国葬
数えきれないつま先立ちが、競いあって弔花を投げこむ 誰もが泣いている 知っている顔はひとつもない、
不作の穀雨がふる みぞれと薬莢の区別がなくなる 広場を切り刻む階段に、耐える踵が、かけてしまいそうで 貴賓室は通り過ぎるためにあって、貨物列車が通るたび、貨車のなかには引揚者が遍在する なつかしい庭園には馴染みがなく、欄干の下の人工芝には、驟雨を受けとめるための花瓶が、いくつも咲いていた
ナット工場の完璧な朝 銀歯を入れた植民者が、「文武両道の育て方」をあたらしい磔刑に曝している 掌がくさい地下室の浴槽では、おおきな腫脹が、水紋のうらを横切ることがあった 国営放送の取材班が撮影したその、藻の鞭毛ひとひらずつが、おまえの誰もいない肖像画
痩身を装備していくことは、こんなにもなめらかで 「こころ」「倦厭」「生きていくために神ではないものを受け入れる」 序列を付された整理番号が、髄液のみずうみで冷凍保存されている にぎりしめられた文鳥が、瞼の血管にそって千千に分枝した
五感の、どれから喪うかという外交を、わたしやわたしでない農夫が、さめざめと協議したものだ 馬鈴薯の白 日々の営みをつづけていくので、ふとい血管から、つまること わが家を焼きはらって行軍に推参する東洋人の、破綻した鼻梁
「竹馬の友」を見つけた、顔が、思い出せない
ほほえみが、枯れ枝のようにはねまわる おまえは棺のなかではしねない、
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