修学旅行4日目 午後8時49分

 

 午後8時49分……



 ホテルの屋上


 悲鳴が上がる街中。それを呆然と見ている幸久に電話が掛かって、恐る恐る電話を取る。


「もしもし……」

「西河だが、お前どこにいる?」

「今ホテルの屋上です……」

「今すぐクラスメイト全員を部屋に戻せ!」

「えっ⁉︎」

 

 担任の西河先生だ。だが先生の声は明らかに焦っている声だ。1階にいる先生達には状況があまり把握出来ない。


「今、小規模な暴動が街で起きてる!先生達との話で生徒達を全員ホテルへ戻す事に決めた!」

「暴動?どうゆう事ですか⁉︎」

「テレビのテロップで出たらしい!詳しい事はわからないが、幸久はクラスメイト全員に連絡してくれ!僕は南先生と外へ行って生徒達に伝えに行ってくる!」

「待って…」


 電話を切られた。明らかに何が起きてるに違いない、幸久はそう確信した。するとホテル内で放送が掛かった。


 ーーエターナルホテルにお越しのお客様に、緊急連絡をお伝えします。ただ今鹿児島中央駅にて、小規模な暴動が発生してる模様です。お客様は安全の確保の為、一時部屋にお戻りください。ホテル員が巡回しますので安全が確認出来た後に、再びご連絡いたしますーー



「幸久……一体どうゆうこと……」


 幸久は必死の形相で由美と真沙美に話す。


「2人共!今すぐ連絡出来る外出中の生徒達に連絡しろ!早く!!」

「分かった!」


 幸久はすぐさま雅宗へと電話した。



 ーーーーーーーーーーーー


 雅宗と由弘は未だに高見橋たかみばし付近の路地裏で待機している。


「さっきから人が悲鳴があちこちから聞こえる……」

「一体何が起きてるんだ……」


 するとポケットがブルブル震えている。スマホに幸久から電話と書いてある。


「どうした幸久!」

「今どこだ!雅宗!」

「繁華街の路地裏だけど。由弘も一緒だ」

「早くホテルへ戻って来い!駅前で小規模な暴動が起きてるらしい!巻き込まれる前にホテルへ戻って来い!」


 慌てている幸久に対し、少し落ち着いている雅宗。


「さっき俺、変な奴に追われたんだよ!」

「は?」

「口から血吐いて、白目むいてたぞ。そしてそいつが駅員に噛みついて……」

「……」

「って聞いてるか⁉幸久!︎」


 話を聞いて、呆然とする幸久。


「おい!幸久!」


 幸久は正気を戻し、雅宗に怒鳴り込む。


「おい!!今すぐ逃げろ!!急げ!!途中でもし、生徒を見つけたらそいつらも一緒にホテルに戻せ!!」

「わ、分かった」


 電話はそこで切れた。


「駅前で暴動が起きてるから急いでホテルへ逃げろって言ってるぞ。幸久が」

「やはりさっきの奴が関係しているのか」

「だろうな。それと途中で生徒を見つけたら一緒に戻れだとよ」

「なら手分けして行くか!」

「おう!」

「俺はこの辺を、由弘はホテル付近を」

「あぁ…」

「奴らがまた来たらこいつでぶっ飛ばしてやる!」


 雅宗はお土産で買った、木刀を自信満々に見せつけてきた。そんな雅宗を由弘は冷静に言う。


「分かった……だが無理はするな。危ないと思ったら戻って来い」

「……あぁ、分かったるさ」


 2人は手分けして周りの生徒を探す事にし、路地裏から出ようとするとパトカーのサイレンや救急車のサイレンがそこら中から響き渡る。そして駅から異様な光景が目に焼き付いた。逃げ惑う人々や、人が人を襲っている姿が見える。


「何だよ……こいつら」

「本当に暴徒なのか……」


 唖然とする2人。駅からそう遠くない繁華街、そこは1つの地獄絵図と化している。


「緊急事態です!ただいま鹿児島中央駅付近で小規模な暴動が起こっております。付近の住民の皆様は、直ちに自宅へ戻り、安全の確保をして下さい。繰り返します……」


 街中のスピーカーから聞こえてくる慌てふためく声はこの緊急事態を物語っており、住民の恐怖を煽る。


「急いで行くぞ!」

「本当に奴らに出会って、危険だと思ったら帰れよ……」

「もちろんだ!この木刀でぶっ飛ばしてやる!」


 奴ら……俺たちはあの危険な人間?の事を奴らと呼ぶ事にした。

  雅宗はこの付近の生徒を探しに駅前に、由弘は雅宗を見送りホテル方面へと走って行った。



 ーーーーーーーーーーーー


 その頃、鹿児島中央駅の出入り口は柵で封鎖され、乗り降りしていた客で溢れかえっている。


「何が起きてるんだよ!」

「早く帰らせて!!」


 駅員は必死に乗客が用意した柵から出ないように抑えるので精一杯だ。


「落ち着いて下さい!今出ては危険です!」


 乗客などの怒りは爆発し、無理やり柵を乗り越えて行こうとする人が出るほど、みんな焦っている。駅員が柵の最前列で説明すると、その後ろから服や顔が血まみれの顔が青白くなっている警備員数名と時忠高の女子生徒が走って迫ってくる。もちろん出入り口はパニックを起こし、人が人を押し駅内へと戻って行く。


「み、皆さん!落ち着い……ぐわっ!!」

 

  最前列にいた駅員や、前の方にいた数人が奴らに噛まれた。藻搔いたり抵抗したりするが次第に力を失い、動きが停止した。血が流れ、大勢の悲鳴が上がり、全体がパニックを起こした。転んだ人や腰を抜かした人がいるが、誰も助けようとはせず、真っ先に自分を守ることに専念に我先と逃げていく。その人達を踏み潰しても、誰も気に掛けてはくれない。

 そして噛まれた駅員もゆっくりと立ち上がり、駅内をうろつき始めた。



 ーーーーーーーーーーーー


 駅からの悲鳴は駅外にも聞こえ、動揺する雅宗。更に近くのコンビニから悲鳴が聞こえて来た。混乱する雅宗に追い打ちをかけるように駅方面から4・5体の奴らが雅宗目掛けて、走ってくる。


「これでぶっ飛ばす!」


 木刀を構える雅宗。だが口から血を垂れ流し、うめき声をあげる奴らに雅宗は恐怖し顔面が真っ青になる。そして何より自分と同じ人間であり、人を殴った事のない雅宗。人を攻撃するはダメと諦めて、後ろを方向を変え逃げように走り出す。


「やっぱ無理だ!」


 逃げる、そう決めた雅宗は全速力で逃げようとしたが、反対側からも挟み撃ちのように多数の奴らが走って来ていた。


「う、嘘だろ……」


 完全に囲まれた雅宗はビルの1階にあるコンビニの中へと慌てて逃げる。

 そこには顔が食われている血まみれのコンビニ店員とその肉を貪り続ける奴らと化した時忠高の生徒1人とサラリーマン奴がいた。


「う、うわぁぁぁ!!!」


 異様な光景に身体全体が震える雅宗は思わず悲鳴をあげてしまった。入り口には奴らが迫っており、今出ると襲われる可能性がある。そしてコンビニ内の奴らと化した生徒がこちらに気づいた。雅宗はトイレへと逃げるように隠れた。

 トイレは暗く電気がついていなきが、人の気配を感じた。そこに同じ時忠高の男子生徒が涙目で震えていた。何かに怯えてるように。雅宗は一息つけると、その生徒に話しかけた。


「お前は誰だ」

「俺は、松岡里彦。D組の生徒……」

「俺は須藤雅宗B組だ。この状態を教えてくれ!」


 混乱している雅宗が力強く話しかけると、里彦は頭を抱え、声を震わせながら語った。


「と、友達とコンビニでお菓子買っていた。その時俺はトイレにいた。そして外から悲鳴が聞こえきてトイレを出たら急に血塗れの男が友達を噛みつきていた……あいつは完全に……俺は怖くなってトイレにずっと隠れてたんだよ」


 コンビニに入った時にいた、奴らと化した生徒がその友達だろう。その子はずっとコンビニを彷徨っている。今度は里彦が雅宗に問いかける。


「な、何でこんな事になってんだよ」

「俺だって……聞きてぇよ」


 2人は状況が分からず、コンビニのトイレに篭ってしまった。コンビニ内は奴らが増えて5・6体の奴らが2人がいるのを知っているかのように集まってきた。


 この時、午後9時2分……

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