第20話 反乱軍との戦い
「これがキチンですか、大きいですね」
厩舎に来た、モメデットが言う。
「ええ、ですから、馬具を外す時は踏み台が必要だと思います」
俺がそう言うと、一緒に来た若い男性がどこからか踏み台を持って来た。
俺たちの指示に従って、キチンから馬具を外す。
降ろした馬具を専用の棚に置く。
すると、モメデットが聞いてきた。
「これは何でしょうか?」
「これはライフルという物です」
「これは?」
「これは携帯レールガンです」
二つともこの北の国では見慣れない物だ。恐らくその使用方法も分からないだろう。
「この四角い物は何でしょうか。何か絵が出ていますが?」
「これはGPSといって、我々の場所が分かるものです。そして、この絵はこの国の地図になっています」
「またまた、ご冗談を…」
地図なんて、地面の上に木で書く物だ。それがディスプレイに表示されているなんて、この国では考えられないと言うか、信じられない。
それに自分たちがどこにいるかなど、何故態々それを知る必要があるのかさえ、理解できない。
この世界の人々は移動の範囲が狭いから、この王都から出ないために、どこに居るかの情報を必要としないからだ。
それとこのGPSは衛星を通して、本国のCICに伝送されているので、本国では俺たちがどこに居るか常時把握している。
この北の国の人が言う南の国、俺たちのエルバンテ帝国はここ十年で俺の居た世界より科学が発展した。
そのひとつは原油や電気といった文明国家が必要とするものがあったおかげだが、もうひとつの要因は魔石研究が進んだことで、魔石の利用方法が進んだのが要因でもある。
携帯レールガンもそうだし、拳銃やライフルといったものも俺の居た世界とは違う物になっている。
そして、携帯レールガンも、ライフルも、拳銃にも静脈認証がついており、本人以外は使用できないようになっている。
「それでは、夕食にしますので、邸宅の方にお越し下さい」
一通りの説明を聞いたモメデットが言う。
「食事は、我々が作ります」
「えっ、ですが…」
「いいです。食事だけは我々でやります」
「は、はあ」
早速、ミュやラピスを始めとして女性陣が厨房に入っていくと、そこに居た侍女たちが何事かと驚いている。
ミュたちが食事を作り出すと、自分たちの仕事がなくなって戸惑っているようだ。
エリスが食材を鑑定するが、どれも毒は入ってないようだ。
冷蔵庫が無いので生物はないが、野菜類は多い。
肉や魚は、自分たちがカイモノブクロに入れてあるので、それを使う。
今日の夕食はハンバーグにした。
食事が済んだら、風呂に入る。この国には風呂という文化はなかったが、俺が要求したために、この家に、家族全員が入れるだけの風呂を作って貰った。
これは、マリンが1日1回は水に入らないと身体が小さくなってしまうために、必需品だった。
そして、浴室の隣は寝室になっている。寝室も家族全員で寝れるようになっている。
俺たちは久々にその夜、全員でシタ。
俺たちは国王の臣下ではないので、毎日、王宮に行く必要がない。そのため、翌日もすることがない。
なので、キチンに乗って、街に出てみる。
だが、街は閑散としているし、市場もない。
だとしたら、食物はどこから持ってきているのかとモメデットに聞いたら、農家が持ってくるのを買っているという事だ。
流通事情が、かなり遅れている。
道だって、石畳なんてない。王都でさえ、土の道路だ。
そんな事をしていたら、1週間経ってから王宮への呼び出しがあった。
俺たちはキチンに乗って王宮に向かう。
謁見の間に入ると既に国王とノンデイル将軍、それにモークレア将軍が居た。
「おお、シンヤ殿、よくぞいらしてくれた。それでは早速だが、話を進めよう」
そこからはモークレア将軍が話を引き継いだ。
「実は、ニードリアン派とムーギリアン派が手を組んだ。そして、王宮に攻めてくるという情報が入った。
そこで、王都で迎え撃つか、途中で迎え撃つべきか、どうかの議論をしていたところだ」
「なるほど、それで結論は?」
「今回は、途中で迎え撃つ作戦で行く」
「なるほど、ご賢明な判断と考えます。それで相手方の戦力は分かっているのでしょうか?」
「両派が手を組んだと考えれると、その数1万、そのうち魔法兵が20人ほど居るが、強力な魔法を使う魔法兵が居るとは考えられない」
「それで、地図はありますか」
「これです」
モークレア将軍が、地図が書かれた用紙を出すが、羊皮紙の上に線が掛かれたような地図なので、何処が何処なのか全く、分からない。
「ここの草原が決戦場と考えています」
地図を示すが草原かどうかさえ、周辺の状況がどうかも不明だ。
モークレア将軍は説明していくが、国王とノンデイル将軍はしたり顔で聞いている。だが、俺たちは土地勘もないため、まったく理解できない。
「…と、なります」
モークレア将軍の説明が終わった。
「シンヤ殿はどう考える?」
「我々は土地勘がないので、正直分かりません。ですから、一度この場所に行って現場を確認したいと思いますが、時間はありますでしょうか?
もし、時間が無いようであれば、向こうで落ち合う事でも良いです」
「分かった、そうして貰おう。それとこれは、この国の通行許可証だ。これがあれば、無条件でこの国の関所が通行可能だ」
俺たちは国王から通行許可証を受け取り、謁見の間を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます