遮断機について

遮断機の中からソトをながめていた

数知れない

わたのようなタマシイを引き連れて


遮断機のソトはマチ並み

清潔な陽の光に燻されて

間主観的に乾燥してひび割れた

人のぬくもりが明るく無神経な

かぶとのマチ


遮断機の中に人は棲まない

わけあって

わけ知り顔のタマシイがそこらじゅうに


もしも

C線発車メロディーの音源を手に入れたなら

眼も口も閉ざし

聴いてみなよ


数知れない開かずの遮断機を想う


数知れない全体性どもが

半透明なセル紙みたいに重ねあわされている

だれがそれを?


ふるさと以外のことなど知らないおれは

重なりあいにまどう


たとえば

A川の河川敷の地上げされた

セイタカアワダチソウの原っぱに吹きわたる

夕暮れの葡萄色の風からは

べつの全体性のにおいがする

いにしえの詠み人によれば待ち人と

塩を焦がれる時刻


O駅

駅前通りの廃墟群でも見たことがある

誰もいない商店は看板以外の

すべてが腐った樹幹の色

曇天を傾ける颶風

待ち焦がれる人でないものの影さえ

吹き飛ばすほどの大いなる颶風


数知れない重なりあい?

タマシイをめぐる話だろうか


タマシイのことなど知らない

あだなされるのがいやだから

祈祷師にまかせるべきだと人は言う

たとえばかつて

叔母の葬式を執り行ったような

専門的かつ高度な知識を有する者どもに

一任すべきと


何を求められているのかわからない

だからそれを無視する

以外にすべきことはない

と専門的かつ高度な知識を有する者は言う

なるほどたしかに

人を害する以上に

タマシイを害するのは気が引ける

超常的に害し返されるのは

ごめんこうむるというわけだ

人が人を害するのを尻目に


でも

思い出す

想い出す


タマシイについて


このクニでは四半時間のうちに

ヒトひとりが遮断機の中へ消える

専門的かつ高度な知識を有する者どもいわく

「アアなんたる不敬

 ヂゴク往きぞなむやかこそ」

莫迦野郎

おれたちには消える権能さえ無いんか?

てめえらは疾く

遮断機を天国へみちびきやがれ

昇天させやがれよ

このやろう


数知れない開かずの遮断機は

丑三つ時の雨もよう

外からナカを覗いて

数知れない

得体の知れないものなど見たくない

横目に傘で過ぎゆけど

頭ん中じゃ

外とナカを分かつ警棒に

指をはべらせ


逆上がりでもしようか

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