50 秘密?の部屋と黒すぎる過去
カコさんが暴走してから数日
状況を説明すると、カコさんが暴れだしたようにいきなり管理センターの職員や研究員達が獣のように暴れだしてしまった
ジャパリパーク全域から職員以外の人間を全て避難させ、今は各地の管理センターに居る職員しか残っていない
何が何だか分からないというのが今わかっていることだ
カコさんの体から治療と称して黒い何かを引き抜くよう支持した研究員はすでに消息不明になってしまい足取りすらたどることが出来なかった
「人工サンドスターだっ!!!!! …シコルスキー!!!」
そこでなぜか消えていた記憶が蘇り2つの単語が浮かび上がった
「シコルスキー…そうですか。心当たりは無いとは言えませんが…」
「お願いします、関係なくてもいいので全てを教えて下さい! あいつはなんなんですか、なにか知ってるんですか!?」
「ヒデさん、最重要機密に触れる覚悟はありますか。私はあなたを信頼していますが、ヒデさんには受け止めきれない事実があるのです。残酷すぎる過去が、存在するんです」
最重要機密という言葉がこんなところで出るとは思わず少しだけ戸惑ったが今は問題ではない
「今は細かいことを気にしていられません。お願いします」
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「よく戻ってきた、ハルピュイア。全ては私のプロジェクトのタメ…本当に感謝すル。一時はあの無能共の手に落ちると心配したが流石私の最高傑作ダ。ほれほれダヴァイダヴァーイ!!!」
森の中で赤黒い顔に気味の悪い笑みを浮かべた男…シコルスキーとその部下の男たちが、バケツほどの大きさの機械を使ってどす黒い液体を地面に染み込ませていた
「オイ、人工サンドスターのストックが無くなっタ」
「用意していたものは全て流し終わった模様です。……ハルピュイアから吸い取りますか」
シコルスキーに睨まれた部下の男がスズの座っている方に歩いていき、そばに止まっていたトラックから巨大なカプセルのような機械を取り出すとスズの隣に設置した
スズは男たちの様子を静かに見ていたがその機械を見ると目を見開いて怯え椅子から離れたが、すぐに近くに居た男によって首筋に麻酔を打たれ再び座らされた
「ハルピュイアもう怖がることはなイ。人間は進化する生き物ダ、改良に改良を重ねて苦痛の軽減とさらなる効率化を施しタ」
「もう嫌よ…いやだ、いやだ!」
「お前が心配する必要はナイ。まさに自然の摂理、パークは滅ぶべくして滅ぶんだよハルピュイア。知らなくて良いことを知りすぎたせいで要らぬ心配と苦しみを味わう…実に非効率な事ダ」
シコルスキーがスズの肩を掴んだが抵抗することはなかった
そのまま横に座ると肩に置いていた手を体のラインに沿うように滑らせ最終的に尾羽根に手を潜らせた
シコルスキーの手はすぐに払いのけられたが、抜けた一本の尾羽根が手の中に残った
「思い出ス…懐かしいあの頃の感触。お前は変わってもう私を愛さなイ」
「そんなの知らない! ニタニタしながら近寄ってきて本当に気持ち悪いわ。そうやっていつまでも飢えていればいい。もう何をしても意味はないわ、私はあなたとは一緒に居たくない」
「そうだ意味はなイ。だが大切な人が奪われる気持ちを理解できないのなら身を持って知ってもらうだけダ。人間関係など元々無いがお前だけ…お前だけはどうしても手放したくなイ。つぎ込んだ全てを理解するまでこうしてここで崩壊を見守レ。必要に応じてスカイなんとか?の3人も、温泉のキツネ共も好きにできル。
あと例の担当飼育員とやらも例外ではなイ。
パークに逃げようと全ての行動は見えているのだからナ」
「っ!? やめて、変なことはしないで! 嫌いならさっさとその銃で早く…!」
「私はお前を愛していタ。…いや今でもあの頃の面影が残るお前を私は忘れることはできなイ。私の元へ来い、人工サンドスターで生まれ変わったハルピュイアならパークの外に出て広い世界で自由に暮らせるんダ。どっちみちここは狭すぎる上に危険が多イ。お前と一緒に二人きりで生きたいだけダ。頼ム…!!」
強引に操作されたスズの記憶が入り混じり、一瞬過去の記憶が蘇ったスズは抵抗を完全に止めシコルスキーの目を見つめた
静かに頬を差し出したのを見たシコルスキーが同じように顔を近づけたが、頬に唇が触れる寸前で正気に戻り無防備に差し出された頬に平手打ちを叩き込んだ
スズの目尻から涙がこぼれ、真っ白な頬を伝ってスカートの端に落ちたかと思うと同時に糸が切れたように気を失って倒れた
「精神的ショックを与えても化学療法を試しても無駄だト…? なぜ私の思うように行かないのダ」
「もう資金が底をつきそうです。もう管理センターの奴らをとっ捕まえて手伝わせるしか無いです」
「私達だけではできないということカ」
「ちち違います! やはり昔からボスは効率を求めてきましたし人員を直接増やして行くべきかと! あの緑髪のガイドとナマコ頭は5人位の男と一緒に地下室に閉じ込めれば出てくる頃にはなんでも聞くでしょうから」
スーツの男たちによってどこかへ運ばれていくスズを眺めながら、シコルスキーの隣の男がツバを吐き捨てた
それを見ると一つ大きくうなずき内ポケットから拳銃を取り出した
ズボンのポケットにも手を突っ込むとどす黒い色の弾丸をいくつかつかみ慣れた手付きでそれを全て装填した
「6発しか持ってこなかったが十分ダ。カコ、ミライ、飼育員、狐と鷹のアニマルガールも見せしめダ。それとおまけにもうヒトリ。人を狩るのは故郷で熊を狩るより刺激的なものダ」
「あ……」
先程まで手遊びしていた男もスズを眺めて不敵な笑みを浮かべていた男も、声を失って誰一人目を合わせようとしなかった
当の本人、シコルスキーも先程とうって変わって冷たい瞳に燃え盛るような感情を抱いていた
熱意や情熱とは違う、命を奪うことだけを決意した目
「地面がっ!? ちょっと落ち着いてくださいボス私達が居ますよ!!!」
「うわああ!!」
「引きずり込んでっ!? くそ、足が…!!」
地面から人工サンドスターが湧き出し辺りの土を飲み込んだ
同時に近くに居た男たちも抵抗するまもなく地面に引きずり込まれ、10人超いたのが3人ほどになったところでシコルスキーが気付いて元に戻した
「全員人工サンドスターの養分になってもらウ。息があったらハルピュイアの目の前でとどめを刺せば良イ。ターゲットを見つけ次第生け捕りにしてここに連れてこイ」
引きずり込まれずに残った3人の男は首を縦にふるだけだった
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ミライさんは薄暗い廊下を迷いなく進んでいった
カコさんを始めとした謎の暴走も職員とフレンズの尽力により収まったらしく、足音だけが聞こえている
タカは大丈夫だろうか
スズは…
「あのっ…!」
「フレンズさんは無事か? …ですか? あの暴走は管理センターの一件だけで留まり、フレンズさんに関しては暴走の報告はないので心配要らないですよ。オオタカちゃんはバードガーデンで今も遊んでいますし、スズさんは先程病院で保護しました」
ミライさんは振り向いて少し微笑むと続けた
「なぜか眠りから覚めて元気な状態で戻ってきたらしいんです。もうお話もできます」
「…ミライさん?」
向こうを向いた瞬間表情が曇ったように見えたので声をかけたが聞こえていないかのように歩き出した
「ここです。ついてきてください」
「いやここって女子トイレじゃないですか!!」
___
ガコン、と衝撃を感じたかと思うとトイレの個室だった部屋は下向きに動き出し1分ほど動き続けた後それは止まった
再びメカメカしい音を立てながら部屋が変形し、気づいたときには大量のファイルが壁一面に並べられた部屋にいた
「なんかアニメみたいですね…ここまでして隠さないといけないんですか」
「新しい種族の誕生を見届け保護をする上でどうしても秘密は生まれるものです。ここまで連れてきた以上隠せませんし、下に出ているものは自由に見ていただいて構いませんよ。…機密と言っても過去の所長が強引に封印したと言っても過言ではないものばかりですがね」
そこでファイルだらけの部屋に童心を思い出してしまった俺は返事するまもなく近くにあったファイルを手にとった
学生の時パークの資料を読み漁っていたが、ここにはそのオリジナル以上のものが置いてあるわけだ
我慢はできなかった
ーーー20○○/3月1日
魚類のアニマルガール化実験は施行90万回目にして実験中止の命令。魚類のアニマルガール化は不可能との見解で実験は終了
ーーー○○
飼育員のアニマルガールに対する虐待の疑いがあるとして職員
当職員には当分の自宅謹慎が言い渡された
部屋には盗聴器と隠しカメラを設置
ーーー○○
鳥類のアニマルガールが自主的にレースを開催、職員見守りの中何事もなく成功するかと思われたが終盤にタカ科のフレンズがセルリアンに襲われ負傷。その時一緒に居たフレンズと職員たちの手によって自力で復帰
ーーー○12月24日
飼育員と担当のアニマルガールの交際が発覚
アニマルガールにはその意識は無く実際には交際には発展していなかった模様
また他支部職員により情報が漏洩し取材多数
追記
翌年3月10日に当職員は辞職
また週刊誌Wednesdey、週刊誌文夏には厳重警告を行った
ーーー○○
四神及び伝承、神話の神獣はフレンズ化するとの見解で一致
管理権限5以上の職員にのみ通知、B級機密事項として処理
一部のアニマルガールには機密保護のため道徳教育の強化を命令
ーーー○○
アニマルガールが人間の男性に深い愛情を抱き自らを人間の女性と強く認識することで血中のエストロ
……そこまで読んだところで満足した俺はファイルを置いた
合わせるようにミライさんが歩み寄ってきて、開けるな、見るな、的なことが難しい感じで書かれたファイルをドスン、と音を立てて置いた
そして何故かミライさんは大きく頭を下げると謝り出した
急いでそれを止めるとゆっくりと喋りだした
「人工サンドスターを作ったのは私とカコ博士、そして当時の研究所所長です。あんなもの作らなければよかったと何度後悔してももう遅いんです。今回の暴走も予想しようとすれば出来たこと…でも防げなかった」
「当時の所長ってどんな人だったんです? どこで調べても出てこなくて気になってたんですよね。なにかとてつもない悪人だったのか、それともとてもいい人だったのか」
「やはり気になりますか。…この場所は彼が退職してから建設したのできっと大丈夫。彼の思い通りに動く人工サンドスターを駆使しても探知することすら不可能でしょう。
当時のパーク所長の名は、シコルスキー。
飼育員として入社した後財力と知力で所長に登りつめてしまった。
私の元を訪れて脅しをかけてきた時に確認しましたが間違いない、声も顔を当時のまま。間違いなく彼は元ジャパリパーク研究所所長シコルスキーです」
「どうしてあんなやつを所長になんかしたんですか! フレンズの安全とパークの未来のための研究をする場所の長が!!」
「ヒデさん…もしパークの未来とフレンズさんの2つから選べと言われたらどうしますか。所長なり、園長なりになったとして選択を迫られたとしたらです」
フレンズとパーク
俺は頭を抱えて迷……うことはなく、『フレンズ』と即答するとミライさんは笑いながらあなたは管理職にはしたくないですね、とだけ言った
もちろんパークが無くなってしまえばフレンズも無事ではないが
「あなたは彼と正反対です。一人のフレンズさんを除いて、彼は飼育員として入社してから退社するまで一度もアニマルガールに興味を示さなかった。最後に彼は選択を迫られた時微塵もフレンズさんに対しての配慮のない決断をした
…人工サンドスターを使って人為的に生んだセルリアンを使ってフレンズ化の強制終了を起こすという恐ろしい決断をです
そしてたった一人大切にしていたフレンズさんをその時に失ったことで元から横暴だった性格がさらにねじ曲がり、今回こうして破壊行為に至ったのだと」
つまりあいつは自分で作った危険物質による危機から救うためにめちゃくちゃな決断をして結果、飼育員だった時に担当だった?大切な一人のフレンズを失ってそのショックで暴れていると
…自業自得でなにより自分勝手である
「そういえばその大切なフレンズって?」
「…シロオオタカのフレンズさんです。事故が起こるまでは二人は相思相愛で有名でした」
「スズ……?」
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