異世界の旅への誘い 2021年5月19日
めちゃくちゃな時間感覚を何とかせねばならない。仕方ないから、腹減った状態で、長い時間寝た。覚えてないくらい寝た。
起きてみると、2時。またかよ、とカーテンをシャっと開けると、真っ暗だ。夜だ。良かった、寝る。丑三つ時ばっかりが普通になってる俺達は、師匠からあの先生と付き合い続けるのなら縁を切る、と言われていた。
あの先生の背後にいる存在は、師匠でも太刀打ちできないらしかった。そりゃそうだろ。
びいはあの先生の背後についている存在の声を、直に聞いたと言っていた。善い存在なのかそうでないのか、わからないと言っていた。珍しい。びいにわからないということは、本当にわからないということ。
確か……俺の記憶では「まだ人間にパラレル・ワールドとこの世界、異世界を自由に行き来する方法を教えるのは早すぎる、ダメだ」と、その存在はびいに伝えてきたらしかった。びいが「だから、物語という体裁を壊すわけにはいかない」と。そのメッセージは、とても逆らえるようなものでなく、ゾッとするくらいの威厳に満ちていた、と。
異世界の旅に先生を誘ったというよりも、先生は、この世界のエキスパートなのだから、俺たちにとっては「ほとんど指針」に近かった。俺たちが歩いても、盲滅法で、どこに向かえばいいかわからない。正直、何もない原野みたいな場所。
俺たちだと、目指す先が全く不明になり、やめとくか、と思ってしまう。砂漠みたいな何もない場所を延々と歩く意味のようなものが見出せないからな。それで、先生と出会うのを待っていた。先生と一緒なら、自由に歩けるんじゃないかとは思っていた。地図のように。そうしたら、先生は思惑通り、帰ってきて俺たちにコンタクトしてきた。だから、俺たちと一緒に旅してくれませんかね、と声をかけた。
先生は何のことやら、ととぼける風だった。ただ小説を書いているだけで、全然霊感などもないし、と。俺たちにとって、そんなことはどうでもよかった。具体的にどんなふうに旅するかなんて、別に。
恐ろしいくらい、びいはどんどん、すでに映像を見ていた。どこを行き、何をする。どんなことがそこで起こる。
30日、先生と創作していた間は、そういう日々だった。寝るとか食べるとか、全くこの現実とはうまく繋がれなくなる。結局のところ、びいは霊媒だったということだ。それは昔に宣言をしていたが。あれはいつだ? 2014年くらいか?随分前の話だな。
自分はMedinaメディナである、と。そんな言葉があるのか俺は調べた。Medinaというのは昔の街の名前だ。どういうことなのか。Mediumメディウム、媒体という単語があるが。
そもそも師匠は今の状態について、最初、びいに注意をしていた。俺をウォークインさせるなんて何事か、と。それは良くないことだ、と。
びいでなく俺が説明した。そうでもしないと、びいはオートでシャットダウンになるくらいに追い詰められているから、仕方なかった、と。びいの生命を維持するためには、俺がそうしてやるしかない、と。俺と直接話した先生は、それなら仕方ない、と答えた。びいは依存が過ぎるというのは、先生と俺の一致した見解で、もう死んでしまいたいというのは、弱いこころが投げやりになり、この世に繋ぐものが何もない状態になって、行くアテもなく漂流している状態だから、何とかこの次元に留め置き、肉体を維持させるために俺は力を貸していた。
びいは先生の仕事を受けたが、今度はオートでどんどん異世界のことを見て、勝手に語り出した。
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