第37話 結婚指輪は給料の3倍


俺は佐藤のぞみとの関係に一度決着をつけたいと思った

このままでは疎遠になるし、振られても良いのでプロポーズをしようと決意した

きっと一度くらい付き合いを断られたからって相手はあの美女だから、何度も繰り返し思いを伝えていかなければいけない

二人とも社会人だ電話だけだと難しいし中々会う機会が作れない

付き合いを保留されているので、力業に出てみたい


プロポーズと言えば結婚指輪だ

俺の監督時代の給料の3倍って無理ですよ

一千万超えちゃうじゃないですか

公務員の方の給料で3倍ならいけるかなと思っている

ちなみに給料の3倍というのはメーカーが流行らせたものなので、気にしなくてもいいそうだ


俺は下調べにお店に行ってみた

「いらっしゃいませ」

「すみません結婚指輪をさがしていて」

「予算はいくら位でしょうか」

「大体100万位で考えてます」


その話を聞いた店員さんの動きの速さにちょっと驚いた

「この辺がご予算に合うかと思いますが如何でしょうか」

「すみません、その辺に疎くて全然わからないのですよ」


”困った方ですね”そんな困惑の表情でおすすめを教えてくれる

「相手の方の年齢はお幾つですか」

「たしか28歳です」

「それでしたら、これなんか如何でしょうか」

ぱっと見た感じ彼女のイメージに合わなそうな気がする派手なのだ

「ちょっと派手すぎますね美女が品よく付けている感じがいいんですが」

「それでしたらこの辺がイメージにあいませんでしょうか」


見ると中々いい感じだにできている彼女に似合うと思った

「それ下さい」

「はいサイズは如何なさいますか」

「んーわかりませんので、ちょっとお待ちください」


俺は矢内あゆみに電話した

「頼む佐藤さんの指輪のサイズ教えてくれ」

「えーそれってもしかしてプロポーズ? 」

「内緒にしてくれ、この間高橋から無理やり聞いていっただろ、その借り返して」

「聞きましたけど、記事にしてませんからね、これは借りです」

ものすごい高い借りになりそうだがしょうがない

「わかった頼むよ」

「えーと○○のサイズになると思います」

「ありがとう」


電話を直ぐに切って店員に詰め寄った

「サイズ○○です、何時頃出来ますか」

「お急ぎでしたら、明日の夕方にはできます」

「ではそれでお願いします」


俺が店を出ようとした時ある事に気が付いた


「これって断られたら返品できますかね」

「大変申し訳ございませんが……」


急いで家に帰ってきた俺はプロポーズの場所と言葉について考えていた

プロポーズの場所は割とすぐに決まった

俺はコートでプロポーズをしようと思うが、問題は何ていうかだ……


「俺のボールを受け取って下さい」


うーん何て言えばいいんだろうか

これではボールって何? と言われそうだし下品だとおもう


「将来おれがWカップのトロフィーを持ち上げる時一緒にいて欲しい」


そうか彼女はキャスターだから一緒にいるのか、コレもダメだ


「俺の全てを捧げるので受け取って欲しい」

「俺の味噌汁を……」

「俺と一緒になってくれ」


どれも今一つピンとこないし俺らしくない気がする

デリカシーが無いと言われそうだが俺らしく愚直にいこう


************


その日俺はプロポーズの場所をコートにした事をすごく後悔していた

雨がザーザーと降っていた

如何すればいいんだ、クラブハウスの中なんて恰好が悪いしコートも貸し切りだ

そんな時に彼女はやってきた。


「ねぇ何なのこんな所に呼び出して」


もう迷っている暇はなかったやるしかない

彼女の手に傘を持たせて、もう片方の手を掴むとセンターサークル付近まで連れ出して行って、俺は言った


「俺と結婚してくれ」


そう言って指輪を差し出すのが俺の限界だった

頭を伏せて返事をジッと待っている


「ホント馬鹿ね、その馬鹿な所がいいんだけどね」

一呼吸置いた後、彼女はと嬉しそうな笑顔で言ってくれた


「いいわ結婚しましょう」


そう言われた後には抱きしめて振り回していた

在り来たりかも知れないが、俺らしくていい

「ところで家はどうするの」

「ああクラブハウスの中に住もうと思ってた」

「嫌よ子供作れれないじゃない」


「ああ、わかった家買うよ」


この家が買えなくなるとは思ってなかった

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