三人は遊戯をしました 下

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簡単な麻雀のルール説明



・基本勝利条件

誰よりも多くの点数を獲得する



・ゲーム内容

配られる14個の牌で役を作って1番先に上がった人が1人もしくは自分以外の全員から点数を奪える。手役の難しさによって点数が変わる。

それを何回か繰り返す。



・牌の種類

筒子(ピンズ)→丸いマーク。その数で1~9まである

萬子(マンズ)→1~9の漢数字+『萬』の字が付く

索子(ソーズ)→竹みたいな棒の数で1~9を判断

字牌→東・南・西・北・白・發・中の7種類




・手役(一例)

立直(リーチ)→あと一つ揃えば役ができる状態でリーチ宣言をすること

断么(タンヤオ)→字牌と1・9以外で役を作ること


国士無双→東南北南白發中と筒子索子萬子の1・9、それらを1枚ずつとその13種類の中のもう一枚を揃える役(滅多に出ません)


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「こんな感じだ。点数計算は二人でやるからまだ覚えなくてもいい。ざっくり説明をしたが分かったか?」



大人でも理解するのはかなり難しい。阿久津もマスターから教わった時は何日も理解するのに苦労した。役がとにかく多いのだ。それに様々なルールもある。だが、ある一点を超えると一気に楽しくなる

流石に由莉さんでもこれを短時間で理解するのは無理だろう。阿久津もそう確信していた。だがその考えはそうそうに崩れ去ることになるのだった。



「はいっ、覚えました!それにしてもルールすごく多いですよね……役も覚えきれたとは思うのですが実践でやってみないと分からないです……」



……今、この子なんて言った?もう覚えた?この短時間で?



二人は思わず目を見合わせた。いや、まさかな……と思いつつ1局やって見ることにした。



「今回だが、一般的な3人麻雀のルールで萬子の2~8を抜くからな?」



「国士無双とかその他の役が作りやすくなるし、点数の変動がすごくなるからですよね!」



「……そこまで、分かっているのか」



由莉の指摘が的を射抜いていたことに二人はまたもや驚かされた。頭の回転が早すぎる……そう言わざるを得なかった。

とりあえず、全自動の雀卓に牌を入れて阿久津はボタンを押した。すると自分の目の前に2つ積まれた牌の山が3つ出来ていた。その様子を由莉はびっくりしながら見ていた



「おぉ〜……!すごいです!」



「ではやろうか。由莉、勝負事だから手は抜かないぞ」



「マスター、由莉さんをボロボロにしてトラウマを植え付けないようにしてくださいね……?」



「むくぅ……阿久津さんって私を心配しているのか、からかっているのかたまに分かりませんよぉ……」



由莉は顔を膨らませつつ、反時計回りにマスター、由莉、阿久津の順番で山から4つずつを3

回繰り返したあと、マスターは2枚、由莉と阿久津は1枚取り出すとそれを並べた。



・由莉

2索 4索 赤5索 5索 6索 6索

2筒 2筒 赤5筒 9筒

東 中



ええっと……まずはマスターからだね……それから次は私……いい牌が来てくれるといいなぁ……



9萬……うーん……国士無双も狙えそうにないし、大丈夫かな。そう思うと由莉は持ってきた牌をそのまま自分の前に捨てた。



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その後は阿久津のカンによってドラ牌が増えた(より高い点数が狙えるようになるが、被弾のリスクも上がる)以外は何事もなく進み、由莉の12回目の牌めくり。その頃には上手く牌が来てくれて上がれそうな気配があった。



・由莉(12巡目直前)

【2索 2索 】【4索 赤5索 6索】 5索 6索

2筒 【 2筒 3筒 4筒 】赤5筒 7筒



えっと、4索(竹みたいなものが4本書かれている牌)がこれば一盃口……だったかな……?でも、そうなると私が上がれるのは……6筒(丸いマークが6つ)だけになっちゃうから……出来れば6筒来てくれると嬉しいなぁ……



そう思いつつ引いた牌は___6筒



由莉はあと1枚で上がれる状態まで来た。ここで立直をかけることができる。だが___由莉は敢えてそれをやらなかった。相手にバレないように油断した所を狙い撃つ。由莉の役割でもあるスナイパーとしてのプライドがそうさせたのであろう。そして、由莉の表情は一切変化を見せようとはせずポーカーフェイスを貫いた。故に___



由莉が2筒を捨てた直後____阿久津が4索を切ってしまった。その瞬間、由莉はすこし顔を綻ばせると笑顔で宣言をした。



「阿久津さんっ、ロンです!」



由莉は上がった牌全てを二人に公表した。



・由莉(上がり)

【2索 2索 】【4索 赤5索 6索】 5索 6索

【 2筒 3筒 4筒 】【赤5筒 6筒 7筒】



ロン 4索



ドラ 2筒 4筒



「えっと、一盃口、断么、ドラ4で私の親ですから……18000です」



「……………」



「……………」



阿久津とマスターはただ呆然としていた。由莉からは上がる気配が一切見えていなかったのだ。二人の感想は__由莉を甘く見過ぎていた。本気でかからなければ……この子に殺される。そう本能が感じ取った2人は殺気を一気に辺りにぶちまけた。濃密なその気配に由莉は戦慄を覚え顔が真っ青になった。



(やばい……やばいよ、これは……っ)



そこからは2人の点の奪い合いだった。由莉はそれに翻弄され、上がれると思った時にどちらかに上がられ、狙い撃ちされるかのように自分の所にでかい一撃が来たりと由莉はボロ雑巾にされている気分だった。

終わった時には自分の持っている点が底をつきそうになっていた。



「……マスターと阿久津さん怖かったです……」



由莉は二人の殺気に押しつぶされかけプルプル震えながら涙目になって違う意味でトラウマになりかけていた。



「あ、えっと……すみませんでした」



「勝負事になるとな……ついこうなるんだ」



由莉は目の水をジャージで拭うと真っ直ぐな目で二人を見た。その目にはさっきまでの弱気な表情などなく、熱意に満ち溢れていた。ゲームで強者と対峙した時のような……あの興奮を由莉は今感じていた。



「怖かったですけど……面白かったです。それにマスターと阿久津さんに……どうしても勝ちたくなりました」



その不敵な言葉を聞いて二人の表情が僅かにニヤリとした。その顔はまさに勝負師のような表情だった。



「ふふっ、負けませんよ、由莉さん」



「由莉、調子に乗ってるとすぐ点棒が無くなるからな?」



その雀卓の周りは3人のオーラで輝いているようにも見えるくらい熱気に満ちていた。



「マスター!阿久津さん!もう1回やりましょう!」



その後、めちゃくちゃ麻雀をやった。気づいた時には既に2時を回ろうとしていて3人とも睡魔の限界だったようだから、その日はもう終えることにして全員自分の部屋に戻るのであった____。




それからは月4~5回ペースでやる事になったのだが、それはまだあとの話。



そして、この輪の中に【もう1人】入る日はもう少し先の事になるのだった_____

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