第38話 代表監督へ
本来ならば俺は代表監督なんて引き受けたくなかった
あの事件がなければな……
「師匠大変です!」
高橋が物凄い勢いでドアを開けて入ってきた
「どうしたんだ高橋」
ぜーぜーと息をする高橋に尋ねた
「お金が~!」
小さな悲鳴のような高橋の物凄い動揺ぶりである
まずは落ち着けと言って、俺は落ち着かせながら詳しく話を聞いた
やられてしまった詳細を聞いたら、マネージャーがプールしていた一時金を引き出して逃げたという事だった
その金額なんと1億5千万円である
「俺の結婚資金や運営資金が……」
目の前が真っ白になった瞬間だった
俺は警察に電話し早速来て貰い詳細な事情を説明した
俺達が経営するクラブには警察の白いテープが巻かれ散々な状況だった
そんな時に松尾会長から突然の電話があった
「何やら色々大変そうじゃのうどれ儂が助けて進ぜよう」
「ホントですか、ありがとう御座います」
「ああA代表監督を引き受けてくれるのなら、1億5千万円で雇おう」
金額がドンピシャだよ、どれだけ此方を伺っていたのやら
「しかもじゃ、U20の方も任せようこちらが追加で1億円だ」
それは日本代表のA代表とオリンピック代表を兼任させるという事だった
これは2000年代にもあった事であのトル○エ監督が兼任していたこともある
人手が足りないな、今のS級ライセンス持ちは皆は先入観からか、少し頭が多分硬いから言う事を聞いてくれない気がする
「コーチの選任は此方にお任せいただけますか」
「いや、3人こちらから送るので、鍛えてやって欲しい」
そう来たのか、将来の監督候補を俺が育てろというこのになるが、仕方がないと思うほかない
騙されたというか、一杯食わされた気がするがしょうがないな
”ふぅ”という深いため息と共に答えた
「わかりました次のオリンピック迄ですからね」
「しかしな、金メダルやWカップベスト4などと偉業をされると約束できん」
「それではわざと負けるかもしれませんよ」
「お主がそれをしない事は儂がよく分かっている」
「分かりました、その条件でよろしくお願いします」
どうやら狸に一杯食わされてしまったが、もうしょうがないと思う事にしよう
俺は妻と高橋を呼んで会長との話を詳細に説明した
「どうだろう、1週間後に全部一遍に結婚、クラブ開設、就任会見、盗難事件発表してしまおうか?」
「良いわね、毎日記者会見を開く訳いかないし、ある程度の台本作って、それで行きましょう」
「そうですね、クラブのマネージャはどうするんですか?」
高橋が怪訝そうな表情で俺に尋ねる
「ああ、マネージャはのぞみに、監督は高橋に任せるつもりだ」
「そう、では退職して参りましょう」
そう妻になる予定の美しい女は答えた
「ああ、高橋の件とガレンにはあまり表に出ない様にマスコミを調整して貰えると助かるな」
「わかったわ」
そう妻は答えると会社へ急ぎ足で向かって行った
*************
今日は記者会見の日だ
微妙な時間割だ、30分おきにして貰った
まずは結婚の記者会見からだ
「えーこの度、私鳴海誠二と佐藤のぞみは結婚いたしました」
ちなみに記者会見の冒頭は"えー"と入れるのは日本人の癖だと思っている
パシャパシャと眩しいフラッシュの中で簡単な質疑応答に入った
「BL○○○社の○○です」
微妙な顔をした美青年風の男が質問をした
「籍を入れられたのは何時頃でしょうか?」
「昨日です」
イベント○大好き出版の○○です
「佐藤のぞみさんとは何時頃お知り合いになられたのでしょうか?」
とても嫌な目つきで俺を見る
俺は知っているぞ! この感情を、ああ知っているとも、何時もしていたからな、これは"嫉妬"だ(ナグッテヤリタイ)目がそう言っていた
俺は必死に目線で睨み返す(N○Rは絶対に許さん)
二人の目線での攻防は暫く行われた……
*************
アナウンサーが困った表情で新たに会見を続けた
続きまして、代表監督の記者会見に移りたいと思います
松尾会長が話を始めた
「もう皆さんもご存知かもしれませんが、ルマン監督はサウジアラビア戦の前に解任致しましたので、後任には鳴海監督がA代表と下のカテゴリであるU20も就任した事を発表したいと存じます」
早速、質疑応答の時間に入った
MB○の○○です
「ルマン監督の解任理由について教えていただけますでしょうか?」
「うむ予選通過できない可能性が高かったからだ」
「選手の造反があったと噂されていますがどうでしょうか?」
「いや、儂が決定して解任に至った」
「ありがとうございます」
高橋事件の質問は”全部終わった事です”で通していったし、またクロスバーチャレンジのリクエストがあったが断った
*************
クラブの開設と盗難事件については高橋が行ったクラブ開設の説明と盗難事件のあらましを説明していた
こちらも質疑応答に入った
「ではそちらの方どうぞ」
「ほも○TVの矢内あゆみです」
「クラブのオーナーは鳴海さんですか?」
「いえ、僕と師匠の掛け持ち分と志願者を募って出資者を募りました」
「開設予定は何時頃でしょうか?」
「そうですね、あと半年といった頃合いになりそうです」
続いて高橋は盗難事件の詳細を話ていった
「ではそちらの方どうぞ」
「やる○TVの○○です被害総額は幾らぐらいでしょうか」
「1億5千万円ほどになります」
「その補てんはどうなさるのですか」
「師匠が監督を引き受ける事でお金は大丈夫です……」
俺は記者会見が終わった頃には頭が真っ白になってしまったよ
途中からカミさんと松尾会長が応えていた気がする
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