚えるなら、学院に臨時で入学したらどうでしょうか?」
エミリーが提案してきた。
「それはいいですね。学院の次は、ミュ・キバヤシで店員をしてみては?」
マリンも賛成のようだ。
「多分、アリストテレスさんが、俺の決裁が必要な文書を山ほど抱えているだろうからな」
「ホホホ、旦那さまの言う事は当たってますよ」
ラピスはそう言うが、俺たちの会話を聞いてもネルは何の事かピンと来ないようだ。
「それに、お前たちだって仕事があるだろう」
「そうねえ、大学の医学部の講師もそのままだし」
エリスは、大学の医学部の講師と学院での芸能の講師をやっている。
「私は軍隊の剣術指南をしなければ…」
こっちはエミリーだ。エミリーの剣術に対抗できるのは、軍隊の中ではホーゲンたちぐらいだ。
「私は舞台があるかな」
マリンは結婚したが、まだアイドルをやっている。人魚は歳をとっても老いは感じない。
「私はご主人さまと一緒に居ます」
ミュはそう言うと思ったよ。
「ところで、どうやって帰るの?ムサシはもう出ちゃったわよ」
「そんなのエリスの転移魔法で帰るさ」
「やっぱり、そういう事なのね、では」
エリスが転移魔法を広げようとした。
「まだ、みんなに連絡してからだ。それに、時差があるから、エルバンテは未だ陽が高いぞ」
俺の「陽が高いぞ」の言葉を聞いて、嫁たちが言う。
「そうね、まだいいわね。夜は長いのだから」
エリスよ、お前は夜に何を期待している。
周りを見るとエリスだけでなく、全員が目を潤ませていた。
俺はそれを見て、地雷を踏んだ事を実感した。
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