『助けて』と言いたくて。
「も、ももさん……!? なんで泣いて……」
璃音を含め全員が涙が止まらなくなっているももを心配がった。だが……由莉はそこから考えられる……ももに起こった悲劇に言葉を失っていた。
(ももさん…………、っ!? うっ……)
それとほぼ時を同じくして、由莉は自分の動悸が激しくなるのを感じた。苦しくて心臓が止まりそうになり、胸が締めつけられるような感覚を覚え、苦痛に顔を歪ませた。
(なんで……今起こるの……っ!! っい……た……)
顔には出さないようには出来る程の痛みと戦いながらも、由莉も、ももを心から心配していた。
「もも……さ、ん…………?」
「ごめんね……守ってあげられなくて……ごめんね……っ」
そのももの言葉は……由莉たちを驚かせると共に深い哀しさを覚えさせられた。
ももより小さい璃音を抱いて2回も泣き、今の『守ってあげられなくて』の意味を合致させると……ももに起こったことは容易に分かってしまった。
だが、それは自分たちの口からは決して言えないくらいに辛く残酷で、ただ、ももが泣き止むのを待つしか出来なかった。
────────────────
ももは泣き止むと膝から座り込んで、なんとか涙を拭おうとずっと目を擦っていた。
「…………ごめん……ね……」
「いいですよ、ももさん。ちょっとびっくりしただけなので気にしないでくださいっ」
璃音もそう言いつつ、自身でも、ももに何があったのか考えを広げた。
(ももさん……何があったのかな……。よく分からないけど……あんなに泣いてたけど……すっごく……『暖かった』……)
あの暖かさ、璃音はその中に深いなんて言い表せない哀しさと苦しさを感じた。なぜだか、璃音の心もきゅっと締めつけられた。
───その中、ももはただひたすらに苦しみ続けていた。感じていた苦しみが一気に強まり、今でも首を締められているような痛みを感じる。助けてなんて言わせない、そう言わんばかりに、身体を無意識の中の意識が蝕んだ。
「…………っ」
(くるし、い…………っ、助けて……この苦しみを……どうすれば無くせるの…………?)
少しでも気を抜けばそのまま魂まで刈り取られそうに感じたももは本能のままに助かろうと方法を模索した。だが、それすら許さないと考える度に頭が金槌で打たれたように痛む。
(だれか……おねがいだから…………)
足掻きに足掻いて……ももはひとつの言葉を思い出した。
『もしも、心が苦しくてたまらなくなったら、逃げてもいいんです。一人で抱え込む必要なんて全くありません。誰かに相談に乗ってもらったり……本当にその場所から逃げ出してもいいんですよ』
(言えば軽くなるの……? でも、こんなことを言っても……みんなが辛くなるだけだよ……っ)
そう心に言い聞かせて抗うだけ抗った。だが、ももの胸の内はもう限界まで達していた。このままだと、いずれ自分が自分でなくなってしまいそうだった。
ももは助けを求めるように由莉の方を見ると、不安げに、なぜか苦しそうに、琥珀の瞳がまっすぐに自分を見つめていた。それを見た時、ももの中の抗う心が急激に沈められていった。
───もう、いいんだよ?
そう言われているようだった。震える声で、ももは全員に頭を下げた。
「わたしの過去の話を……聞いてください……。こんな話……聞くだけ辛いよ……でも、わたし……っ、もう耐えられない……っ」
遂に───ももの心が開いた。由莉達は真剣な眼差しで頷くと、ずっとタイルの上は寒いだろうとももと場所を交代し、聞く準備を整えた。
「……ありがと……ね。それじゃあ……聞いてください。わたしと……わたしが大好きだった……、
『妹』のお話を」
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ようやく辿り着きました。
これから始まる物語は……辛く苦しいものになると思います。優しく、裏の世界に縁もなさそうなももをここまで引きずり込ませた過去が明かされます。
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