38話 アグネス・モンタークはぶれない
「姉さん、何やってんの?」
後ろからリーリエの声が聞こえてきましたが今は無視しておきましょう。
優先すべきはマリアの貞操です、セドリック王孫殿下が9歳とはいえ間違いなくあの男の息子である以上、警戒しなければいけません。
二代に渡って受け継がれた絶倫伝説、しかし彼の父親は浮名を流す事なく真面目にしていますが、あんなにも容姿の幼い女性と結婚して2児を授かっています、絶倫伝説は受け継がれていたのです。
それを踏まえて考えるとセドリック王孫殿下は間違いなくその因子が受け継がれている。
マリアを守るのは私の役目、志を同じくする同士と共にこのマリア曰く友達と一緒にお祭り巡りと言う名のデートを清く正しい形で終わらせてみせます。
「いや姉さん、変な事すんなよ?子供二人が遊ぶだけだからな?」
「リーリエは知らないから言えるのです、彼の祖父の絶倫伝説を……」
♦♦♦♦
出だしはマリアの可愛さに見惚れたセドリック王孫殿下がそのまま興奮したマリアに振り回される形でした、マリアは普段は聡明な子なのですが興奮すると暴走してしまいますので、それと良く分からない理由で興奮して暴走しますので、親しい者でも先手を打つのが難しい。
暴走防止の為にアストルフォの背に跨る事を外出の条件にしているので街中で暴走する事は少ないのですが、お店の中では暴走する事があります。
幸い、本人も自覚はあるらしく自制はしているみたいですが、将来が別の意味で心配です。
しかし王孫殿下と連呼しているとマリアの前でうっかり偽名ではなく本名の方で読んでしまいそうです、なので何時もの様にアレックス君と呼ぶ事にしましょう。
おや、どうやら灯台に上るみたいですね。
これはまずい、最近のマリアはベルとアデラが考え無しに稽古をつけるから今では気配を察知するのが上手くなりました、私の推定だと半径約3メイトル圏内なら察知します。
ベルはあの子をどこに導くつもりでしょうか、そしてマリアもそれに対して疑問に思わないのでしょうか。
ふむ、ならば手段は一つだけになります。
「アストルフォ、お願いしますね」
「グエ!」
それなら灯台の一番上の避雷針にアストルフォが隠れれば察知される可能性は減ります。
もしもの時はアストルフォが止めに入りますので問題はありません。
「なあ姉さん、あいつに任せて大丈夫なのか?」
「ええ問題ありません、それにハンドサインも出来ます」
「嘘だろ!?」
おや何を驚くのでしょう、リーリエはもしかしてアストルフォを犬猫の延長と捉えていたのでしょうか、アストルフォは非常に賢い子です、それこそ私が教えたヒポグリフ用のハンドサインを完全に覚えて使いこなす程です。
そしてこういう時の為に買っていた望遠鏡で二人の様子を見てみましょう。
さて二人は……おや、マリアが興奮していますね、あれ消えた?
というよりも後ろから羽交い絞めにされた!?
私は慌ててアストルフォを見るとハンドサインで「問題ない、マリア興奮、アレックス止める」、よかった危うく始末しに行きそうでした。
おや下りて来たみたいですね、マリアは平気そうですがアレックスは疲れているみたいです。
まあ、王都育ちの軟弱児には並み野生児よりも体力のあるマリアに勝てる筈もありません、二人はベンチに座りマリアは飲み物を買いに行ったみたいですね。
おやあの店員達、マリアが可愛いのは分かりますが抱き着いたりしていますね。
人として許されない一線を越えたら制裁を加えましょう。
アレックス君は、何か思い悩んでいますね。
そう言えば父親は優秀ですが人として少し未成熟な所があります、長年の友人が手助けをしていますがそれでも父親としては未熟、きっとそれに由来する悩みなのでしょう。
聞いた話では歳の近い叔父は天才、一つ下の弟は秀才と言われています。
アレックス君の評価は凡庸、優れた所も劣っている所もないという一番傷つく評価を受けています。
マリアが戻りましたね、アレックス君、マリアに振り向いて欲しかったらもっと頑張りなさい、沈んだ顔のままでは異性は振り向いてくれませんよ。
おや、マリアに動きがありますね、何をする気でしょう?
……え、何で抱きしめているんでしょう。
そして頭を撫でたり、これはマリアもその気が……なかったみたいですね。
友達が落ち込んでいるから励ました、と言った所でしょう。
そう言えばマリアは抱き着き癖と抱き締め癖がありましたね、あれは男女関係なく見たいです、これは本当にマリアの将来が心配になります。
「姉さん、そろそろ戻らねーと女将が……」
「ベルは分かってくれます、これは大切な使命なのです」
「いや、でもさあ、すぐに戻って来いって言われるしよぉ……」
「関係ありません、行きますよリーリエ!アストルフォ!」
「……はぁ」
「グエ!」
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