Little by little
第134話 急展開(1)
ヘンな汗をかきながら
「お・・・おれの、」
八神は美咲を見て真剣な顔で口を開いた。
美咲はものすごく期待して目を輝かせて頷きながら言葉を待った。
八神はゴクっとツバを飲み込んで、
「・・おれの扶養家族になってくれ・・」
は・・?
美咲は口が自然に開いてしまった。
しばしの沈黙
フヨウカゾク?
って
扶養家族?
美咲は八神のことを一から十までわかっているつもりであったが
この
センスはどうしても理解ができず。
「え? なんで? なんでプロポーズなのに『扶養家族』~? 、言っとくけど、あたし働いてるから厳密に言えば慎吾に扶養されてないよ?」
大いに不満そうに言った。
「なんでって! すっごい一瞬のうちに熟考したんだよっ? おれは美咲とホントの家族になりたいって・・そう思って。」
八神は自分の言葉を正当化したかった。
「でも~。 もう、ムードない・・」
「だから、おれは美咲を一生、守って生きたいって。 おれが美咲を、幸せにしたいって。 これから生まれてくるかもしれない・・子供と、一緒に。 ほんと、大事にしたいから、」
八神は言葉につまりながらも一生懸命に自分の気持ちを伝えた。
「慎吾・・」
美咲はなんだか胸がきゅんとなってしまった。
「おれはまだまだ・・半人前だけど。 もうすぐ30だし。 もっと責任もって自分だけじゃなくて一番大事な人を幸せにしてやらなくちゃって。」
少し照れて言う八神が
すっごく
すっごく
かわいく思えて。
美咲は八神に抱きついた。
「美咲・・」
「ありがと。 ほんっと、すっごく嬉しいよ・・」
声が震えていた。
「・・結婚なんかどうでもいいよって言ってたけど。 ホントは・・ホントは。 慎吾がプロポーズしてくれるのずうっと待ってた。 約束だけじゃなくて、本当に結婚しようって言ってくれるの・・待ってた。」
泣き虫の美咲は
もう泣いていた。
「美咲、」
八神はニッコリと笑って彼女を抱きしめ返した。
「あたしも・・慎吾のこと・・絶対に幸せにするから・・」
美咲は涙をちょっと拭って微笑んだ。
「あー、おれ。 幸せにされるほうのが、やっぱ合ってるかな、」
八神は笑いながらそう言った。
「え~? もう・・」
美咲は八神のほっぺたを軽くつねった。
それでも
まだまだ暢気だった八神だが
話が急展開するのはこの後だった。
何だか精神的に疲れてしまい、その夜はものすごく寝込んでしまった。
「慎吾! 慎吾!」
朋の声で無理やり起こされた。
「・・なんだよ・・」
目が開けられない。
「例のホテル! 電話してみたんだけどさあ・・なんと、3月のオープン間もない第2日曜日、キャンセルが出たんだって~! 結婚式のキャンセルってのもすごいけどさあ。 そこで予約しておいたから!」
「・・ん~~、」
生返事をした。
「あたし、安くしてもらうように言っておくから! 任せて!」
言うだけ言って、朋は慌しく出て行った。
・・・・・
八神はバチっと目が覚めた。
今・・
なんつった・・??
え?
3月の・・第2日曜・・?
なにすんの?
・・って、おれと美咲の結婚式~?
ちょっと待てっ!!
ガバっと起き上がり時計を見た。
もう10時になっている。
す、すっげえ寝ちゃった・・。
おれが寝てる間に
とんでもないことになってる!!
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