第189話 しあわせ(2)

「え~~。」


神父は


ざわつくその場をまとめるように


「お二人はこれで正式なご夫婦です。 末永くお幸せに、」


と笑顔で締めた。



「八神・・舌入れてたよ、ぜったい、」


南は大声で笑いたいのを堪えて、志藤の腕をつついた。


「・・やめろ・・おれも笑ってまうやんか、」


志藤もジッと耐えた。




そして


式を終えた二人をみんながフラワーシャワーで迎える。


「おめでとー!」


たくさんの家族や友人に囲まれて二人は幸せそうに見詰め合って笑った。


「慎吾! お姫様抱っこ! 写真撮るから、」


友人に言われて、


「え? できっかなあ・・重いし、」


と言って、


「ちょっと! シツレイな、」


美咲は彼の頬を抓った。


「わかった、わかった、」


と八神は美咲を抱き上げた。


「わっ・・なんか、こわいってば!」


美咲は八神の首にしがみつく。



みんなに冷やかされながらも


八神はもう


幸せでとろけそうだった。



彼女を下ろして、


「重かった~、」


と言ったので、みんな爆笑した。


「も~、この日のために3kgもダイエットしたんだよっ!」


美咲は猛然と抗議をし、また笑わせた。



「八神~、美咲ちゃん、おめでと!」


南が手を振った。


「あ、・・ほんっと、ご心配かけて。 遠いトコありがとうございます、」


八神は頭を下げた。


「笑わしてもらった。 ほんま、来てよかった~、」


志藤はオーバーに八神の両肩に手を置く。


「おれ、ほんっと・・何していいかわかんなくって。 段取りとか全然わかんなかったし、」


「忙しいとか言って1回も来なかったからだよ、」


美咲は口を尖らせた。


「そうそう。 誓いのキスで舌入れたらアカンて、」


南が笑うと、


「え~? だってキスでしょ? 普通入れるでしょ、」


八神が大真面目に言ったので、


「ほんっと、ズレてるよね・・。 もう、すんごい恥ずかしかった、」


美咲は呆れて言った。


「だったら、最初っから、誓いのキスは舌を入れないで下さいって言ってくれりゃ、よかったんだ。」


逆ギレする八神に、


「言わねーよ、んなこと。」


志藤はまたウケてしまった。




その後のパーティーは


広々とした芝生の庭も開放した明るい雰囲気だった。


地元の友人は二人の共通なので、本当に盛り上がって楽しく過ぎていく。


「それでは、新郎の上司であります、ホクトエンターテイメントクラシック事業本部、本部長志藤幸太郎さま。 ご祝辞をお願いします。」


司会から呼ばれて、志藤は立ち上がり、前に行く。



「え~。 こんな開放的で自由なパーティーなので、堅苦しい挨拶はなしで、いつもどおりにやらせていただきます。」


志藤は笑顔で前置きをした。


「八神、美咲ちゃん。 本当におめでとう。 彼女が東京に出てきてから・・もうすぐ4年くらいになりますが。それからずっと二人を見守って参りましたが。 今日、めでたくこの日を迎えられ、本当に嬉しく思っています。八神とは彼が北都フィルに入ったときからの付き合いです。 彼が、23~4くらいのときから知っていますけれども、ホントに素直で天真爛漫で。 よく言えば、天然の癒し系。 悪く言えば、ちょっとアホ・・」


そう言ってみんなの爆笑を誘った。


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