俺たちの終わらない夏


 海外の自宅へ戻れなくなったびいは、20年ぶりの夏を日本で過ごしていた。海外在住だった期間より長い20年ぶりなのは、毎年夏はアメリカにいたせいだ。


 この滅茶苦茶に暑い日本の夏を、過ごす自信はないとびいは言ったが、つい最近までクーラーなしで平気だった。ここのマンションは涼しい。


 8月の13日に遺族会の草刈りがあった。朝から草刈り。このために昼夜逆転を直さねばならないし、本当に良いことだった。真夏の炎天下に義務で出ないといけないというのは、何とか社会に接続させるのにちょうどいい。


 この話は書いたか忘れたが、30分かけて会場に行ったのに、結局草刈りしたのは俺だ。びいは挨拶しただけで、ひょこっと気がつけば消えていた。


 俺は苦笑したが、まあ仕方ないな。日焼けで責められて閉口したから、今年は絶対に日焼けしないよう、俺はひっそりと日陰で作業した。去年海で泳いで、本当に、本当に、本当に、しつこくその後、恨まれたからな。


 80代の人たちの方が生気があり、元気があり、俺まで幽霊になった気分だった。やばい。俺の年齢で、これだけ少ないアクティビティはさすがにまずい。


 その後、15日の式典に結局参加になったのは、強く誘われたからだ。この話書いたっけ?全然覚えてない。今の日本の現実を知って、衝撃を受けたんだよな。まともな演説している人は、年取ってる人だけで、50代半ばくらいの人はもう、腑抜けたこと言っていた。それで俺は初めて今の日本を知って、甥っ子たちのあの、腑抜けた感じがこれじゃ当たり前だな、と。俺も軟弱な方だと思ってたけど、これは予想以上だった。いつのまにかここまで変わっていたとはな。

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