第132話 金箔にガラスに。
金箔というのは結構扱いが面倒だし、高い。曲がりなりにも金。
金箔銀箔を平皿に綺麗に散らしているが、これだけで結構、面倒でしかも高い。
その割にデザインがうまくいってない。重なってる部分が多すぎて効果が上がってない。
ああ、これは技法的にコントロールできないから、仕方ない。
うまく散らそうにも、上、真正面から見ることができず、裏から貼ることになり、最終的にどうなったかは、終わって見ないことにはわからないから。貼り直しは絶対にできない一発勝負。
それにヒラヒラヒラヒラする金箔の扱いは、全然思ったようにはいかない。たとえ息を止めたってヒラヒラするんだから。
……これなあ、綺麗けど、難しいね。
俺は話を変えて、なんかバイトないっすかね、と言った。
お姉さんは椅子に座り込んで、もぐもぐ丸いプラスティックの容器から、何か食べていた。ウサギみたい。小柄な人だ。俺が買う気がないとわかった途端に、食事に戻っていた。
お姉さんはどうやってここのバイト見つけたんすか?
実はお姉さんはデザイナーでここのチラシなんかをデザインしたらしい。それで駆り出された、と。実のところ、ここじゃ、なんでもやらないと食っていけない。
現地語、無理なんだったら、甘いよ〜。バイトとか、簡単に見つからないよ〜。
動画とかの動く広告なんかが本当はメインで専攻だったというお姉さんは、ちょっとムッとしながら言った。お姉さんの名刺をもらった時に、もし人手足りなかったら、俺に声かけてくれません?と図々しく俺が言ったせい。単発とかのバイトで。俺、体力もないし、語学もイマイチなんすけど。
お姉さんは、自分でこういうバイトのゲットでも難しいのに、と言いたげだった。みんな必死なのだ。あんた馬鹿なんじゃないの。何にもできないのにバイトなんてないわよ。お姉さんはこう言いたげだった。
もぐもぐもぐもぐ
俺は、ちょこんとパイプ椅子に座ったうさぎと会話してるみたいな錯覚に陥った。まあ、初めて会った人に、いきなりバイトないすか?なんて、俺も俺だ。
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