ルファリ

荻野琅

プロローグ「幼い決意」 

 静寂な音だけが鳴り響く暗闇の中、一つ、また一つと出口への道が燈される。この道を辿れば最初入ってきた光の世界にまた戻ることはできるだろう。みんなが待っている……あの場所へ。

 少年は立ち上がることができなかった。目の前に倒れている少女を、ただただ見下ろすことしかできなかった。少女の左目は虚ろになり、そこから一筋の血が流れていく。

 原因を作ったのは、自分。剣の修行を抜け出して城の庭園に隠れていた時、たまたまその場にいた彼女と仲良くなって一緒にいるのが楽しくて。つい夢中になって禁じられている洞を探検しようと提案したのが、最悪な結果を招いてしまった。終わりはしたものの、少年は本来持っていた《リール》を喪い、少女は大怪我を負ってしまった。


「――――ごめん」


 今度はちゃんとまもるから。鍛錬して強くなって、次は絶対に護って見せるから。

 忘れてしまって構わない。名前を覚えていなくていい。

 少年は少女を背負って立ち上がり、歩き出す。城に戻ったら皆に心配されるだろうが、まずはこの子の親に謝らなければ。謝罪して許される問題ではないのだが、とにかく謝ることしか今の自分にはできることがない。

出口に近づくにつれて髪が白銀に輝いていく。零していた涙はいつの間にか止まっていた。涙で腫れたその両眼は、弱気なものではなく、幼いながらも鋭いものに変わっていた。



 力だけでなく、心も強くなろう。何があっても動じないように。冷静で的確な判断が付けられるように。

 新たに手にした《リール》で、誰も傷つくことがないように。

 ハルト国第一王子は、強く心に決意した。






 十年の月日が経過する。



◇    ◇   ◇







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