第4話

【東條達哉side】


「ふう。やっと終わった……」


 一週間にわたる可憐との勉強会の成果が問われるテストがたった今終了した。

 自分の感触では前回よりはかなり出来た方だと思う。

 これはやっぱり可憐のおかげであることは間違いない。


 開放感に包まれているオレの気持ちと同じ生徒が多いのか、あちこちから『終わったー』とか『よーし、もうすぐ夏休みだぜー』などの声が聞こえてくる。

 来週には答案が返ってくるけど、それまではとりあえずは安息の期間といっていいだろう。


「達哉、テストどうだった?」


 少し心配そうな表情の可憐がオレの横で尋ねてきた。


「お、おう。おかげさまで今回は結構自信あるぞ」

「本当? よかったー」


 心底ホッとしたように胸に手を当てて微笑む可憐。うーん可愛い。


「まあ、でも来週返ってくる答案次第だけどな」

「大丈夫。達哉はやれば出来る子だもん!」

「え、ああ、ありがとう。感謝してるよ」

「えへへー。そう言ってもらえると嬉しいな」


何この可愛い生き物は。

 少し大げさかなと思いつつ、可憐への感謝の言葉を伝えると素直に喜んでくれるのでくすぐったい気持ちになってしまう。


「あ、そうそう。やっとテストも終わったことだし、ちょっと打合せしない?」

「打合せ?」

「うん。だってもうすぐ夏休みでしょう? どっか一緒に出掛けたいし」

「ああ、そうだな」


 確かに夏休みといえば、いろいろと楽しみな催しが多い。

 定番と言えば、海とかプール、あと友達を誘ってキャンプなんかもいいかもしれない。


「うんうん」


 嬉しそうな顔で相づちを打ってくれる可憐。でもそれは、ぼっちのオレを誘ってくれる友達がいればだがな!


「あはは、達哉って友達少ないしね」


 あとはお祭りに行って花火を見るとかもいいな。もしかして可憐の浴衣姿を見られるかも。


「いやん。そんなに見たい?」


 そりゃそうだよ。何せ超絶美少女の彼女なんだからな!


「もう……達哉ったら♡」


 あれ? 一人で妄想にふけっていたはずだけど絶妙な合いの手が入ってるぞ?


それにすぐ近くから甘いようないい匂いがするし、両膝に違和感があるし、気付けば周囲から熱い視線を感じるし……って。


「……何している?」

「えっ?」

「だから何で膝の上に座ってるんだ?」

「あれれっ?」


 えーいつの間にーなんて、今気が付いたみたいに慌てているけど、わざとだよね?


「だって、達哉ったら、海とかプールに行きたいって私の水着姿を想像していやらしい顔をしてるんだもん」

「勝手に人の妄想を暴いている上に全然答えになってないよ!?」


 そっかーそんなに楽しみなんだー、と赤い顔でクネクネしている。

 そんな姿もめっちゃ可愛いんだけど、いつもオレの心を読み取るのは止めて欲しい。

 というかエスパーなの? 異能力者なの?


「それじゃ、これから打合せするよ!」

「えーと、どこで?」

「もちろん、ミ○ドよ」

「お前、ドーナツ好きだよな……」


 まあ、とりあえずテストも終わったことだし、楽しい夏休みを過ごしますか。



【西嶋可憐side】


 今回のテストは達哉の部屋でお互いの愛を確認しながら勉強したから、いつも以上に出来た気がする。

 そのせいか、どの教科でも30分以上時間が余ってしまったので、暇つぶしに達哉の後ろ姿を堪能してしまった。


 普段あまり見ることの出来ない彼の真剣な顔。すぐ横で見られないのが残念だけど、思わずため息が出てしまうくらい格好いい。すぐにでも胸に飛び込んでいきたいけど、今はテスト中なので我慢する。はあ、だからテストって嫌なんだよね。


 でも何事にも終わりは来る。

 今日でテストも無事終了した。


 答案を集め終えた先生が教室を出て行った瞬間に達哉の元へダッシュする。ダッシュと言ったってほんの2,3歩しか離れてないんだけどね。


「達哉、テストどうだった?」


 達哉の表情に手応えがあった感じがしたので単刀直入に尋ねてみた。


「お、おう。おかげさまで今回は結構自信あるぞ」

「本当? よかったー」


 勉強会でも『さすが可憐だな、説明が分かり易いよ』とか『お前は努力家だしな』とか『テストが終わったら結婚するか』なんて言ってたから、大丈夫とは思っていたけど、本人の口から言われてホッとする。あ、最後のは妄想だけど。


 さて、今回のテストが終われば次にやってくるのは夏休み!

 初めての達哉との夏休みだし、ここは気合いを入れていかないと。


「あ、そうそう。やっとテストも終わったことだし、ちょっと打合せしない?」

「打合せ?」

「うん。だってもうすぐ夏休みでしょう? どっか一緒に出掛けたいし」


 これまでの私の夏休みといえば、両親と親戚の家に遊びに行ったり、美香と買い物に出掛けたりとそれなりに楽しかったけど、せっかくの夏休みだし、やっぱり恋人同士の時間というのを堪能したいよね。


「ああ、そうだな」


 そう言って達哉が考え始める。

 付き合ってから分かったんだけど、達哉って考え始めるとすごい集中するんだよね。

 勉強会のときだって、脇目も振らずに参考書を睨んでいて私の存在を忘れているし。

 今だって、私にしか聞こえないくらいの小さな声で無意識に考えていることを呟いてるんだけど、気付いてないのかな。


『定番と言えば、海とかプール、あと友達を誘ってキャンプなんかもいいかもしれない』

「うんうん」


 そうだよね、夏といえば海だよね。

 普段とは違う雰囲気の中で達哉と二人で水を掛け合ったり、一つの浮き輪を取り合ったり、せ、背中にサンオイルをぬ、塗ってもらったり……えへ。


『あとはお祭りに行って花火を見るとかもいいな。もしかして可憐の浴衣姿を見られるかも』


 そうか、お盆の頃にはお祭りもあったわね。確か、盛大な花火も打ち上げられるし、お互いに浴衣を着て眺めるのもいいな。


(浴衣姿が似合ってるよ、可憐)

(え、あ、ありがとう……)

(何ていうか……すごくエロいな)

(ちょ、な、何言ってるのよ!?)


「いやん。そんなに見たい?」


 そして雰囲気が盛り上がった二人は手を繋いで、人気ひとけのないところへ……えへ、えへへへへ。


『何せ超絶美少女の彼女なんだからな!』

「もう……達哉ったら♡」


 頭の中がボーッとして立っていられなくなり、気が付いたら。


「……何している?」

「えっ?」

「だから何で膝の上に座ってるんだ?」

「あれれっ?」


 あはは……いつの間にか達哉の膝の上に座ってた。

 

「だって、達哉ったら、海とかプールに行きたいって私の水着姿を想像していやらしい顔をしてるんだもん」

「勝手に人の妄想を暴いている上に全然答えになってないよ!?」


 うん、だって無意識だったとは言えないし、やっぱり恥ずかしいしっ。


「それじゃ、これから打合せするよ!」


ついそんな風に誤魔化してしまう。


「えーと、どこで?」

「もちろん、ミ○ドよ」

「お前、ドーナツ好きだよな……」


 苦笑いを浮かべる達哉だけど、好きな人と食べるドーナツはまた格別なのです。


「ということで、ミ○ドへレッツゴー!」

「はいはい」


 疲れた表情で立ち上がる達哉。何だかんだいっても付き合ってくれるから優しいよね。

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学園アイドルで美少女、西嶋可憐の暴走の日々 魔仁阿苦 @kof

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