第27話 つかず離れず(2)
八神はぎょっとして、
「おまえも行くのかよ、」
と美咲に言った。
「え~、当然じゃない。 まだ仕事始まってないし。」
ケロっとして言う彼女に、
「おまえ、おじさんとケンカして家出てきたんじゃねえのかよ、」
呆れてしまった。
「昨日電話したよ。 フツーに。 見合いの話はさすがに諦めたみたい。 こうなったら、やるだけやってみたらって。東京は厳しいからおまえなんかすぐ戻ってくるだろうから、とか言っちゃってさあ、」
豪快に笑った。
ったく
人騒がせだなあ。
そのときハッとした。
「・・って、おれも行くってことですよねえ?」
南に確認する。
「あったり前やん。 事業部のイベントやし。 あんたの歓迎会もかねてるし。」
「なんでおれの歓迎会をおれんちの隣で?」
そもそも動機もわからなくなってきた。
「いいじゃないの。 きっと慎吾んちのお父さんとお母さんも会社のみなさんと会いたいと思うよ。」
美咲は八神の背中を叩いた。
「ウチの家族も紹介すんのかよ!」
「え~、あたし八神の家族に会ってみたーい。 ねえ、志藤ちゃん。」
南は志藤に同意を求めた。
「まあ、な。」
志藤はニヤリと笑う。
「慎吾の家はお姉さんが3人いて。 一番上のお姉ちゃんは婿を取って同居してるんです。子供が2人いて。 で、二番目のお姉ちゃんは近所に嫁に行ってて。 三番目のお姉ちゃんは地元の旅行代理店で仕事してて、彼女は独身なんで同居してるんです。 みんなすっごく明るくて楽しいから、きっとみなさんが行ったら喜びます。
美咲はしゃべりまくった。
「もう、いいから! 余計なこと言うなよ、」
八神は美咲の肩を小突いた。
「そっかあ。 八神、ほんまにみんなからかわいがられてたんやろなあ、」
南はふっと笑う。
「もう下僕ですよ。 んっとに。 自分が母ちゃんに頼まれたことすぐ押し付けてくるし。 いうこと聞かないとすぐぶつし、」
「でも、慎吾のことはすっごくみんなかわいがってるじゃない、」
美咲は笑った。
「母ちゃんがいつも言ってるもん。 おれが生まれたとき、もう一番上の姉ちゃんは中学生で、あとの二人は小学生だったんだけど、おれのこと人形扱いで3人でいじくりまわして肩が抜けちゃって。救急車で運ばれたって。 かわいがるつったってね~、ペットか人形だよ。 んっとに、もう。」
八神の話にみんな大ウケで
「それ、すごいなあ。 ええなあ、大家族って、」
「そんな暢気なもんじゃないッスよ。 ほんっとおれ一人になりたくて東京出てきたようなもんなんですから、」
八神はおもしろくなさそうにタバコを取り出した。
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