エボリューション・アイランズ!  (完)

作者さま:氷月あや

キーワード:五島列島 人間ドラマ 観光 青春 電気自動車 ミニ四駆


あらすじ

舞台は長崎県の五島列島。小学5年生の少年「レン」は、実家の民宿を手伝っている。そんなある日、都会から不思議な青年がやってきた。どうやら少し訳ありのようで……? 方言たっぷりで進行する、五島列島の観光物語と人々の出会い。


感想

作者さまのすばらしい地元愛が強烈に伝わってくる! キャラの会話が方言なのがとっても魅力的。


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「水がキレイかけん、久賀の米はおいしかと。久賀にじいちゃん家(がい)がある友達が、夏休みに稲刈りするって言いよったよ」


「なるほど。学校のそばを通ったとき、子どもたちから勢いよくあいさつされた。広くてプールもある立派な学校なのに、小学校と中学校がワンセットになってる。しかも、子どもの数は、両手の指で数えられる程度なんだってな」

「うん。久(ひさ)小(しょう)は、めちゃくちゃ少なかと。五島市の音楽会とか陸上大会とか、全員がすごく目立たんばいかんけん、大変そうやった」


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方言! いいですねぇ。標準語の小説ばっかりなので、これだけで超新鮮! すばらしい個性です。読んでいて楽しい!

都会からやってきたキャラたちは標準語を放すので、だいたい標準語と方言が50:50ぐらいの比率。方言ばっかりで読みにくい、って問題もない見事なバランス。



そして、会話以外でも読んでいるだけで五島列島の空気が感じられる、見事な描写。

食事シーンは毎回おいしそう!


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ヒラスの切り身は、かすかに紅色がかって透すき通っている。やや時期から外れるものの、脂あぶらが乗って、ツヤツヤだ。七十センチメートルほどの、天然のヒラスだった。


 五島列島の魚は、素そ朴ぼくなあっさり味だ。身が引きしまっている。真っ赤なマグロや冬場のブリのようなネットリとした濃のう厚こうさはない。


 テレビのグルメ番組で「魚は、低温保存でうまみを熟成させた刺身がいちばんおいしい」と言っていたが、五島列島では、そんな殿さまみたいな食べ方をしない。水揚げしたその場で〆しめて、すぐに食べる。


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お腹が減ります……食べてみたいですなぁ。


「自然」「田舎」といった視点だけじゃなく、「電気自動車」「新技術」などもテーマにしていて故郷への現実的かつ未来志向の想いが胸を打ちます。

タイトルからして「エボリューション・アイランズ!」=「進化する列島」ですもんね。

古き良き日本の伝統が残る観光地、という都会人の妄想ではない。むしろ自然と調和しつつも世界最先端の技術を取り込んで発展していって欲しい、という切実な希望。どうにか人口が維持されて欲しいし生活は便利になって欲しい。地元民だからこその気持ちでしょう。

印象に残るセリフがありまして


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ユーチューブやったら、五島も東京も同じごと見られるけん


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そうなんですよねぇ。田舎だからこそITなどの新技術の恩恵は多いのかもしれない。地方にこそ新時代が必要、リアルな視点です。

ミニ四駆の深い描写、主人公がヒロインに寄せる淡い恋心のドキドキ、都会からやってきた青年の再生……人間ドラマとしても上質。

しかし、文章量と比べると物語の進行は遅め。観光シーンの描写が長く「主人公は五島列島そのもの」という雰囲気ですね。

地元愛がつまった、実に読後感が良い1作。


状態:完結 

文字数:166,801文字


個人的高評価ポイント

◇ アイディアが良い!


作品URL

カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054885662544

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