62 異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません 黒月天星様
エッセイのタイトルにお金って言っている割に、あまり金の話をしていない気がする(なんの話?)
別に昔ほどお金がどうこと執着する気持ちはないのだけれど、現代社会では死ぬことですら金がかかる。
大事な話ではあるから、どこかでできないものか(趣旨が変わっている)
あ
あったあ
「生徒会役員共ザ・ムービー」で、主人公の津田が他の生徒会に引き抜かれるという誤解を生んだメンバーが、なんとか情報を得たいと思っていたその時、
たまたま別の学校の生徒会役員が来たから縛り上げて情報を吐かせようとした場面を思い出した。
「我々も手荒なことはしたくない」と言いながらも「本当に何も知らないんですって」と言った森さんに対して、アリア先輩が一言。
「やったあ。これで手荒なことができるぅ~」(無邪気な笑み)
私も読む前はそんな気持ちでした。
「やったあ。これでお金の話ができるぅ~」(下卑た笑み)
異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません 黒月天星様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893608097
死にかけたところを女神に助けられた高校生桜井時久。しかし命の対価として、女神の手駒になって異世界に金を稼ぎに行くことに。
自分の持ち物を金に換えられる『万物換金』の加護と、手提げ金庫型の貯金箱をぶら下げて、丁度行われていた『勇者』召喚に紛れて乗り込もうと画策する女神と時久だが……。
「いきなり牢屋からなんて嫌じゃあぁぁっ!!」
一億貯めるまで帰れない。
そんな金稼ぎ異世界珍道中が始まるよ~♪
という物語かと思いきや、バトルも人間ドラマも、練りこまれた壮大な異世界ファンタジーなのであった。
結論から。
お金の話はできませんでした。
現代のものを売りさばいたりして、お金を画期的なお金の稼ぎ方について学ぶ物語かなーと想像していましたが、意外や意外。王道のバトルファンタジーの風味の方が強かったです。
神々が仕掛けたゲームに参加しているのは、主人公の時久だけでなく、一般人の男女が複数名存在します。
彼ら彼女らは勇者と呼ばれ、神の加護を受けた存在として、国からは大いに重宝され、好待遇を受けます。
で、そんな中時久はある意味最高の待遇。
牢屋スタートです(最……高……?)
この物語では、色々なものを条件付きですが換金のできる、「万物換金」の能力がウリですね。
宝箱自体を換金して中身を取り出したり、1割増しですが換金したものを取り出して使うなど、なかなかに面白い使い方ができます。
しかしどうやら物語の本質はそれだけではないのです。
初めは敵だったローブの魔術師、エプリとはダンジョンを脱出するために共闘しますし、敵の奴隷となっている生まれながらにして奴隷の少女を危険を顧みずに助けようとします。
他の勇者たちとはまだ合流していませんが、それぞれの目的のために修練し、力をつけていきます。
お金を稼ぐだけのサクセスストーリーというよりは、異世界冒険物の要素の方が色濃く出ている。
それは意外性としての機能もありました。
大きな力があるわけではないながら、貨幣を使って爆発させるといった金能力は戦闘に役立ちますし、様々な場面を切り抜ける工夫として使われています。
また、社会の偏見として人種差別や奴隷制度なども色濃く残っており、混血種は特に迫害を受けている様子です。
自身の出生と経験から、その人の生き方が象られていく。
個人の自由よりも境遇や役割で人生が決る世界。現代社会に生きる私たちにとっては、それはきっと耐え難い苦痛でしょう。
生まれながらに奴隷であるということは、奴隷以外の生き方を知らない。
考え方や行動もご主人様次第。
それに関して、何かおかしいと思えるのは、現代の価値観だと思います。
本当は平等なんてないと思いますが、人類は皆平等というスローガンが通用しない世界。
それでも、時久は現代からやってきています。この世界の価値観には完全になじまない。
それは異質であると同時に、縛られた価値観に対する破壊であり、やさしさであるのかもしれません。
いつ死ぬかわからない世界で、自分の命を賭してでも誰かを守ろうとする。
そんなことを普通にできる時久は、いい男なのかもしれません。
期待していたのはなんか面白い金稼ぎ方法でどんどん資産を増やし、時々なんかハメられて一文無しになって、逆転の手を思いついて再び返り咲くみたいなストーリーでした。
そういった意味ではこの予想が外れたことは、悪くはないのですが期待通りではないといったところですね。
お金稼ぎに真剣に取り組むようになるのは、物語の大分後半からです。いやきっと物語全体としてはまだまだ序章のような気はします。
いやしかし、まだまだ物語は続いていくぜって状態なんですが
この時点で68万字ですぜ?(目をこすりながら
牢屋からの脱出→ダンジョン探索→宿敵との対決など流れとしては納得のいくものではあるのですが、一つ一つの展開をとても丁寧になぞるので、展開が恐ろしく長い。
一年以内に稼がなければいけないという制約はあるのですが、まだ一カ月経っていないですからね。
それでも今のところ最後まで読めましたし、ダンジョンの構造理由だったり、魔法の使い方だったりに工夫が認められるので、そこまで苦痛はなく読めました。
ただこの物語にもっとついていく人を増やすことを目的に考えるのであれば、テンポアップとコンパクト化はあってもいいのかなとは思いました。
エネルギーを込めた話には、受け手にも伝わります。
でも人間っておもしろいもので、自分と相手との物語に対する向き合い方が違うので、強すぎるエネルギーを受けて疲れてしまうこともあるでしょう。
だからこそ、文学的に考えるとどうかなと思うような簡素なものでも、受けが良いものはあるのかなあと気づくことができました。
意図や展開などはとても良いと思いますので、あとはバランスがあればもっと気軽に読めるよな気はします。
とはいえ、ぜひとも一憶は稼いでいってもらいたいですね(¥$
約214万2千
次回はおまけです。
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