おまけ話③-1:家族旅行~ノエルの探検編①~
「…ひま…」
ベッドで手足を伸ばし、だらーんと仰向けに寝ていたノエルは、天井を見ながらぽつっとつぶやいた。
「母上、父上、まだお話終わんないのかなぁ」
ノエルは今、リトミナ王家の別荘の内の1つ―元々リートン家屋敷だったが、今はラウルが国王となり王城で暮らしているために、別荘となった屋敷―の、客間に一人いた。
今回の旅行では、セシル達はその道中、この屋敷で3日ほど泊まることになっていた。
「ひまぁ…、ひま…」
ノエルは、うぅと小さく唸りながらつぶやく。
セシルとレスターはと言うと、今は別室でラウルと、昔の思い出話等々―ノエルにとっては生まれる前の話で、ついていけない話―に花を咲かせていた。だから、ノエルは、つまらないからと、客間に一人で戻ってきていたのだ。
…だが、この部屋に戻ったところで、何もすることは無く、今度は暇なために、つまらないという事態に陥っていた。
「つまんない、つまんな~い、つまんなぁあい」
ノエルは、ごろごろごろと、ベッドの上を転げまわった。だけど、誰もかまってくれる人は、居ない訳で。
「…ぎゃっ」
そうこうしている間に、勢い余ってノエルはベッドから転がり落ちてしまった。
「いだいぃ…」
ノエルは頭を抱え、「うぇーん」と小さく泣いた。だけど、泣いたところで、よしよしと頭を撫でてくれる母上は、ここにはいない。
「……」
そして、辺りに誰もいない静けさで冷静になってくると、ノエルは大して頭が痛くない事に気づく。ノエルはなんだか、馬鹿馬鹿しくなって泣くのを止めた。
ノエルは今度は冷静に、今、現在、この暇をどうすればいいのかと、頭をめぐらせ始める。
「…暇なら、一人でできる事で遊べばいいんだよね。だけど、何して遊んだらいいんだろ…。模型は父上に手伝ってもらわないとできないし、母上は家に帰るまでダメって言ってたし。おもちゃは、長旅には重いから持ってきてないし…う~ん…あっ!」
ノエルは、急に浮かんだいい考えに、ぱっと顔を上げた。
「そうだ!このお屋敷を探検してみよう!」
ここは、昔、母上が住んでいた家だと聞いている。どんなところに住んでいたのか、ノエルは興味があった。それにまだ、今日来たばかりで、客間へ通されるまでの所しか知らない。
お忍びだという事で、信頼できる人間以外の者は、屋敷から一切排除してあると聞いている。だから、数名しかいないその者たちに見つからないようにしさえすれば、勝手に屋敷内を探検したところで、怒られないはずだ。
「そうと決まれば、さっそく~」
ノエルは、るんるんと部屋のドアを開けた。きょろきょろと首だけを出して、廊下に誰もいないことを確認する。
「よしっ、誰もいない!と言う訳で、レッツゴー!」
そして、ノエルは、とてとてと廊下を駆けだしたのだった。
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