マグリットの屑

マグリットの屑 ファシストの鑑

そこで じりじりうつむくのに馴れていけ


昏い 垂直の坑についてかんがえる

採鉱ではなく抽水のための坑に

水をふくんだいきものがいるのはなぜだ?

パジャマのまま膝立ちになって

待っているようだ

乾いた唐傘がふらす火の粉を


あんたはファシストの鑑さ いうまでもなく

涙をながして踊っていなけりゃ

しんじまいそうだったあの夏から

刻はいくぶん過ぎた そして今

夕焼けこやけ 晩秋の麦の国を

網膜を

肛門括約筋の群れがゆく


ずぶぬれの太鼓をたたくたびに

クリトリスは烈しく勃起した

今ならわかる


「おとなしいいきもので えらいですね。」


ここんとこ 畳の南京虫を相手に

ショーツいちまいで妄想ばかりしてるから

台所の窓からとびこんでくる

つめたい人魚の解体にもあきちゃった

うつむくわけにはいかんよ

刃先をみなくちゃ 手もとがあぶないからね


人魚より ほんとにきりきざみたいのは

手もとさ それも手首から

指のつけ根にかけてさ

ものをもてない腕についてかんがえる

内腔としてうがたれた坑についても

唐傘みたいな橈骨で突き刺すと

マグリットは火がついたように勃起した

畳にちらばる肉粒をさしおいて


晩秋の麦だって

ほんとは焼いてしまいたいのだ

豊穣なる実りには吐き気がする

ひび割れた大地へ垂直に

楔のようにうちこまれたいものさ

もちろん 麦を焼きしめた咎で!


おお死刑執行人よ 陽がくれると

籾殻の腐臭が咲きつめて

首と手首に枷をはめこまれた裸を

国じゅうの農夫がにらんでやがる

その厚い革手袋の肌ざわりで想像できるか?


あんたは役人なんだから

うつむかなくては

なんども言ったろ?


刃先をみなくちゃ 手もとがあぶないのだ

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