公園

(前略)

敷地じゅうの立て看板に書いてある

「おれのからだを公園にするな。」

影もないのにブランコがゆれている

すきとおった振幅がおれのめしべを

公園のように愛撫している

「おれのからだをニュータウンにするな。」

地平を濡らす月明かりで

セラミックにうるわしいのは

免許センターと特別養護老人ホーム

スプリング遊具に描き込まれた相合傘の骸

「全てあなたの所為です。」

070からはじまるひみつの伝言

「バイ@グラ安く売り〼。」

抗ウイルス加工済みの公衆トイレの壁

「暗闇でシカ3匹と!?

 今、誰のが

 入ってるの?

 070……」

涸れた噴水

枯れない花壇

サッカーゴールの赤銅色がまぶしくて

「わたしがしんだらお墓にうめずに

 野ざらしのまま

 クレーターにおいてください。」

地平を濡らす衛星の

クレーターひとつずつに

野ざらしの骸

土をかぶせられることもなく

しらない家族がひとりずつ眠っている

はるか昔

腰にふれてきた卑猥な指が

吊りさげたままの骨盤を青くかたく輝かせる

その、手と手と手と手と手と手と手と手と

(中略)

手が

いっせいに手招きするから

はためく扇に磁気は渦巻いて

衛星は今日も

嵐にまみれているのだ


異星のひと

わたしがしんだら遺失物にしてください

埋葬しないでください

影もないのにブランコがゆれまくる

花紺青の洟をすする

「おれはおれに影を縫いつける。

 「おれはおれに造成されていく。

  「鉄骨を齧る。

   「夜明けに照り映える

    くちなしの

    みずみずしい若葉を喰いあさる。

    「石鹸を呑む。

     「粉薬を吸う。

      「ひとりずつ消えるための公園、

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