第142話 自然体(2)

「な~~。 もっといろいろ教えてくれよ~。 おれ、ほんっとこういうことよくわかんないし。」


翌日、八神は昼休みに高宮のデスクまで行って甘えるように言った。


「って、結局、頭金はどうなったんですか?」


「・・わかんねえ、」


「なんスか、それ・・」


高宮は呆れた。



「頭金50万くらいでなんとか中古でも良さそうなトコ買いたいんだよ。 ウラの住宅ローンとか知らない?」


大真面目に言う彼がおかしくてわらってしまった。


「ウラって・・」


「ないの?」


「とにかく。 少しでも多く頭金を納めることが先決です。 どうしても無理なら、家計を一生懸命やりくりして。 ローンを頑張って払い続けるしかないじゃないですか。」


「冷たいなあ、」


「人んちの家計まで面倒見れませんから・・」


高宮はパソコンに向かって英文の文章をカタカタと打ち込んでいた。


「おまえって、ほんっと頭いいんだな、」


八神はそんな高宮にボソっと言う。


「はあ?」


「いろんなこと、知ってるよな・・」


「そうですかあ?」


いきなりそんなことを言われると気味が悪い。


「よく加瀬とつきあってられるよな、」


そこにはカチンときて、


「あなたには言われたくないですよ、」


いろんないきさつを思い出す。


「なんかあの一件(あいつのオッパイ触っちゃったとかそーゆーいきさつ)以来、誤解してるかもしれないけど。 おれ、別にやましいことないし。」


「は?」


「別に加瀬のことはまあ、妹みたいな感じで。 あいつとどうこうしたいとか? やっぱ考えられないし。」


「どうこうって・・」


「ウン。 どうしてもあいつとやっちゃうとか考えられないから。」



さらっと


すごいことを言う八神に高宮のほうが赤面してしまい、


「な、なに言ってんですか!」


「想像つかねえなあって。 やっぱ、それって女として意識してないってことだよな、」


「し、失礼じゃないですかっ!」


高宮は一人で赤面して逆上してしまった。



そんな彼がおかしくて、


「あ、そっか。おまえやっちゃってんだもんな、アハハ、」


八神は笑ってしまった。



「そっ・・そういうデリカシーがないことを言うのが嫌なんですっ!!」


高宮は怒って仕事に戻ってしまった。


ほんっとに


この人は


思ったこともスグに口にするし!


下ネタでも・・



でも、そういうところが


彼女と似てる。


高宮は八神を見てそんな風に思ってしまった。


「んじゃ、また相談に来るね。」


八神は笑顔で席を立つ。



もう来なくてもいいよっ!


苦々しく彼を見た。


しかし


「ああ、もし、親に出してもらうんだとすると。 金額にもよりけりですが、贈与税がかかってきますから、気をつけて。」


と助言してしまった。


「はっ?? なに? 贈与税って!」


八神はまた現実に引き戻された。


「だから・・たとえ親子間であっても。 マンションを購入するのは八神さん名義でしょ? 他人名義のものに親が何千万も出すってことは贈与とみなされて税金がかかってきます、」


「そんなの黙ってりゃわかんないじゃん、」


「税務署はそんなに甘くないですよ・ あなたの稼ぎとか資産とか、全部調べてこんな金もってないってわかったら、ばれるでしょ。」


「う・・」



なんて嫌な仕組みなんだ・・


「まあ、それ込みで出してもらっても。 そうしたほうがいいんじゃないですか?確か住宅購入の場合は7~8百万まで非課税だったかな・・。 その辺は自分でググって調べて下さい。」


さっきの仕返しのようにわざとそっけなく言った。




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