第67話 あやふや(1)

いつも仕事で真尋のスタジオや部屋を片付けるのが常になっているので、八神はついついいてもたってもいられずに掃除を始めてしまった。


「なんだよ、これは・・」


段ボール箱が中途半端に口を開けている。



見ると


こんなもんいるのか?


というような雑誌の束。


捨てろよ。


雑誌なんだからさ・・



その中に


アルバムが何冊か入っていた。


何となく中を開くと


子供のころの写真や中学、高校のときの写真まで。


こんなの実家からわざわざ持ってくるかよ


と思いつつ見入ってしまった。



なっつかし~


みんな元気でやってっかな。



明るくて活発な美咲はいつも集合写真の中央で笑顔で写っている。


そして


そのどの写真の中にも


自分がいる。




これはこれで


すげえ楽しかったのに


このまんまって


わけにはいかなかったんだろーか。


小さなため息をついてそれを閉じた。




「・・慎吾?」


美咲が起きたようだった。


「ああ、起きた?」


「え、なにやってんの? 勝手に人のもん見ないでよ・・」


ボサボサの頭で起きてきた。


「熱は?」


片付けながら言う。


「わかんない。アタマぼーっとしてる・・」


「なんか食った?」


「アイスクリーム、ちょっと・・」


八神は美咲の額に手を当てた。



「ん~。 ちょこっと下がったような気もするけど。 まだあるなァ。 なんか食える?」


「ゴハンはいいけど、も~~、お風呂入りたい~。 アタマかゆーい・・」


美咲はボサボサのアタマをかきむしる。


「もうちょっと我慢しろよ、」


「シャワーだけでも浴びたいよう、」


美咲は耐え切れなくなったようで、いきなりパジャマの上を脱ぎだした。


「わっ!!!」


突然、下着姿を見せられた八神は驚いた。


「今さらそんなに驚くことないじゃん、」


美咲はブスっとした顔で不機嫌そうに言った。


「いいから! おれ買い物行って来るから、着替えてろ!」


彼女が脱ぎ捨てたシャツを押し付けて行ってしまった。




八神が買い物から帰ってくると、美咲がいかにも風呂上りで髪を拭いていた。


「あっ! 風呂入りやがったな!」


「もう気持ち悪いからさあ。」


八神は彼女の額に手を触れた。


「まだ熱あるんじゃないの? ったくしょーがねえなあ。」


と言ってキッチンに行って料理を作り始めた。


「ね、心配してくれてんの?」


美咲は何だか嬉しくなって背中から顔を覗き込む。


「え~?」


面倒くさいので無視するように料理をしていた。


「ねえってば、」


しつこい彼女に


「ちゃんと上着を羽織って。 湯冷めしたらどうすんだ。」


話を逸らすようにちょっと怒った。




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