第36話 キャプテンという男 源 尚志(31)


俺は現在の日本A代表チームのキャプテン源 尚志(31)だが、今回のルマン監督の更迭に責任を感じている


俺達日本代表は本選の前に非常に苦しんでいた

追加招集された根本とルマン監督との相性は最悪だった

ルマン監督自体が鳴海チルドレンを嫌っていたので、呼ばれはするもののスタメンでは無かった

FW陣山田と矢口もルマン監督を嫌っていた為ベンチスタートが多かった様子で不満を漏らしていた


オリンピックメンバーの約半数が呼ばれているのに、全てベンチスタートとなっていたし、今日の試合は勝ち点を落とせば予選敗退に黄色信号が灯る状態だった

 俺と根本と児玉のコンビネーションは割といい状態だったと言えるが、佐治とは同じプレスを掛けるタイプで相性がよくない

 FW二人も長いスランプのノーゴール状態に入っていたのに比べ、山田と矢口も絶好調で紅白戦もゴールを連発していた


選手全員でクーデターを起こすしかないと考える俺の判断は間違っているのだろうか?


スタメンメンバー表を提出されたら、選手交代は3名しか出来なくなるので危険だ

非常に悩んだが、やるしかないと決心してスタメン予定のメンバー4人に声を掛けた


「お前ら全員今から腹痛になれ、全員同じ弁当を食べた事にしろ」


非情とも思える事を俺は彼らに告げた

「ええー」

「そんなんキャプテンは監督じゃ無いんですから、言う権利はないじゃないですか? 今日でWカップが決まるんですよ」

彼らも代表メンバーだから、自尊心が強いのは当たり前の事だ

「分を超えているのは、わかっているが今は全員が勝ちにいかなければいけない」

「そうは言われましても嫌です」

全員が拒否の姿勢を示したのは当然の権利だ


「よくわかった、俺が他のメンバーに掛け合って監督へ直訴する」


俺は他のメンバーを集めて4人を除く全員で直訴にいくことになった

選手間でこれ程のいざこざを起こした事は経験上誰もないし直訴も同様だ

打ち合わせの上でルマン監督が拒否すれば俺と鳴海チルドレンは全員でボイコットする事になった、経験者がいると助かると言ったら鳴海チルドレン全員が笑っていた


俺は全員をひきつれて、ルマン監督の元へ行って反乱を始めた

「ルマン監督」

「どうしたキャプテン何の用だ」

「すみませんが、あの4人はコンディションが悪すぎて今日は使えません」

俺は通訳なしで英語で言った後に4人を指さした

「キャプテン気持ちは解るがそれは僕の仕事だ」

流石に監督も怒り心頭だが、此処で折れる訳にはいかない


「聞いて頂けなければ全員でボイコットします」


「何をいってるんだ源、そんな事が許されるはずないだろう」

ルマン監督とコーチ陣含め全員が唸っている


しょうがないと、俺はスマホを持ち出し協会会長に電話した、予め協会の会長とは打ち合わせ済みで根本を出さなければ監督を脅す様に指示されていた

「ルマン監督、松尾会長からお電話です」

スピーカーをオンにして皆に聞こえるように仕向けた

スマホ越しに会長の声が聞こえて来た


「ルマン監督残念だが更迭じゃコーチである生島が代理をつとめろ」


そういって生島コーチが指揮を執る事になった

生島コーチは鳴海チルドレンにそれ程の嫌悪感がある訳ではないので、キャプテンである俺の事情も分かってくれた


今日のサウジアラビア戦を4-0で勝って残りの試合数1を残してWカップのチケットを手に入れた

MVPは根本だった明らかにパスカットをしてカウンターを仕掛け十分なチャンスメークをしていた


ちなみに得点は山田x2得点で矢口x1、児玉x1と鳴海チルドレンが大暴れした

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