第6章 復讐の物語

第0節 新しい物語

再び始まる物語

 ───とある研究室───


「研究はどうだ、No.9よ」


「ひぇっ、ひぇっ、ひぇっ。順調でございますよ。『あのサンプル』も手間はかかりましたが、もうまもなくいい『駒』になるかと」


 No.9と呼ばれた人物は気味悪い笑みを浮かべながら後ろの大がかりな装置の中にいる『もの』をその人物へ見せていた。

 一見は……人間───少女……のようにも見えるが、死んでいるように緑の液体の中に浮かんでいた。だが、ごぽっ……ごぽっ……、と時々口から気泡が出ているのだから、生きていると言われれば生きているのかもしれない。


 そして、その後ろには…………同じような装置が何十も……下手すれば100もあるかもしれないくらいの量が並べられていた。


「そうか。ならば、早く終わらせるんだ。そろそろ『やつら』が動き出す頃だから手駒は多い方がいい」


「ひぇっ、ひぇっ、ひぇっ、おまかせを、主様。必ずや、素晴らしい『作品』してみせましょう! ひぇ〜〜っひぇっひぇっ!」


 ───これが、後にとんでもない事態を招くと……誰しもが分かるわけがなかった。終わりには……まだ最後があったのだ。



 ★★★★★★★★★★★★★

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ───ここは日本。されど、いま生きている自分たちの日本とは少し違う。ほんの少しだけ技術が進歩したが、それと反比例して……




 治安が終わってい『た』国だった。


 裏の世界での薬の密入や特定地域の支配、これだけに飽き足らず、末期には国の幹部までもがその一員だという……言わば腐りかけの国だった。

 治安も悪く、暴力事件や虐待、殺人が現在の2倍ほど多かった。


 普通に生きている人も、いつ自分が巻き込まれるか分からないと怯えて暮らさなければならずにいた。

 それが…………この国、日本だった。




 ───『数年前』までは。


 ある時期を境に、組織数500以上、20万人を超えると言われていた裏の人間は瞬く間に姿を消し、現在ではあるのだけで150程もなく、そのほとんどが鎮静化して、平和はだんだんと取り戻されつつあった。国の中枢の腐敗もその時期を機に、その機能を急速に取り戻し、裏の世界と絡んでいたと思われる人物は一人残らず行方が分からなくなったという。



 その背景には………たった1つの組織の存在があった。


 人員不明、構成員数不明の謎の多い組織───『RooT』。ごく一部の界隈では、たとえ死んでも敵に回してはいけないと言われた組織だった。様々な評判が飛び交い、畏怖とも呼べる対象になっていた。


 そして、RooTは日本だけに留まらず世界各地にその支部のような組織が存在し、その権力は国家レベル、とも言われていた。……と言うのも世界各地の大企業や国の幹部に伝手があり、某大国の軍隊とも手を結んでいる、なんてことも言われている。まさに、世界中に『RooT』の根が張っているのである。



 そんな組織を統べているであろう者を────全ての始まり、根源、絶対者という意味でRooTのメンバーが勝手に『ゼロ』と呼んでいる。また、その配下の者達はRooTの中でも比べ物にならない強さを誇ったという。


 曰く、たった一人で中規模組織を壊滅

 曰く、一夜にして300人以上の大量殺戮

 曰く、音もなく颯爽と現れては一瞬にして目標を始末する

 曰く、一大組織の首領を1.5km以上先から乗組員を含め全員を狙撃した


 曰く………曰く…………



 あくまで知る人ぞ知る都市伝説的なものであったが、耳にした者の大半は信じていた……いや、信じざるを得なかった。


 その原因は『ゼロ』にあった。その者は冷徹な人物で反逆行為をした者を有無を言わせず皆殺しにし、さらには一族郎党までもが消しさられた、なんてとんでもない人物だという認識が広がっていた。だからこそ、何がなんでも裏切りなんて許されず、敵にもしたくなく、手を結ばなければならない存在だったのだ。






 ……と、話してきたが最近、こんな話もある。


『RooTメンバーの中には小さな女の子たちがいる』


 さすがにご冗談を、なんて鼻で笑う者もいたが……その正体を知るものは絶対的に口にはしなかった。もし、口にしようものならば………




 翌日にはその命は握り潰されているから。




 これはとある国の幹部の話だが、裏の組織の情報と壊滅させる依頼を出した時……その3日後にやってきた人物にその証拠写真と共にこう言われた。


『この事を話したらどこへ逃げても殺します。話さなければ何もしないので、よろしくお願いしますっ』


 ……と、1人の少女に。その手には、おびただしい血と首や四肢が吹き飛んだ死体で彩られた写真が山ほどあり、その笑顔と相まってショックでその場で失神したという。


 なお、その人は写真を全て廃棄し、その事を一切誰にも話さなかったようで、この事を知るのは極々一握りの存在だけどなっていた。


 ★★★★★★★★★★★★★★★


 さて、それでは……続きを始めよう。


 これは、『RooT』の中で生きる、銃を手にした少女達の物語。……始まっていく復讐の物語。




 そして…………叶うことのなかった約束の物語。



 ────────────────────


 事実上のゆりスナ!第2シリーズ開幕です。

 第6章第1節『運命の中に生きる少女たち』は3月公開です。いい作品にして見せるのでお楽しみにしていてください!!!


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