95 銀の華 長月そら葉様

 D.C. ダ・カーポとかいう79点くらいのラブコメアニメ、ほんと好き。


 もとは成人用性的描写含有文章型電子遊戯機器媒体だけど(めんどくせえ)


 枯れない桜が一年中咲き誇る初音島で描かれる、ちょっとした奇跡と魔法のハートフル(異議あり)ラブコメだ。


 ダ・カーポにありがちな後半のドロドロ展開が癖になる。


 そうか、人はこうして性癖が歪むのか(納得)


 久しぶりに見るとやっぱり絵柄は古いけど……というかキャラクター設定もやっぱり古き良き? 古臭さのテンプレ。


 まあでも、やっぱり初めは新鮮だったんだよなーと思う。


 今となってはそこまで新鮮味を感じない物語も、初めてみた時はとても新鮮だったのだ。


 僕があまり面白いと思わなかった物語も、見るタイミングが違ったら、全く別の感想を抱くんだろうなあ。


 19話で義理の妹の音夢が、後ろから主人公に抱き着くシーンの表情を、未だに覚えている。というか久しぶりに見た(じゃあ覚えていて当然じゃねぇか)


 義理とはいえ兄妹で恋愛をすることを咎められて、自らの罪悪感に胸を痛めている。


 長い間思いを秘めていたことで、止められなくなった愛情、切なさ。


 安心感も不安も両方感じているだろうし、その中には今までの寂しさと結ばれた嬉しさも混濁している。


 なんていうかね、嬉しそうでも悲しそうでもなくて、一番切なさが強そうな表情をしていた。


 満面の笑みよりも、悲しみにくれる表情よりも、一番この時の表情が印象に残っている。


 単純明快なわかりやすさもとてもいいけれど、一言では言い難い複雑さも、なかなかにいいものだと思う。






 銀の華 長月そら葉様


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896272424


 三咲晶穂は天涯孤独の大学一年生だ。


 親の顔も名前も知らない。施設育ちであるにも関わらず、逆境に負けず優しく育っていった。


 突然、謎の人物に襲われた時、助けてくれたのは大学の先輩。


 クールな先輩、氷山リン。


 誘われるままに、日本とは違った異世界、ソディールに入り込む。


 そこは、人間だけでなく、獣人と呼ばれる人以外の種族も跋扈している世界だった。


 現代と日本の両方を舞台に繰り広げられる、運命が絡み合う物語。






 長編の後に長編を読むという。なんで今回は自分をこんなに追い詰めているのかよくわからない←Mなの?←違うわ


 人間と他種族が共存している世界であれば、定番とも言える異種族間抗争。


 とはいえ、抗争というには、作者様の優しさが世界観に出ているところはいいと思う。


『銀の華』という一団に所属することになった晶穂は、その目的を知る。


 狩人と呼ばれる、「人間至上主義」と考えられる集団は、人間以外の種族を根絶やしにしようと企んでいる。


 人間こそが至高であり、他の種族などいらないといった思想を見ると、人類の歴史について思い出すなあ。


 前にどっかで書いたなあ。サピエンス全史ではホモ・サピエンス以外にもヒト族は一杯いたけれど、一説ではホモ・サピエンス以外の種族を全部滅ぼしてしまった。


 だから、ヒト族は今のホモ・サピエンス以外はいない。


 歴史の中で最も他種族を滅ぼしたのは、おそらくホモ・サピエンスであるという。だから、至上最も危険な種と言われている。


 もちろんただ単に獣人たちを滅ぼそうといった、人間至上主義による犯行というわけではなく、個人個人には当然理由がある。


 人間に仲間を殺されたから恨みを抱く者がいるように、その逆もある。


 お互いにはお互いの言い分がある、といったところは、戦いもテーマに入れた物語ではもはや宿命といってもいいのかもしれない。


 じゃあどういった点がこの物語上で優れているのかというと、残酷さも時たま見え隠れする世界で、細かな優しさをちりばめているところだと思う。


 守られているだけじゃ嫌だという晶穂は、とある人物に護身術を習う。そのために練習する武器は薙刀だったかな。


 これだけだとただ単に事実。しかし、なぜ薙刀だったのかについては、理由の考察がなされる。


 他に薙刀の武器を使うキャラクターは、今のところいない。晶穂だけだという。


 剣や弓や槍や魔法だって良かったと思う中、薙刀を教えられた理由。


 誰か他に比較対象がいないからだ。


 剣の使い方を教わったのであれば、おそらく晶穂はリンと剣の腕を比べてしまう。リンの凄まじい剣筋を見るたびに、おそらく劣等感に苛まれる。何もできない自分を、直視させられることになる。


 そうした自信喪失に陥らないための配慮として、他の誰も使っていない武器をあえて教えたということ、らしい。


 他にも、倒された側の敵にも、当然大切に思う人物がいる。


 その人物を助けられるのは晶穂だけだ。


 でも、攫われたりひどい目にあわされたりと、散々な体験に巻き込まれた。


 まあ物語的には、最終的には助けるといった選択をした方が、後味もいいしそうする展開が多いと思う。


 けれど、大体は葛藤といった過程を経るはずだ。


 葛藤を抱いていた中で、例えば仲間に説得されたり、過去の自分に施されたやさしさなんかを思い出して、助けることを選択するといった流れが多い。


 けれど、晶穂は葛藤を全くせずに間髪入れずに助ける。


 ある意味では現実味のない行動ではあるが、きっとこれは優しさの表現なんだろうと思う。


 バトル物であれば死亡者が出ることで盛り上がるので、大いに活用される方も多いと思う。ワンピースのエースも、救出がなされようとした中で悲劇となったから印象に残る。


 けれど、作者様はそれをやらない。


 死ぬことではなく、生きることで償いを行う。テーマを伝える。死は一貫の終わりだから、どんな形であれ生きていて欲しいといった願いが伝わる、とても前向きな異世界ファンタジーだと思う。






 他にはそうだなあ、もう3年前くらいになるかな、日帰りファンタジーコンテストというものがカクヨムであった。字数二万字制限で。


 要は異世界に行きっぱなしじゃなくて、現代と異世界の両方を大切に思い、行き来するタイプのファンタジーのジャンルを創設しようと、カクヨムが目論んだものだと思う。


 それから約3年。


 日帰りファンタジー……流行ってますか?←その件には触れるな。


 カクヨムの黒歴史(黒歴史とか言うな)とも言えるジャンルなんですが、←そこにお前も参加していたことを忘れるな


 ジャンル的にはそれが近いと思う。


 そこでのいい工夫として、現代で大学生をやっているリンも、ソディールでは『銀の華』の団長だ。


 そういった二面性があるということも面白いけれど、一番感心したのは、倒された側にとっての現代の使い方だった。


 詳細はネタバレしないために省くけど、ソディールで生きていた人たちにとって、現代の世界と繋がっていることが、案外救いとなっている。


 なんというか、許されざるカップルが故郷を離れ、誰も知っている人がいない土地でしがらみもなく愛を育む、みたいな(たとえ)


 また、現代日本に旅行に行ったりと、けっこう気楽に現代ライフを楽しんでいる描写も見られる。


 あとは食事の描写もけっこう多くみられる。


 食は生き物にとって欠かせないものだからという理由もあるのかもしれない。


 ただ、食事に拘る理由の一つは、きっと日常にある風景の大切さを描きたいのだと思われる。


 団欒をしているシーンはそれだけで心温まるし、ドラマチックな出来事の中に日常が描かれることで、コントラストは増すんだろう。


 旅行シーンも、海に行くシーンも、ほのぼのする日常も織り交ぜる。


 ただ目的のために戦うことだけでなく、そういった生活に根差したものをしのばせることによって、キャラクターや世界観だけでなく人生を全体を描いていきたいんだと思えた。






 冒頭で79点のラブコメ云々と言っていたのには、一応の理由はある。


 この物語にネット小説というカテゴリで自分なりの点数をつけるなら、83点くらいだと思った。とても優等生な物語だと思う。


 ちなみに考え方は加点方式。文章力とかキャラの魅力とか世界観の面白さとかオリジナリティとか、自分でも何が基準だかよくわからないものも一杯あるので、正直感覚の問題なんだけど。


 満点は一応、100点くらいかな。採点基準みたいなものを全部足すと、多分200点くらいになる(計算がおかしい


 ちゃうねん。理由はあります。STAP細胞と同じくらい←じゃあないじゃん


 もしすべてを網羅した200点満点の小説があったら、もう他の小説を二度と読まなくなると思う。それだけで十分だから。


 完璧な物なんてないのだから。


 それはともかくとして、文章は上手だと思うし、さりげない伏線も結構張られていて、物語としての完成度は結構高いと思う。


 キャラクター自身の過去や思いも語られているし、設定づけもされている。


 だからこそ一番惜しいと思った点については、キャラクターの魅力についてだと個人的に思った。


 特に晶穂と並んでもう一人の主人公のリンについて。


 クールでかっこいい先輩だが、恋愛経験もなくて、一度晶穂に好感を抱いても、それをごまかしたり気づかなかったりする鈍感なところがある。


 クールな普段の様子とは違い、仲間のことや晶穂のこととなると情熱的で男らしい面も見せる。恋愛には奥手でなかなか思いを伝えられなかったが、いざという時には大胆に近づく面も見せる。


 晶穂に関しても、優しくて少し天然なところもあり、恋心になかなか気づかない。


 相手のことを一生懸命に思い、無謀だとしても戦いの場についていく。心配で不安で、安堵で、たまに泣いてしまう優しい泣き虫。


 奥手で天然で鈍感で、そして誰よりも優しい二人の恋模様は、思った通りにゆっくりと進行する。


 そのゆっくりさは、二人にとっては必要な時間。それがいけないことじゃない。


 ただそこにないものが、意外性だと思った。


 二人の性格傾向から進むであろう恋模様が、あまりにも想像通りすぎた。


 このキャラクターならこうするといった順当性と、こんな一面もあるのかといった意外性の両立がマッチした時、そこには混乱や幅が生まれる。


 物語に関しては欲張りな僕は、そんな非常に高いレベルの人間臭さが見たい。


 その人に対するイメージの中に、マッチしないようなところが、ある意味その人の万人から離れた個性というところだと思う。


 意外性という言葉も、僕の言いたい気持ちを適切に表していないのがもどかしい。


 哲学の本とかで良く使われる蓋然性という言葉。


 はっきりとした根拠はないが、おそらくそれは正しいといったように思われることを現す言葉。


 晶穂とリンのキャラクターは蓋然的だったのだが、読み進めていくとそれは確実性に変わった。


 そうなるだろうなあと思っていたことがそうなった。


 例えば恋愛ものでテーマ的に結ばれるものだったら結ばれる。けれど、その過程にある紆余曲折を楽しみたい。


 そのキャラクターの中にあるテンプレとしてありえそうなことと、わずかにズレた微妙な隙間。


 僕はそれが見たいのだと思った。






 現代と異世界が繋がっているが故の使い方のうまさ。


 作者様の世界観が投影されている優しい世界。


 血なまぐささと日常が続く物語。


 血に汚れた手もいつかは乾いて落ちるように、辛いことばかりではなく、そこかしらに良いことが転がっているんだというような、辛くも温かいファンタジー。


 銀の華が広げた香しさが、より遠くまで届けばいいと思う。







 約707万2千





 近況ノートにでも書けばいいのだが、わざわざ別のとこに書き直すのも面倒なのでここに書く。


 今のこのエッセイのやり方だと、文頭と文末になんらかのネタを仕込まなくてはいけない。


 毎回本編と関係あることないこと書くのも結構大変なのだ。いや辞めればいい話なんだけど。もはや意地だ。


 ジャンルで言うなら、創作の悩みかな。


 カクヨムには読者と作者を両立されている方が多いだろうし、せっかくだから書こう。


 プロットを書くか書かないかは別として、ある程度物語の構想をしてから、書き始める人の方が多分多いと思う。


 キャラクターのプロフィールとか世界観とか、ざっくりとだけか詳細に決めるかも分かれると思う。


 でも、おそらくはなんらかの構想通りに物語を進めていく。そういうもんだと思うのだ。


 今回はマジでプロットも世界観もキャラクターのプロフィールもなんも書いてない。


 高校の名前すら別に決めていないのだから笑えるよね←笑われるのはお前だ。


 だからたまにキャラクターが暴走したり、本来なんとなく考えていたことになかったことが起きて、とても楽しくていいのだ……けど!


 皆様は多分そんなヘマはやらかさないと思うんですけど、今回はけっこう大きなポカをやらかした。


 何かって言いますと












 このタイミングでは絶対に書いちゃいけないエピソードを書いちまった……






 何で書いちゃいけないのかというと、このタイミングで出しちゃうと、今後の進行にとても困る。


 本来ならば物語全体の終盤に出して、クライマックスにもっていく感じでぼんやりと考えていたのだ。


 でも、しょうがないねん。さすがにそろそろ限界だった。


 そろそろコイツら何かしら進展せんかい! としびれを切らしてしまった。


 というか、基本的に飽き性なのだ。同じキャラクターの物語を続けられる作者様は本当にすごいと思う。


 何かしらの関係性が動くところが、どうしても自分で見たくなったのだ。今この瞬間に!


 で、書いたところで満足した。


 それで、困った。


 これ……どうやって収集つけるんだよ……←お前の責任じゃねぇか。
























 とりあえず次の話を読もう(現実逃避)

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