璃音は役に立ちたいです! 1’st

第1シリーズ最終話2~3話構成でいきますよ!

────────────────────


「ふっ!!」


「ほらほらっ! そんなんじゃ追いつけないよ!」


 ショットガンに付けた銃剣を突き出すけど、さらりと躱されます。すかさず後ろに飛び退きながら、体勢を整えて引き金を引くも、その時にはもう懐に入られ、拳銃を右足に押し当てられていました。


「────っ」


「……さよなら」


 軽い銃声。激しい痛み。その前に璃音は倒れてしまいました。……悔しいです…………こんな……また……っ、
















「ふぅ、これで3戦全勝だね」


「天瑠……やっぱり強いね。璃音じゃ、もう相手にならないよ……」


 天瑠の手を借りながら痺れる足を何とか奮い立たせました。


 ……今やっているのは模擬戦です。そろそろ、動くことがあるかもしれないということで、模擬戦用の弾を導入して本格的に戦闘の練習をし始めました。


 だけど……璃音は今までに1度も誰にも勝てていません。由莉ちゃんにも、お姉様にも、天瑠にも、阿久津さんにも、音湖さんにも……誰もです。みんな強すぎて……敵いそうにありません。


「璃音……凹まない? だって…………」


 璃音が今まで一勝も出来ていないのを天瑠は気遣ってくれています。本当に天瑠は優しい姉です。

 ……もちろん、悔しくないわけがありません。頑張っても追いつけない所までいかれると……少しくるものがあります。けど…………


「でも、今日は天瑠の動きを止めた。これだけでも進歩だよ。それを積み重ねれば……天瑠にも、みんなにも勝てる」


「……すごいよ、璃音。もうあの頃の弱気だった璃音じゃない、強い璃音になったんだね」


「みんなが諦めないんだもん。璃音だって負けてられないよ。……今は一番弱い───最弱かもしれない。けど、いつかはみんなにも勝てるようになるよっ」


 始めてから……1週間経ちましたが、璃音はこっそりとみんなの戦績を記録しています。5分以上は引き分けで、毎日全員と3戦ずつしていますが、昨日までで…………


 璃音

 →105戦0勝105負

 天瑠

 →105戦21勝84負

 由莉ちゃん

 →105戦50勝34負21分

 お姉様

 →105戦53勝31負21分

 阿久津さん

 →105戦83勝22負

 音湖さん

 →105戦87勝18負


 見てて分かりますが……由莉ちゃんとお姉様が全戦全分けなんです。話を聞いていると、由莉ちゃんとお姉様は相性が最悪レベルで悪いようで、決着が一向につかないみたいです。


 ……それに、最近、音湖さんとお姉様の仲がすっごく悪いみたいです。お姉様が初日に2勝で勝ち越し、2日目も勝ち越して調子に乗ったらしく、音湖さんがそれに腹を立ててお姉様に何か言ってから……3日目から戦闘というより殺し合いに発展しているようです。

 4日目から音湖さんが髪を真っ白に染めてから……音湖さんが45戦30勝14負から……80戦して負けたのがたったの4回、阿久津さんに3回、お姉様に1回負けただけで後は全勝ですね。


 ……天瑠もこうやって振舞ってはいますが……立場は璃音と似ています。天瑠も……4人に1勝も出来ていないのです。悔しくて……たまらないはずです。


「……天瑠も頑張らなきゃ、ね。負けてられない」


「うんっ。……それにしても……本当にみんな強いね……阿久津さんと音湖さん、お姉様なら分かるけど……まだ8ヶ月の由莉ちゃんがこんな強いなんて……すっごく頑張ってきたんだよね」


「それは間違いないよ。お姉さまに追いつくなんて……血を吐いてもおかしくないくらい頑張らないと……多分やってけない」


 璃音たちでさえ、まともに動けるようになるまでに半年はかかりました……、由莉ちゃんは成長期?だからって言ってましたが……そんなわけないです。……けど、あんな由莉ちゃんだから……それに、頼りになる阿久津さんと音湖さんがいたからでしょうね。


 何故でしょうか。




 由莉ちゃんの周りには自然と人が集まってきます。そして……必ずみんなを笑顔にさせてくれる……本当にすごいですよね、ふふっ。


「よ〜し、みんなに勝てるくらい強くなろ、天瑠!」


「まったく……言われなくても強くなるよ、璃音」


「うんっ……じゃ、みんなどうなったか聞きに行こっか」


 今日も戦績の確認は怠りませんっ。これで120連敗ですが、少しずつ……本当に少しずつ進歩はしています。いずれはみんなにも─────そう思いながら戦闘用のステージを出てあの広いいい場所へ出ると……1人の女の子───由莉ちゃんが阿久津さんの側でコンクリートの地面に背中をつけていました。


「阿久津さぁん……段々強くなってませんか?」


「どうでしょう? 皆さんがますます強くなっているので、私も負けていられないですからね」


「ううぅ………あっ、璃音ちゃん!天瑠ちゃん!」


 何やらお話をしているようでしたが、璃音たちに気づいた途端に、由莉ちゃんはバネみたいに跳ね起きると璃音と天瑠に抱きついてきました。


「ゆ、由莉ちゃんびっくりするからやめて〜〜!」

「由莉ちゃん、びっくりしますよ〜っ!」


「ごめんごめんっ。あ〜ふたりとも可愛いよ〜〜」


 ほっぺをすりすりしてくる由莉ちゃん。ぷにぷにで気持ちいいですが……少し恥ずかしいです……


「……うぅ……」

「あぅ…………」


「ふふっ、ほんと可愛いね〜。さてっ、後は天音ちゃんと音湖さんだけど…………聞こえる?」


 由莉ちゃんにそう尋ねられ耳を澄ましてみると2人の怒声が微かにだけど聞こえています。……もしかして…………


「また殺しあってるのですか?」


「うん……とりあえず2人のいる部屋の近くまで行ってみよ?」


 ─────────────────


 近くまでくると、お姉様と音湖さんが何を話してるのか……やっと聞こえました…………。


【ぶっ殺されたいなら今すぐ実弾を頭にぶち込んでやろうか!?】


【はっ! ひよっこが思い上がるなぁ!!X=0(関数)……ふふふ】


【殺す……絶対に口の中に銃をねじ込んで撃ってやる!】


 ……2人とも何をしているのですか……


 璃音を含め、4人は完全にあきれかえっていました。特に由莉ちゃんは顔を引き攣らせながら笑っていました。


「X=0……天音ちゃんが唯一気にしてる所を……」


「お姉さまがあんなにぶちぎれたの……見たことない……」


「これ……模擬戦だよね? 気迫がもう……戦場だよ…………」




【にゃははっ! まだまだ甘いよ、No.2さま♡】


【……後でその頭吹き飛ばしてやる…………っ】


 ようやく終わったらしく悪態をつく声が段々大きくなってきました。もう、その頃にはみんな呆れ返るようにしながら2人が出てくるのを待っていました。


「今からAWSでその顔めちゃくちゃにしてやるか……ら…………」


「大人を舐めるな。まったく………これだか……………ら…………」



……



…………



「なにやってるんですか!?」

「なにやってるんですか!?」

「なにやってるんですか!?」

「なにやってるんですか!?」

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