狐のおつかい

 この三連休はジェノサイド的な暑さと聞いていますが、皆様、生きておられるでしょうか。私は引きこもりました。

 それはそれとして四十二冊目です。黒月水羽さま著「狐のおつかい」、誠心誠意書評、参りましょう。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885433902


【あらすじ】

 香月七海には幼馴染がいる。坂下香奈は自慢の幼馴染である……オカルト好きだということを除いては。香奈が興味本意で持ってきたウワサ。学校裏にある祠が先日破壊され、そこに「いる」少女が犯人を探しているのだという。少女は何者なのか?目を輝かせて調査に乗り出す香奈に巻き込まれていく七海。厄介事はごめんだと願いつつ祠の調査を始めた矢先、謎めいた美少年・佐藤彰に出会う。


【魅力】

 丁寧な構成です。キャラクターに対する掘り下げを、日常のシーンも含め細かく行っています。他愛ない会話から物語の核心に迫る発言まで、様々な観点からキャラクターの思考、スタンス、性格が描かれています。今作は一部でひとつの怪異に取り組んでいくため、あらすじでご紹介したものは第一部の概要になりますが、丁寧で繊細なキャラクターの機微は第二部以降も健在であると推察されます。


【改善点】

 私が書評を書くにあたり、欠点を補うことよりも良さを殺さないようにすること、良さを伸ばすお手伝いができれば、というスタイルは以前お話したと思います。今作についても、キャラクターの掘り下げが丁寧であることが魅力だと考えますので、そのあたりを中心にお話できればと。

 主人公の七海について、彼女は長身で同性に人気が出る容姿らしいことが作中で述べられています。が、実際には(少なくとも第一部では)クラスメイトからそういったアプローチはなかったように思われます。「同性にもてる」という事実のみが先行しているため、具体的にクラス内や調査中にそういった片鱗が見られれば、より七海がどう見られているかわかりやすいかと思います。彰や香奈は客観的に見て人気の出る容姿であることが描かれていますので。

 今作は同性に人気の主人公、平均よりもかわいい幼馴染、目を引く美少年、ヤクザ顔した教師とアクの強い外見が揃っています。外見、というのがある程度物語の進行にも関わっていますので、そこをより印象的に、あるいは描かれる際に意識されると読者の受け取るイメージも変わってくるように思われます。


【その他】

 オカルトものやホラーについて、色々と思うことがあるのですが、私はそういったものに対して興味本意で近づくのはあまり好きではありません。もちろん、小説としては別ですよ。フィクションなら好きです。

 ただこの季節になると心霊現象の特番とかありますよね。私の身内にそういったものに苦しめられている人がいるので、エンタメ性や興味本意で心霊現象に臨む人の心理は理解しがたいなあ、というのが本音です。重ねますが、フィクションなら別ですからね。

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