第9話 王都
「獣人は鼠族ですか?
「ええ、ここでは、鼠族が一番偉いです。次が豚族、鼬族の順になっています。正直、この三族以外は、人として認めて貰えません」
「他の獣族だって居るでしょう?」
「居ますが、人族よりは上という扱いです。それでも、迫害されています」
「なるほど。ですが、クーデターとかは起きないのですか?」
「ひとつ問題があります。鼠人の将軍として『ノンデイル』が居ます」
「ノンデイルとは?」
「虎族のくせに鼠人の用心棒兼将軍をしています。
これが恐ろしく強くて、この国の中では誰も勝てません」
「そんなに強いんですか?」
「ええ、隣国との争いの時、単騎で、100騎を打ち取ったとして名を上げました。
それに、魔法力もかなりのものです。
得意な魔法は火魔法ですが、雷魔法も使います」
「どうして、それを知っているんですか?」
「あの豚族たちが話しているのを聞いたんです。狼族の将軍を簡単に始末したそうで、一時期、関所はその話題で持ち切りでした」
「何故、その虎族の男は、鼠族なんかに加担しているのでしょう」
「金とも家族とも言われています。ですが、本当のところは分かりません」
「もう少し、その虎族の男について知っている事がありましたら、教えて下さい」
「その男は恐ろしく長い長剣を使うそうです。その長剣を背中に背負っているので、一目で見分けがつくそうです。
あと、すごく、いい男らしく、女からの人気も高いらしいですが、何故か女には興味を示さないそうです」
なにか、ホーゲンの事を聞いている気になってきた。
「なんだか、ホーゲンみたいね」
エリスが言うが、他の嫁たちもそう思っているのだろう。
「それと、あとどれくらいで王都に行けるか分かりますか?」
「ここからだと3日というところでしょうか?ですが、王都はかなり治安が悪いそうですよ」
「それは、次の王を巡って、兄弟が争っているからですか?」
「その事はご存知でしたか。そうです、今や兄弟の私兵やそれを応援する取り巻きが王都内でぶつかり合うというのも日常茶飯事であり、その度に王都民が犠牲になっています」
「王都に入るのに不審者として、制限を受ける事はありますか?」
「いえ、今は治安が乱れているので、王都に入るのに審査は無いと、役人から聞きました。
ですが、人族と分かると、役人が来て、捕まえて奴隷商人に売るそうです」
「分かりました。正体がバレないように注意します」
俺たちは男たちと別れて王都へ向かう。3日後に王都の外壁と門が見えてきたが、門兵はいないみたいだ、
俺たちは正門から堂々と入って行く。城壁の中に入ると、王都とは思えないほど、人気がない。
時々、獣人を見るが、慌てた様子で家の中に入って行く。
王都の大通りに来て、中心部を眺めると、真ん中に全体が黒い大きな、お城が見えてきた。すると、そこが国王の居住している王城だろう。
俺たちが国王の城を見ていると、後ろから声を掛けられた。
振り向くと、頭に鼠の耳が生えた鼠人だ。
「おい、見かけないやつらだな。お前たちは何者だ。もしかして、ニードリアンかムーギリアンの回し者か?」
「いえ、我々は、ただの通りすがりです」
「は?何を言っている。まずはそのフードを取れ」
俺たちがぐすぐずしていると相手はイラついたのか声を荒げてきた。
「オラ、さっさと言う事を聞け。俺たちを誰だと思っているんだ」
俺たちは仕方なく、フードを取った。
「なんだ、人族か」
「いえ、猿族です」
「下手な嘘はつくな。猿族に髪が黒いやつが居る訳がない。人族には、たまに黒髪の人間が生まれるそうじゃないか」
この男、結構賢い。てっきり乱暴を働いているから、頭の方は今一だと思っていたのが間違いだった。
「ばれたら仕方ありません。たしかに我々は人族です」
「ほう、その人族が何用があって、ここ王都に来た」
「信じて貰えないかもしれませんが、観光です」
「観光?何を寝ぼけた事を言ってやがる。この地に観光などと。
どちらにせよ、取っ捕まえてしまえ。ニードリアン派かムーギリアン派とやる時には役に立つだろう」
「「「「「へい」」」」」
配下らしい男たちが俺たちの方に来るが、ミュ、ラピス、エミリーが剣で対応すると、俺たちを捕縛できない。
「てめーら、いい気になりやがって。おい、応援を呼んで来い」
配下の一人が駆け出して行き、しばらくすると20人ほどが、こちらに来た。
中には槍を持っている者も居る。
「槍隊、前へ」
隊長らしき者が叫ぶと、槍を構えた兵士が、前方に並んだ。
「おい、いい加減、下手な抵抗はよせ。言う事を聞けば、命だけは助かるぞ」
「そちらがどうしても捕らえるというなら、我々も力ずくで抵抗するだけだ」
「ほう、威勢が良いじゃねぇか。それなら、命で償って貰おう。やれ」
槍隊の兵士がこっちに突っ込んでくるが、エミリーがそれを華麗にかわし槍隊の兵士2人を斬った。
「てめえら、喧嘩を売ろうって魂胆だな」
「いえ、そんなつもりはありません」
「貴様、何をふざけている。こうなったら、全員で行くぞ、やれ」
「「「「おー」」」」
兵士たちが全員でこちらに向かって来た。
俺たちはエミリーに続き、キチンを降りて、剣で応戦する。ミュはいつものオリハルコンの剣ではなく、鉄の剣を使う。
俺も鉄の剣を使った事があるが、俺の力では鉄の剣は重いので、すぐに疲れてしまう。
なので、俺とエリスは後方に居て、高みの見物だ。
マリンはと見ると、マリンもレイピアを使い、華麗に戦っている。
しばらくすると、兵士たちが力尽きてきた。
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