第4話 白菜太郎は龍神様

「あけましておめでとうございます。」

家族揃ってニューイヤー駅伝を観ながら、とはいえそれなりに厳かに、今年最初の朝食が始まった。重箱から溢れるおせち料理にテーブルいっぱいのご馳走。自家製のお餅が入ったお雑煮。つつがなく、正月膳が進んでいく。


「YKK、映ったー!」

例年通りというのは素晴らしいことです。従前、サイコー。


「宇佐先生にもお屠蘇くだたい。」

あ、忘れてた。今年はコイツがいたのだ。

「お父さん、インスタに上げるんで、ウサちゃんにもお屠蘇ください!」

「ほいよ。ウサちゃんは金粉入りがいいかい?」

ヲタクに寛容な義父でよかった。ぬいぐるみのウサギにポーズを付けながらシャッターを切る。

「ほーい、おっとっと。」

「お父さん、それは熱燗です。」

豪華な料理を背景に金粉入り日本酒を飲む。それがウサギのぬいぐるみで無ければ、ありきたりのお正月だ。


神社でお祓いしてもつきものが落ちなかったらどうしよう。ちょっとばかり弱気になって、夫に話しかけた。

「ねぇ、お祓いには何時頃から出かける?」

「うーん、いつも通りでいいんでないかい?っていうか、お祓いじゃないよ、ご祈祷。新年のご祈祷だよ。」

おっと、そうでしたご祈祷です。いつもなら、寒い中で行列するのが嫌で正午を狙っていくのだけれど、今年ばかりは急ぎたい。

「去年も1時間くらい並んだし、今年は少し早く出たいんだけど、どう?」

「外雪だけど、いいの?寒いのは嫌なんでしょ?」

「お宮さんの方は晴れてるっちゃ。」

ナイスフォローです、お義父さん。ありがとうございます。

「ね、あたしの気が変わらないうちに出かけましょ。」

「了解、30分後に出かけよう。」


「2階で出かける準備をしてますね。」

ウサギのぬいぐるみと共に、寝室へ戻った。神社へ行くことは決まった。あとはウサちゃんに取り憑いている白菜太郎の正体を暴いて、なんとしてもお祓いしてもらわなくては。30分、事情聴取の時間が取れたのだ。


「おい、白菜太郎。お前一体何者なんだ?」

「宇佐先生、神様だもん。龍神様だもん。一番最初に目が合ったとき、宇佐先生は龍神様の形でした。」

「は?どう見ても青虫にしか見えなかったよ。ちっちゃい上に、ちゃっちかったよ。いや、ちょっと待ってよ。」

微妙に気になることがあり、スマホで検索をしてみた。

「あんた、青虫じゃないんだね。青虫って正確にはモンシロチョウの幼虫のことだけど、すき焼き鍋で慌てふためくあんたの姿、モンシロチョウの幼虫じゃなかったから。ウリキンウワバっていうみたいよ、あの形。」

「宇佐先生は龍神様でつ。」

「あれかなぁ、新卒の龍神様?それとも、龍神になりたかったミミズの亡霊?」

「…この前まで、お魚だった。頑張って、龍神様になったもん。」

「…新卒かぁ。」

私はあからさまにガッカリして見せた。コイツのいう『この前』が、国際標準時間でどのくらいの長さなのかはわからないが、自称とはいえ神様歴が浅いことだけはわかった。自分を神様だと思い込んでいる浮遊霊や妖怪の類いなら、簡単に祓えるだろう。勝利は見えたな。


オカルトマニア歴40年の私と新卒の自称神様。勝てる。


神社へ返しに行くお札の類いをウサちゃんの頭上でヒラヒラしながら、この後の段取りを考えていた。天照大御神のお札で扇いでみても、これといって変化は見られない。そんなに悪い奴でもなさそうだし、このまま一緒に神社へ行っても大丈夫そうだな。


「そろそろ出るよー。」


「はーい!」

古いお札やお守りを入れた袋を持って、急ぎ玄関へ向かった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お電話代わりました、3.5次元サポートセンターです 小鳥遊 醍醐 @piyopiyo-no5

★で称える ヘルプ

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ