三人は遊戯をしました 上

第3章幕間はこれで最後です

次からは第4章へと入っていきます

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 由莉はトレーニングが終わりいつも通りお風呂に入って__ジャージを身にまとった。毎日毎日飽きないのかと思うかもしれないが、由莉はこのジャージが大のお気に入りだった。いい匂いがするし、動きやすいし、寝やすいし……



 そこまで終わると既に夕方だったが、今日の由莉は体力もバリバリ残っていてやる気に満ち満ちていた。故に、すごくうずうずが止まらなかった。



「どうしよう……なんだか走りたいよ……。うーん……そうだっ、夜こっそり地下でランニングしよっと!……少しくらいいいよね?」



 夕食を食べ終わり阿久津が出ていったのを見届けて、暫くすると由莉はこっそりドアを開け足音を立てないようにそろりそろりと素早く歩くと地下へと入っていった。あいも変わらず明るかった外周5km近くある地下の射撃場を由莉はリラックスして何周も走った。



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 ___3時間後



「ふぅ……疲れたぁ〜30kmくらい走ったかな……

 ?」



 由莉は額に汗を浮かべながら地べたに据わって手をついて上を見あげていた。



 時刻は既に10時を回っててまたお風呂にも入りたいと思った由莉は外に出ることにした。


 ________



「うわぁ〜綺麗だなぁ……」



 すっかり空が深い群青色で染め上がりそこにキラキラと光る星が空一面に散らばっているのが良く見えた。空気がきれいな証拠だ。

 由莉は少しの間、その景色に見とれているとふと思い出したように自分の部屋に戻ろうとしていた。すると_____



 パチン



「ひゃっ!?びっくりしたぁ……でも、この音は……?」



 リズムなどなく不定期で鳴るそのパチンという音は由莉の耳を心地よく燻った。あの部屋から聞こえる……?確かあの部屋は___マスターの部屋?



 興味本位で近づいてみるとより明確にパチンという音が聞こえてきた。由莉はバレないようにこっそり近づくと耳を立てて中で何をやっているのか聞いてみた_____



「これで、リーチ……ですかね?」



「阿久津、ロンだ」



「相変わらずマスターは強いですね……えっと……嶺上開花、中、ドラ2で……8000点ですか……」



 そこからはマスターと阿久津の話している声が聞こえてきた。何やら楽しそうな雰囲気だったからついつい耳を壁に押し当てて聞いてしまっていた。



「……由莉、そこにいるんだろう?」



 マスターの声が部屋の中から聞こえてきて、ひゃう!っと飛び上がるとその拍子に足がもつれ盛大にずっこけた。



「うぅ……痛い……」



「由莉さん、どうしたんですか?こんな時間に」



「ええっと……実は__」



 由莉はそれまでの経緯を阿久津に伝えた。



「そうでしたか……それなら一言声をかけてくれると嬉しかったですね」



「す、すみません……それじゃ……部屋に、戻ってますね……」



 由莉は背を小さくして自分の部屋へ戻ろうとすると阿久津が呼び止めた。



「何を楽しんでいたのか、気になってうずうずしている。違いますか?」



「……っ!?え、えへへ……ほんとはちょっと気になります」



「そうですよね。さ、どうぞ」



 阿久津の勧められるまま、由莉はその部屋に入った。すると正方形で緑色のような机と、その上に転がっている無数の青色の小さな物が一面に転がっていた。そしてその前には空の椅子一つと、その真正面にマスターが座っていた。



「こ、こんばんは、マスター」



「やぁ、由莉。この音が気になって来たんだろう?」



 そう言うと、マスターはその背は青色、それ以外は白の物体を2つ持つと少しだけそれをぶつけ合った。パチン、と気持ちいい音が部屋を支配した。由莉は長い間、ネット住民だったが一切それの正体を知らなかった。さっきの会話を聞く限り何かの遊びなのは分かったがそれ以上は分からなかった。



「はい……マスター、それはなんて言う遊びなのですか?」



「麻雀だ。お金を掛けてやる事が多い分不穏な遊びだと囚われがちだが、私と阿久津はそう言うのはなしでやっている」



「触ってみてもいいですか……?」



「あぁ、構わないぞ」



 マスターから許可を貰うと由莉はその中の一つを手に取った。見た目通りかなり軽く、プラスチック独特のツルツルとした感触だったが、部屋の明かりに照らされている綺麗なそれ___牌を見て由莉は目をキラキラさせた。

 そんな由莉を見てマスターは由莉に麻雀を勧めてみることにした。2人だと少し寂しい部分もあった。



「由莉、やってみるか?」



「はいっ!やりたいです!__あっ、でもルールが分かりません……」



「そうだったな……よし、私が教えてあげるからこっちに来なさい」



「ほんとですか!?」



 マスターに教えてもらえると知り嬉しさでピョンピョンと跳ねる由莉を見ていると、とても和ませられるとマスターと阿久津は感じているのだった。

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