由莉達はご飯を食べました

 文量が多いので2話に分けました

 そして恒例の飯テロ回です

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「えりかさんのは聞こえませんでしたが……何やら大きい音がそこから___」



「っ!、どこ見て言ってるんですかっ」



 阿久津の視線がチラッと由莉のお腹の方に向けられたのが分かり、由莉はカンカンに怒った。



「阿久津さんって、ほんとはロリコンなんじゃないんですかっ?」



「何を言ってるのですか?私はただ由莉さんをからか……いや、あそ…………一緒にいるのが楽しいだけです」



「今、変な言葉が聞こえた気がしますよ?」



「いいえ、気のせいです」



 由莉と阿久津のそんな会話を聞いてえりかは自分でも気付かぬうちに笑い始めていた。



「あははっ、ゆりちゃんと阿久津さんって仲がいいんですね」



「はい、そうですよ」



「むぅ……阿久津さんの事は好きですけど……もう少し優しくして欲しいです……」



 阿久津はその言葉をサラッとスルーするといつもの机に料理を二人分置いた。作りたてのようで、湯気が二つ立ち上っていた。

 その器には透明感のある茶色のだしの中に白くて太いうどんと、輪切りにされたネギ、天かす、そして卵の卵黄が一つ存在感を示すように器の表面の一部を占領している。



「今日は、温玉うどんを作ってみました。えりかさんもまだ病み上がりみたいなものなので、お腹に優しいものがいいと思いましたので」



「阿久津さん、わざわざありがとうございます」



 えりかは自分のことも考えてくれてるんだと思ってとても嬉しかった。うん、ゆりちゃんが好きになるのも分かる気がするな〜



 すると由莉は、何かを思い出したようにキョロキョロと辺りを見回すと『あれ』が足りない事に気がついた。



「阿久津さん、椅子が一つしかないです」



「そうでした、取ってきますので少し待っててください」



 そう言うと、阿久津は部屋を出て走っていった。



「……いい人だね、阿久津さんは」



「まぁ……いい人だと思うよ?けど……からかいすぎだよ……」



「そう?ゆりちゃんも少し楽しそうだったよ?」



「ち、違うよ。楽しくなんかっ」



 由莉はそう言ってぷいっ、とそっぽを向いてしまった。



 そうしてる間に阿久津が部屋にあったものと同じ椅子を持って部屋に入ってきた。



「どうぞ、気づかなくてすみませんでした。冷めない内に食べてくださいね」



「は〜い」

「はい!」



 由莉とえりかはそれぞれ返事をすると椅子に座り箸を手に取ると「いただきます!」と元気に言うと二人ともまずは麺をすすった。

 うどんのモチっとした食感とだしの濃さが口内の味覚や感覚を刺激しまくり、二人揃って頬がキュッとなった。

 それに慣れると、由莉はぷるぷるしている卵黄を箸で摘んだ。かなり新鮮なものを使ったのか、持ち上げても切れる気配がない。



「すごい……摘んでも全然割れないよ……」



「ゆりちゃん、早く食べよ?」



「う、うん……」



 えりかはもうその味に夢中になっていた。えりかも由莉も忘れていたが、二人とも夕べから何も食べてないのだ。えりかに至っては2日間眠っていたのもあって、本当にお腹がすいていた。

 えりかは早々に卵黄に箸を突き刺しその中身を外へとぶちまけた。トロリとした黄色く暖かいものが中から流れてきて、えりかはそれをうどんに絡ませてすすった。黄身の濃厚な味わいが、さっきまでのうどんに違うアクセントが付け加えられ堪らなく美味しかった。美味しすぎてえりかは少し泣きそうになったが、気にせず無我夢中で食べた。

 そんな様子を由莉は嬉しそうに見ながら自分も食べる速度を早めるのだった。



 __________________



「ごちそうさまでした〜」

「ごちそうさまでした!」



 食べ終わった二人の器には汁の一滴すら残っていなかった。えりかは阿久津にそれを渡すと笑顔でお礼を言った。



「阿久津さん、とっても美味しかったです!」



「ありがとうございます、えりかさん」



 お腹がいっぱいになり心も体も満足したみたいでえりかも上機嫌そうにしていた。



「えりかちゃん、阿久津さんの料理どうだった?」



「うん!美味しかった!」



「それは何よりでした。では、私はそろそろ行きますので由莉さん、えりかさんおやすみなさい」



「おやすみなさい!」

「おやすみなさい!」



 阿久津が部屋から出たのを見届けると由莉とえりかはもう一度お風呂に入り、昼寝の間にかいた汗を洗い流し、再びベットの上に寝転がると___由莉は今日1日でよっぽど疲れたのだろう。死人のように眠ってしまった。


 しかし、えりかは____まだ寝れずにいた。

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