21-④:これで終わり?

―これで終わるのか?

 薄れゆく意識の中で、王妃は思う。


 望まずとして、化け物として産まれ

 故郷の者達には虐げられ

 守った者達にはあざ笑われ、陥れられ

 愛した者には裏切られ

 それでもやっと手にした幸せは、あっけない破綻を迎え


 こんな碌でもない腐った世界なんか、目茶苦茶にしてやる。そして、そこにのうのうと住んでいる人間達に、自身と同じありったけの絶望を味わわせる。

 そうして、最後には、何もかも消してしまうつもりだったのに。


―なのに、これで終わり…?


 自身の悲願は、宿願は、何も成し遂げられず、こんなにもあっさりと終わってしまうのか?

 そう思うと、王妃の心の中に、熱くドロドロと煮えたぎるものが渦巻き始める。


―ふざけるな

 王妃は、わき上がるおどろおどろしい感情に、身を任せるがままに叫ぶ。

 自身の願いは、こんなにもあっさりと終わるものではない。そうであったとしたら、自身の今までの不幸は、怒りは、悲しみは、苦痛は、それほどまでに取るに足りない、価値のないものだったという事になる。


―そんなことがあってたまるか!!こんなことで終わってたまるかああああ!!

 王妃は叫ぶ、あらん限りの怨嗟の感情を乗せて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る