第25話 終結

 俺がエミリーに言い、門を携帯レールガンで破壊すると、城を囲んでいた兵士たちが中に流れ込む。

 そして、そう時間も掛からずに、ニードリアンとその母親の死が告げられた。

 そのまま、今度はムーギリアン派の城に向かう。

 同じように城を囲み、投降の勧告を行うと、門の上に人が出て来た。

「ムーギリアン陛下の命をお助け頂ければ、投降する。約束して頂けるだろうか?」

「それは、ヨークハイト陛下の御心次第である。早馬を出すので、お待ちなされよ。

 それまでは我々も、手出しはしない」

 3日程で早馬が戻ってきたが、そこには「投稿するのであれば、命は助ける」とあった。

 それにより、ムーギリアン派は投降し、ネルエランド王国を3分していた御家騒動は終結した。


 俺たちは三男のムーギリアンと、その母親を馬車に乗せて王都へ凱旋した。

 兵の解団式が終わると俺たちも家に帰る。

 それからは何事もなく、過ごしていたが、1週間ほど経った時に、ノンデイル将軍が尋ねてきた。

「将軍、今日は何の御用でしょうか?」

「実は、お願いがあって来た。あの、鉄の剣というのを大量に欲しい。どうにか出来ないだろうか?」

「残念ながら、この土地ではあの剣は作れません。ですから、ここにあるだけです」

「そうか、ならば、この剣はシンヤ殿に返そう」

「いえ、この剣はノンデイル将軍がお持ち下さい。これから先も必要となるでしょうから」

「しかし、そうすると、シンヤ殿が困らないか?」

「私は剣の腕はからっきしですし、他の武器もありますから大丈夫です」

「そうか、それなら有難く貰っておこう。それとこの話は知っているか?ムーギリアンが処刑された。もちろん、その母親も処刑された」

「ヨークハイト陛下は投降すれば、ムーギリアン陛下の命は助けると言っていたではないですか?

 それを何故、処刑などと…」

「生きていれば、また担ぐやつらが出てくると思ったのだろう」

「ですが、約束した事をそんな簡単に破棄するなんて…」

「国王になるとはそんなものだ。自分以外、誰も信じられない。国王としての資質は、孤独に耐えられるかどうかなのだ」

「では、ヨークハイト陛下はどうなんですか?」

「さあ、それはこれから分かる事だろう」


 国内が落ち着きを取り戻したので、俺たちもする事が無くなった。

 この機会に、このネルエランドの国を見て見ようと思い、王宮に上がり、国王にしばらく留守にする旨を言う。

「そうか、シンヤ殿はこの国を観光したいのだったな。

 それでは、気をつけて行かれるが良い」

「この国以外にはどのような国があるのでしょうか?」

「これより更に北の方にも国はあるが、何しろ寒くて、穀物が思ったように育たぬと聞いた事がある。

 国の名前は『スノーノース』だが、この国にどのような人が住んでいるか不明じゃ。国王の名も分からぬ。

 もう何十年も交易とかもないからのう」

「その他に国はあるのでしょうか?」

「真北はその『スノーノース』になるが、東北東の方角には『ダリアン』という小さな国がある。

 この国は女王が治める国だが、その女王は人の血を吸うという噂がある。

 シンヤ殿も気をつけた方がいい。それと、もし友好を結びたいのであれば、我々も歓迎しよう。その使者としての役割も任せたい」

「詳しい情報をありがとうございます。それと、使者としての役目も果たせれば、と思います。それでは、明日の朝出立致します」


 王宮を出ると、自宅に戻り旅の準備をする。

 留守はいつもの通り、モメデッドに頼んで行く。

 夜、寝室に入ると嫁たちに指示を出す。

「ラピス、衛星通信で、GPSデータと撮影した画像データを本国に送信。替わりに更に北の方に行くための地図データを受信」

 ラピスが本国とのデータ通信に入った。

 エミリーは、受信したデータを各端末に配信している。

「無線ネッワーク回線を接続します。各人の端末を確認して下さい」

 全員が携帯端末を出して、ネットワークが接続されている事を確認した。

「シンヤさま、着信が来たわ」

 エリスが持っている魔道具の電話に着信があったようだ。

「お館さま、お久しぶりでございます」

「ああ、アリストテレスさん、心配をかけて、申し訳ない」

「早速ですが、開発中だった『ミサイルランチャー』が完成しました。エリスさまに取に来て貰ってもよろしいですか?」

 それを聞いたエリスが、魔法陣を広げ転移していく。

「それと、バックアップとして、ホーゲン隊、ウォルフ隊、ゴウ隊が待機しています。

 それ以外にご指示があれば、ヤマト、ミズホをはじめとする各機動艦隊も直ちに出撃可能です」

「ありがとう。まだそこまでは心配ないから、手持ちぶたさだろうが待機していてくれ」

「分かりました。あっと、エリスさまがこちらに見えました。それでは、ミサイルランチャーをお渡ししますので、お受け取り下さい」

 アリストテレスさんとの会話が終わり、しばらくするとエリスが転移してきた。


「ただいま、私たちだけで敵地に居るもんだから、みんな心配してくれて、いろいろ聞いてきて大変だったわ」

「まだ、敵地と決まった訳ではない。以外と友好国になるかもしれないし」

「でも、助けると言ったのに、処刑してしまう国王なのよ。どこまで信用できるのやら」

「俺はノンデイル将軍が、ヨークハイトに従っているのが分からないんだ。家族を人質に取られているとかあっても不自然だ」

「たしかに、そうね。でも、今の段階では、ノンデイル将軍も敵と考えた方が良さそうね」

 エリスの言葉に嫁たちが頷いている。

「それはそうだが、何があるか探れないかな。本人に聞いても正直に話してくれるとは思えないけど…」

 そんな話をしていたが、その夜は全員でシテ、翌朝、ふらつく身体でキチンに乗った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る