第138話 3人目の医師の意見
ギリギリに駆け込む。6時22分?俺は自分のスマホを見た。6時10分じゃねーか。10分以上も時計を早めるな。
レセプションには誰もいない。ここのレセプションのおばさんはとても愛想が良く、俺はいつもホッとしていた。俺は常連になるとホッとするんだ。
あら、いらっしゃい。
本当は店に通えばいいんだろうが、俺は酒もダメ、外食が嫌いだ。残念だなあ。
おばさんがいない、困った。こんにちは〜!こんにちは〜!と叫び続けてみる俺。
俺って騒々しいやつだな。時々Bが「お前目立つな!ドタ靴でバタバタやってくるみたいに動くな」と言ったが、俺ほんとダメ。人の印象に残りやすい。
で、どうもいないらしい、と先生のオフィスをコンコンする。あの先生なら、時間外でも見てくれそうだ。
返事ない。おばさんトイレか?長いな……
で、困った、このままじゃ無情にタイムオーバーと思い、書類を置いたままトイレへ。戻ってきたら、医者が会計をしている。
「あ!先生ですよね、予約なしですいません……」
俺は、その先に待ってるムッシューに目礼する。書類で順番とってたってことで許せ。絶対、今日中に注射してもらわないと、俺、敗血症とか、狂犬病で死ぬかもしれねえ。
だったらさっさと医者に昼前に行っとけよ、と自分でツッコミつつ、こっちの人は血も涙もないから、6時半きっかりに切られる、と俺は事情をまくしたてた。
医者は背が低い。ニコニコしながら、俺の話を聞く。
「実は俺、あっちのドクターの患者なんですが、今日休みだって言うから」
先生は「俺、君のこと知ってるよ?」と笑った。
「え?」
俺は、まあいい、俺も先生くらい見かけたことあるとは思って、バクシン、注射必要ですか?と聞いた。
ま、要らないと思うけどね。
「え?このまま帰っちゃっていいってことですか?それは……えっ、それって……」
俺は注射が嫌でダラダラしていたが、見なくても大丈夫と言われると不安になる。俺、普通に歩いてて、地雷踏むような男なんで。
ま、中で聞こうや。
先生は、ニヤッと笑い、クイっと俺に親指を立てた。友達かよ。
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