17-⑬:お前は、オレだ

 夢を見た。夢だと思う。



『お前は誰?』

 美しい透き通った水の中、水面を見上げていたテスに誰かが話しかけた。テスは振り返る。


「……」

 すると、すぐ後ろに小さな子供がいた。5.6歳ぐらいの姿をした、セシルだった。しかし、その奇妙な姿に、テスは目をしばたたかせた。


 セシルが水底の白い砂から、生えていた。足はなく、下半身は盛り上がった白い砂と同化している。



『お前は誰?』

「……」

 セシルは、どこかぼうっとした虚ろな目でテスを見上げていた。


「俺は、テス・クリスタ」

『お前は誰?』

 テスは答えたが、セシルは何も聞こえていないかのような様子で、幾度も同じ言葉を繰り返している。


「セシル、お前、俺の声は聞こえているのか?」

『お前は誰?』

「……」


 どうやら聞こえていないらしい。テスは仕方ないと息をつくと、その小さな肩に手を置いた。その瞬間、はっとセシルの目に光が宿る。そして、言った。



『お前は、オレだ』



 その時、テスは誰かに肩を叩かれて、ぐっとどこかへと引き戻された。

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