『茄子 アンダルシアの夏』 NTR主人公は意地を見せる。

 自転車レーサーのペペ・ベネンヘリ(大泉洋)は、囮になって相手のペースを乱すのが仕事である。自身が勝利を取っていく役割ではない。他のレーサーを引き立たせるために存在する。


 彼は解雇の危機に瀕していた。

 

 スポンサーから嫌味を言われても、

「仲間を勝たせます。それでいいですよね?」

 と、大人の対応でかわす。


 自分はあくまでも、プロフェッショナルを貫く。

 

 この日も、彼は猛然とアタックを仕掛けて、敵チームの列を崩しに掛かる。


 だが、二度目のアタックは当てが外れた。誰も誘いに乗らなかったのである。


 単独首位になったものの、追いつかれるのは時間の問題。


 だが、そこで奇跡が起きる。


 後続がコースアウト、脱輪など、アクシデントに見舞われる。


 しかも、味方チームのエースまで、道路に飛び出してきたネコを避けて転倒してしまう。


 リタイアした仲間にかわって、「勝ちに行け」という指令が、ぺぺに下る!


  高坂希太郎監督は、脚本・キャラクターデザイン・作画監督を担当する。

 

『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』といったスタジオジブリ作品で作画監督をつとめたほどの実力者だ。

 しかし、本作はマッドハウス製作で、ジブリは関与していないのだとか。

 

 

 スペインのロードレースを舞台にした中年の青春もの。


 実況には日本テレビアナウンサーの羽鳥慎一氏が。

 解説は、元自転車ロードレース選手の市川雅敏氏が務めている。


 一方、元恋人のカルメンは、ぺぺの兄と式を挙げていた。

 彼女たちは自分たちのお祝いと、ぺぺの勝利を重ねている。


 馴染みの店で、「茄子の漬物とワイン」を堪能する。

 

 レースをTVで見るには飽き足らず、会場にまで向かう。

 

 

 ぺぺは兵役中に、恋人を兄貴に寝取られた。

 回想シーンにて向かい合って煙草を吸う二人。

 テーブルの上に積まれた吸い殻の量が、ぺぺのイライラを物語っている。



 分かりやすい負け組が主人公の作品だ。


 恋人は取られ、仕事はクビに近い状態。


 それでも、自分はプロに徹しないと後がない。

 そこにチャンスが舞い込んだ。


 足はもう限界に近い。後続には10秒差まで近づかれている。

 砂糖に群がるアリのような描写が印象的だ。

 

 崖っぷち男は、スペインで花開くことができるか。


 終盤は、名作野球アニメ「緑山高校」を彷彿とさせるデッドヒート!


 犬には犬の意地がある。


 続編に「スーツケースの渡り鳥」がある。

 監督が言うには、興行成績が芳しくなくて、続編が出るとは思っていなかったらしい。

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